臨床内科専門医に聞く 便秘ケアの漢方薬の選び方

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臨床内科専門医に聞く 便秘ケアの漢方薬の選び方

便秘を解消するために、「漢方薬を試してみたい。西洋医薬の下剤はきつそうだから」という声をよく耳にします。ドラッグストアには漢方薬がずらっと並んでいますが、どう選べばいいのでしょうか。また、漢方薬はくせにならない、副作用がないとも聞きますが、実のところはどうなのでしょうか。

臨床内科専門医で、西洋医学と東洋医学の両面から治療を行う正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に、詳しいお話を聞きました。

便秘は、「気・血(けつ)・水(すい)」のめぐりが滞っている

はじめに、便秘の症状について、正木医師は次の状態を指摘します。

□ 3日以上排便がない
□ 毎日排便があっても、便が硬くて量が少ない
□ 残便感がある
□ 排便に苦痛を感じる

「毎日お通じがあったとしても、状態によっては便秘になります」と正木医師。続いて、東洋医学による便秘のとらえかたについて、こう説明をします。

「東洋医学では、ヒトの体は、心身の生命エネルギーである『気(き)』・主に血液を意味する『血(けつ)』・血液以外の体液を指す『水(すい)』という3つの要素が互いに連動しているととらえます。

便秘は、これらのうちのどれか、あるいは全部の働きが滞ることで排泄が順調ではないと考えます。対策には、まずは食事の内容や睡眠はどうか、運動不足ではないか、体は冷えていないか、ストレスを溜めていないかなど、生活習慣を見直すようにしてください」

漢方薬は、体格、体力、疲労度、血圧など体質別に選ぶ

次に、漢方薬を試したい場合の選び方について、正木医師に教えてもらいましょう。

「体格や体質を漢方では『証(しょう)』と呼びますが、これが重要になります。ですからまず、その患者さんが、やせ型か標準かぽっちゃり型か、体力はあるのか、疲れているのか、ストレスは大きいか、血圧はどうなのか、また、ほかに病気はないかなどを診ます。

次に、便秘は一時的なものか、慢性的なのか、慢性的なら残便感や腹痛はあるのか、便秘と下痢をくり返すのかなどの症状を聞き、『証』と合わせて適切だと判断した薬を処方します。

下剤のような働きがあるタイプ、体質の改善を行いながら便通を整えるタイプなどを選ぶことになります」

自分で市販の漢方薬を選ぶときには、「証、つまり体質に適した漢方を選ぶようにしましょう」と話す正木医師は、次の「主な体質とそれに合う代表的な漢方薬」を4つ挙げます。

(1)疲れにくく、強壮なタイプ ―「実証(じっしょう)」と呼ぶ

・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
おなかに指でつまめる皮下脂肪が多く、肥満、尿量が少ない、むくみ、肩こりなどの症状がある場合に。体内の水分の循環を改善します。

・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
体力があり、イライラする、ストレスがある、高血圧、のぼせ、めまい、頭痛、肩こりなどの症状がある場合に。
 
(2)疲れやすくやせ気味で、胃腸が弱いなど虚弱傾向があるタイプ ―「虚証(きょしょう)」と呼ぶ

・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
おなかが弱い、便秘のときに腹痛がある、残便感がある、ストレスを感じやすい場合に。便秘と下痢を繰り返す症状や、過敏性腸症候群に使われることがあります。乱れた「気」や「血」のバランスを整えます。

(3)体力、気力、体型などがバランスのとれた標準タイプ ―「中間証(ちゅうかんしょう)」と呼ぶ

・麻子仁丸(ましにんがん)
慢性的に排便が少ない、コロコロとした乾燥した便が続く場合に。水分不足な便に潤いを与えてやわらかくし、自然に排出しやすくします。

・潤腸湯(じゅんちょうとう)
コロコロとした乾燥した便が続く、のどの渇きや皮ふの乾燥、ほてりなどで水分不足が考えられる場合に。

(4)いずれのタイプにも当てはまる

・大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
慢性的な便秘の改善に、いずれの「証」のタイプにも使われます。下剤として働くので、「虚証」の人は少量から始めましょう。

習慣的に服用すると効きにくくなる

漢方薬はくせになりにくいと聞きますが、本当でしょうか。

「飲み続けないと便秘が改善しなくなると言う意味でしたら、漢方薬も薬ですから、飲みかたや頻度、期間によっては、そうなる可能性はあります。

また、2週間以上の長期的、継続的に服用すると、薬の刺激に体が慣れて腸の機能が低下し、効きにくくなります。西洋医薬と同じことが言えます」と正木医師。

では、漢方薬は副作用が少ないというイメージがありますが、それはどうでしょうか。正木医師は次の注意を促します。

「それも誤解です。穏やかにゆっくりと働くという特徴はありますが、薬である以上は多種の成分が含まれていて、個人の体質、体調にすべての漢方薬が合うわけではありません。胃の不快感、腹痛、下痢、食欲不振のほか、体質、体調によって複数の症状が現れる可能性はあります。説明書に記載の用法と用量に沿って服用しましょう。

1〜2週間ほど服用しても効果がない、症状が改善せずに日常生活に支障をきたす場合は、消化器内科や胃腸科、内科などの医療機関を受診してください」

漢方薬を選ぶにあたっては、まずは自分の体質、そして便秘の原因と症状、体調を見極めようということです。また、連用や常用を避け、副作用もあることを認識しておきましょう。生活習慣を見直しながら、薬に依存しないように注意することも必要だということです。参考にしてください。

(取材・文 海野愛子/ユンブル)

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