吐く息が白くなってきました。今年もいよいよ日本酒が美味しい季節がやってきましたね。今回ご紹介するのは、業界でも注目されている女性杜氏が造る極上日本酒。この冬は、女性ならではのしなやかな感性で生み出される名酒を楽しんでみては?

日本酒造りは女人禁制だった!?

酒造りは男の仕事、女はご法度、女人禁制……というのは一昔前の話。最近の日本酒業界は、女性の杜氏や女性社長がぐんぐんと増えてきました。

昔は、機械も少なく体力勝負の仕事が多かったですし、男性ばかりの仕事場ゆえに女性が入りにくかったため、酒蔵は女人禁制といわれてきたのです。でも、そもそも大昔は神に仕える巫女さんが酒造りをしていました。酒造りは決め細かい観察力や微妙な味わいをつかむ感性が必要です。実は女性は酒造りに適しているともいえるのです。今回は、女性杜氏が造るおすすめの日本酒をご紹介しましょう。見つけたらぜひお手に取ってみてくださいね。

酒千蔵野「特別純米酒 川中島」

酒千蔵野(しゅせんくらの)は、信州川中島で天文九年(1540年)から酒造りを営む歴史あるお蔵。かの「鉄砲伝来」が1543年、「川中島合戦」は1553年です。勉強しましたね。かの武田信玄公も千野の酒を召し上ったといわれる信州でもっとも古い日本酒蔵です。

杜氏を務めるのは蔵の一人娘である千野麻里子さん。東京農業大学に学び、国税庁醸造試験所で2年間の研修を積み、その後蔵へ戻り酒造りを行っていらっしゃいます。発酵中の仕込みタンクをまるで我が子を育てるように温かく見つめるさまは、やはり女性ならではの姿。

できあがるお酒は、信州の風のように清らかで新鮮。品のいい華やかさを持ち、ゆったりと米の旨味を味わえる酒です。おすすめはSSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会・連合会)主催「地酒と料理の夕べ、日本酒大賞!」の「お燗でじっくり飲みたいお酒」部門で入賞した「特別純米酒 川中島」でしょう。まろやかさと清らかさが混じりあう女性ならではの味わいです。

●株式会社 酒千蔵野
http://www.shusen.jp/

森喜酒造場「無濾過生原酒 るみ子」

伊賀忍者の里、松尾芭蕉生誕の地として知られる三重県伊賀地方は実はおいしい米と水の故郷でもあります。その地に位置する森喜酒造は、すべて手造りの少量生産。それゆえに希少価値も高く全国の美酒マニアたちに注目されているお蔵です。

お酒造りのかなめである麹造りの責任者が森喜るみ子さん。名前を聞いたことがあるようなと思われた方はかなりの通ですね。漫画「夏子の酒」(講談社)で知られる尾瀬あきら先生みずから命名しラベルを書かれた「純米酒 るみ子の酒」のモデルです。「るみ子」シリーズには、純米酒や生酒、活性濁り酒(探偵ナイトスクープで、爆発する酒として紹介されました!)など数種がありますが、ちょっとだけアルコール度が優しめの「無濾過生原酒」がまずはおすすめです。かわいいラベルとともに女子会でどうぞ。

●合名会社 森喜酒造場
http://moriki.o.oo7.jp/

辻本店 御前酒「9ブラックボトル」

甘く女性的な味わいの多い瀬戸内沿岸ですが、ここ美作(みまさか・岡山県北部の旧名)は、同じ瀬戸内に近いながらもすっきりとキレのいい辛口酒を生み出す地域です。美作勝山藩御用達の献上酒として「御膳酒」の銘を受け、文化元年(1804年)より受け継がれる酒造りの技を、現在は岡山県初の女性杜氏となる辻麻衣子さんが引き継いでいます。

地元の米である、岡山県産の雄町、山田錦にこだわり、仕込み水は、蔵の横を滔々と流れる一級河川「旭川」の伏流水を使用。「旨味があってキレがよい」をモットーに、飲み飽きしない酒を造っています。おすすめはとってもスタイリッシュな「9」シリーズ。辻麻衣子さんをはじめ9人の杜氏で造るテーマ性のあるお酒で、これからの季節なら「ブラックボトル」がおすすめ。ひと夏寝かせたまろみのある味わいです。

株式会社 辻本店 御前酒  
http://www.gozenshu.co.jp/kuramoto/

岡崎酒造「ひとごこち 純米吟醸」

日本酒はその蔵に住んでいる酵母によって味が変わるといわれます。寛文五年(1665年)創業の岡崎酒造も、約350年もの間蔵に住み着く「蔵付き酵母」を大切に育てています。また信州でこそ本領発揮する酒米「美山錦」「ひとごこち」を、飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)から流れ出る水で丁寧に醸します。

杜氏は岡崎美都里さん。東京農大で醸造学の勉強し大手酒販売会社に就職後、蔵へと戻り、杜氏から技術を学び、最高においしい信州の酒を目指して日々研究されています。銘柄名は「信州亀齢」。そう、その名も「きれい」です。空気も水も米も、そして杜氏の岡崎美都里さんもとってもきれい。なかでも「ひとごこち 純米吟醸」は、完熟リンゴのようなすがすがしく甘酸っぱい香りがします。日本酒初心者の人にもおすすめできる正統派の純米吟醸。贈り物にもぴったりです。

●岡崎酒造株式会社 
http://www.ueda.ne.jp/~okazaki/

月の輪酒造店「ゆうこの想い」

福井県若狭出身の初代は、現在蔵のある岩手県紫波郡にて麹屋を営んでいましたが、明治十九年(1886年)に四代目が酒造りを始めました。平成十七年(2005年)に法人化した時点で横沢裕子さんが杜氏に就任。女性杜氏の蔵となりました。

「月の輪」のブランド名で販売される酒は、岩手の冷涼な気候と透き通った水で生み出され、穏やかで落ち着きがあり透明感を味わえます。珍しいもち米で造る濃厚なお酒もあります。特別純米酒の酵母は「ゆうこの想い」という名。女性杜氏の気持ちが感じられる一品です。

さらに、敷地内の直売店「わかさや」では、米と米麹とミルクのみで造るジェラート屋さん「わかさやアイスクリームガーデン」があります。お砂糖を加えず、麹の力で糖化させるお酒造りの技術で生み出されたナチュラルでヘルシーなジェラート。できれば現地で食べたい味わいです(お持ち帰り可)。

●有限会社 月の輪酒造店
http://www.tsukinowa-iwate.com/

いかがでしたか? 女性杜氏の手で生み出される日本酒は、美味しそうなものばかりでしたね。早速買い求めて、この週末に大切な人と楽しんでみては?

友田 晶子(ともだ・あきこ) トータル飲料コンサルタント。シニアソムリエ。ワイン・日本酒・焼酎・ビール・カクテル・チーズ・パン…とアルコール飲料と食全般に携わる。キャリア30年の経験と女性らしい感性で愛好家・プロ向けに的確な情報を提供。日本酒きき酒師・焼酎きき酒師。日本料飲サービス向上研究会会長。一般社団法人 日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称:SAKE女の会)代表理事。藝術学舎・非常勤講師。著書多数。