カメラとひとり旅をこよなく愛する編集者兼ライターの宇佐美里圭(うさみ・りか)さんのフォトエッセイ、今回の旅先は佐渡です。実は東京からたった3時間で行ける場所なんだそう。そこで遭遇した異世界とは……

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花が咲きみだれる季節にふらり

佐渡へ初めて行ったのは4、5年前だったでしょうか。特に目的もなく、「なんとなく気になるなあ」くらいの理由で、ふらりと佐渡汽船に乗り込みました。

実は東京からもそれほど遠くありません。新潟まで新幹線で2時間ほど。そこからタクシーやバスで港まで10分。ジェットフォイルに乗れば1時間で佐渡に到着です。重い腰さえ上げてしまえば、あっという間。

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そんな初めての佐渡で最初に目に飛び込んできたのは、たくさんの花でした。季節もあったのでしょうが、街道沿いには花がびっしりと植えられ、集落にもよく手入れされたプランターがたくさん。そして、墓地やお地蔵さんにも色とりどりの花、花、花。

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南部に宿根木(しゅくねぎ)という江戸時代の町並みが残った地区があるのですが、そこを歩いていると、両手に大きな花束を抱え、墓地へ向かうおじいさんとすれ違いました。聞けば、毎日の習慣だとのこと。すごいなあ……。“お花を供える”(飾る、ではなく)という習慣がある人は、なんとなく生きる心構えが違うような気がしてしまいます。

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そんな心穏やかな佐渡でしたが、ワタシ史上5指に入る心臓バクバク体験もありました。泊まった宿のすぐ近くで、不思議な一角があるのを見つけてしまったのです。今となっては、なぜそこへ行ったのかわかりません。

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真っ暗な竹やぶへ入る古い石の階段がありました。いかにも異界への入り口といった風情。「岩屋山石窟」とあります。これは俄然行ってみたくなる響きでしょう。

躊躇せず中へ足を踏み入れ、どんどん奥へ入って行きました。どれくらい登ったでしょうか。ふと気づくと空気が明らかに違う……。どこかヒヤリとして、肌触りが何か違うのです。そして広場のような場所に着き、まわりを見渡してゾワッ……。ぐるりと赤い前掛けをかけたお地蔵さんに囲まれていました。さらに奥へ進むと洞窟があり、そこかしこにびっしりと古い石仏さまたちが並んでいました。100体以上は優にありそうです。あまりにも空気が“異界”すぎ。ここはヤバい!と心臓がバクバクし、洞窟の写真も撮らず退散しました。

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あとで調べると、ここは縄文土器も出土した場所で、古くから信仰を集める霊場とのこと。しかも洞窟の奥行きはいまだ不明で、佐渡北部にある岩屋口の洞窟とつながっているという伝説もあるそう。

ちなみに、この時の旅のメモを今読んだら、「夜、あの洞窟の山へ光が平行線に走っていった」と書いてあります。ええ!? ゾワッ! まったく覚えてないんですけど!

宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。編集者、ライター。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽雑誌、女性誌、週刊誌、カメラ雑誌などで働く。朝日新聞デジタルで「島めぐり」「ワインのおはなし」「花のない花屋」などを連載中。ラテン音楽とワインが好きなエピキュリアン。