日本の女性リーダーが幸せになれないワケ

「これからは女性もリーダーを目指すべき時代!」と急に言われても、「そんなこと今まであまり意識したことなかったし…」というのが、働く女性の本音ではないでしょうか。日本女性は「人の上に立つこと」に慣れていない上、長時間拘束による体力的な不安、立場の違う女性同士が協力関係を作ることの難しさ、家庭との両立など、特有の課題もたくさん抱えています。

今回インタビューさせていただいたのは、リーダーシップ教育が専門で、現在は市民の力で社会を変えるリーダーシップを広めるNPO法人を設立準備中の鎌田華乃子さん。企業でリーダーを務めてきた自身の経験も踏まえ、女性リーダーの抱える葛藤ややりがい、海外と日本との違いなど、「フツーの日本女性」がリーダーとして幸せに生きるためのヒントを語っていただきました。

すべての元凶は「長時間労働」文化

――2013年版「男女共同参画白書」で発表された、「女性管理職の割合が11.1%」というデータは衝撃的でした。アメリカやヨーロッパ、アジア諸国は軒並み30%以上なのに、日本はものすごく少ないですよね。なぜ日本はこんなに女性リーダーが少ないんですか?

鎌田華乃子さん(以下、鎌田):やはり、日本の企業は“長時間働かないと責任のある仕事ができない”風土があると思います。私の周りにも女性のリーダー職の方がいたのですが、帰宅したあとに家事・育児を済ませて、さらに深夜まで仕事をしていました。一時的にたまってしまった仕事をそのように対処することはあっても、それが日常的になるとかなり厳しい環境ですよね。20~30代は若さで乗り切れても、決してサステナブル(持続可能)な働き方では無いと思います。

また女性の場合、どうしても男性に比べて体力的な差があるのは事実です。有能な女性が体調を崩してしまったと聞くことも少なくありません。今までのやり方、風土のまま女性に「さあ、やれ!」というのは、ちょっと乱暴な気がします。女性の活躍をうながすなら、働く時間の使い方から見つめ直す必要があると思います。

――たとえばアメリカでは、働く時間の使い方に関して、日本との違いはあるんですか?

鎌田:欧米では定時に帰っても、パートタイムであっても責任ある仕事に就く事ができます。以前の会社の米国オフィスでは子どもがいる女性が、パートタイムでも役員を務めていました。また部長など重要なポジションを2人の女性でパートタイムで務めていたりします。

女性自身が出来ることとしては、働ける時間は限られるけど、その中で効率よく仕事をこなしていることをしっかり上司に分かってもらうように説明することが一つなのかなと思います。自分の仕事内容は把握してくれている、と自分が思っていても上司は意外と分かっていなかったりします。企業側も、時間ではなく成果による評価を意識し、長時間労働をしなくてもチャレンジングな仕事、責任ある仕事に女性が就けるようにしていくことが必要ではないかと思います。

女性は女性に厳しい

――女性管理職は孤立しがちという話も耳にします。女性リーダーが嫌われるのは、日本だけなんでしょうか?

鎌田:たしかに、日本では“出る杭は打たれる”という印象はありますね。でも、実は日本だけではないんです。以前アメリカに留学した際、「女性とリーダーシップ」という授業を受けたのですが、そこで男性と女性が同じ高圧的な発言をしたところ、女性に対してより高圧的印象を受けるという実験結果がありました。

また同じ授業で取り上げた幾つかの文献で、ビジネスの世界で女性は女性同士助け合わない、と取り上げられていました。その理由は諸説あるようですが、活躍している女性のロールモデルが少なく、上に行けば行く程そのポジションは少ない、要はパイが少ないことが、こうした現象を生んでいる一因だと言われていました。女性が責任あるポジションにつく事が当たり前になり、その数が増えていけば、お互い協力しあってキャリアを伸ばして行くという意識をよりもてるようになると思います。同じような立場の女性が増えていけば、悩みを共有したり、自分と違う能力を尊敬したり、心の余裕ができるのではないでしょうか。

――それでも、女性の嫉妬ってかなり厄介ですよね。

鎌田:女性に限らず基本的に自分が上手く行っていなくて、周りの人達が上手くいっていると人間は嫉妬しますよね。でも、実際のところ、周りの人達が全然上手くいっていない状況と、上手くいっている状況を想像してみたら、後者のほうがよくないですか?自分の周りがポジティブなパワーで満たされたり、彼らに刺激されて自分が前向きになれる。結果的に、自分自身も引き上げてもらえますから。

女性って、実は「細く長く」が苦手? 燃え尽き症候群になる理由

――女性リーダーが少ない要因には、女性の離職率の高さもあります。20代はガムシャラに働いていた優秀な女性が、ちょうど中堅くらいになってきたころに疲れ果ててパタリと辞めてしまう 、“燃え尽き症候群”話をよく聞くのですが。

鎌田:もともと女性は責任感の強い人が多いですから、「期待に応えなきゃ!」と必死にやってしまうのかもしれません。

――確かに、夢中で取り組むあまり、“仕事=自分”になりすぎてしまう女性は私の周りにも多いです。そういうときに仕事で否定されると、自分自身をまるごと否定されていると受け取ってしまい、立ち直るのが難しいのかもしれないですね。

鎌田:仕事というのは、職場での役割だと思います。求められた役割を果たす責任はありますが、自身の人格と同一化する必要はありません。そこを切り離して考えると、もっとラクになれるのではないでしょうか。

【後編につづく】“フツーの女性”こそリーダーをやるべき! 女の可能性を広げるリーダー職の魅力とは?

●鎌田華乃子(かまた・かのこ)
コミュニティー・オーガナイジング・ワークショップ・イン・ ジャパン実行委員会代表。神奈川県横浜市生まれ。1歳半から6歳まで仙台で過ごした以外は横浜で育つ。日本大学生物資源科学部農芸化学科を卒業後、外資系商社に就職、4年間化学品の輸出入、新規化学物質登録に従事する。その後、外資系環境コンサルティング会社に転職し、7年半勤務。環境法令調査、新規化学物質登録、環境デューディリジェンス、遵法監査といったコンサルティング業務に従事する傍ら、新規ビジネス開拓も手がける。2011年7月から2012年5月までハーバード大学ケネディスクールに留学しMaster in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了。在学中はロータリー財団国際親善奨学金、Harvard Kennedy School, The Roy & Lila Ash Fellowship in Democracyを授与される。ニューヨーク・ブルックリンにあるコミュニティーオーガナイジング(普通の市民が立ち上がり社会を変えていく活動)NPOにて市民参加の様々な形を現場で学んだ後、帰国。コミュニティーオーガナイジングの手法を日本に広めるべく実行委員会を立ち上げ、今年12月にはハーバード大で教えるガンツ博士を日本に招きワークショップや講演会を実施。現在NPO法人設立準備中。http://communityorganizing.jp