不妊治療は職場で隠すべき? 実は2人に1人がカミングアウトしている

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不妊治療は職場で隠すべき? 実は2人に1人がカミングアウトしている

「不妊治療と仕事の両立はムリ」「不妊治療中であることを職場で言うなんてイヤ」働きながらの不妊治療をしている、あるいはしようとしている女性の中には、きっと少なからずこういう感情があったはず。

ところが、日本で唯一の出産ジャーナリストである河合蘭(かわい・らん)さんによると、不妊治療とキャリアをめぐる状況は最近だんだんと変化しているそう。最新の調査によって明らかになった現状をレポートしてくださいました。

300人のアンケート調査から見えてきた意外な数字

「不妊治療に対する社会のまなざしは、このところ急激に変化しています。『仕事をしている私に不妊治療なんてムリ』と考えてきた人は、この変化の波を上手に利用して」

そう語るのは、蔵本ウイメンズクリニック(福岡)の看護師長で不妊症看護認定看護師の村上貴美子(むらかみ・きみこ)さん。不妊治療の専門施設には精神面や生活面のサポートをしてくれる「不妊カウンセリング」や「不妊相談」と呼ばれるサービスがあります。村上さんはその草分けで、厚生労働省の不妊治療に関する委員会のメンバーでもありました。

村上さんが、2016年5月から7月の3ヵ月にわたり蔵本ウイメンズクリニックに通院中の女性300人を対象にして実施したアンケート調査(約6割に当たる163人が回答)から、不妊治療とキャリアをめぐる意外な事実が見えてきました。

まず目を引いたのは、74%が有職者だったこと。しかも、うち61.9%は正社員で、勤続年数も5年以上と長い人が51.2%を占めました。国の労働力調査によると、日本の女性労働者全体に占める正社員(正規雇用)の割合は40%ですから、この数字は明らかに高いと言えるでしょう。

実は2人に1人が職場でカミングアウトしている

さらに村上さんの調査によれば、会社に「不妊治療をしている」とカミングアウトしていた人は、有職者の50%に上りました。「告げた時期」は、「治療を開始した時点」と答えた人が圧倒的に多いという結果に。そして、会社に告げている人のうち86%は、「伝えてよかった」と回答しているのです。

「伝えてよかった」と思う理由には、次のような明るい言葉が並んでいたそう。

・休みがとりやすくなった
・協力が得やすくなった
・理解が得られ、気持ちがラクになった
・体調を気遣ってくれた
・精神的に助けられた
・(不妊治療のことを)一人で考えなくて済むようになった

不妊治療のつらさはいろいろありますが、特に困ることとして「卵子の成長具合に振り回されて予定が立ちにくい」が挙げられます。治療のために急に仕事を休んだりアポをキャンセルしたりせざるをえない時に、事前に伝えておけば苦しい事情をわかってもらえる可能性は高いでしょう。

「男性の上司」は意外に協力的だった

興味深いことに、「職場で(不妊治療に)協力的な人」としてアンケートでは、「女性の同僚」の次に多かったのが「男性の上司」でした。アンケートでは職場での「関係」と「性別」の組み合わせで聞いていますが、「関係」でもっとも協力的なのは「上司」という結果が。

特に「男性の上司」は、「男性の上司」「男女問わず上司」と答えた人を合わせると、「上司が協力的」と答えた人の7割を占めました。不妊治療を職場でカミングアウトすると、意外な人から優しい言葉をかけてもらうことになるかもしれません。

しかし、不妊治療中の人すべてが職場で応援されているわけではないようです。村上さんの報告でも、不妊治療の開始にともない「働きかたを変えた」と答えた人は有職者の3分の1を占めました。「働きかたを変えた」の中には、離職、休職、転職、常勤からパートタイムーの変更、時短勤務、部署移動が含まれます。本人が自分から積極的に選んだケースもあれば、納得しないまま変更されたケースもあるだろうと村上さんは推察しています。

時代は変わりつつある

「少し前まで、不妊治療は個人が好き勝手にやっていることというイメージでした。でも今は、不妊治療の支援は少子化対策の一つ。そればかりか、不妊治療中の人の中にはキャリアを積んだ人が多く、そうした女性が『不妊治療に専念するので辞めます』と職場を去るのは社会の大きな損失だと国や企業が気づき始めています」

と村上さんは語ります。私もこれまでの取材の中で職場の協力に関して「いい話」を聞くことはままありましたが、今回の調査を通じて不妊治療と女性のキャリアをめぐる状況は大きく変わりつつあると強く感じました。勇気を出して職場でカミングアウトする「オープンな不妊治療」を、もっとたくさんの人が検討してもいい時期が来ているのかもしれません。

(河合蘭)

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