40歳の時、おひとり様で都内に「7坪ハウス」を建てた雑貨店オーナーの塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。バリキャリ編集者だった30代には、家具、インテリア、服、旅行、習い事……とあらゆる“消費”に手を出したそう。そんな塚本さんと編集部が「オンナの30代」と「消費」の幸せなバランスについて語り合います。
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「女性の30代」と「消費」について考える「“7坪のお茶会”消費で終わらせない土曜日の午後」も、いよいよ今回で最終回。

“理想の自分”を手に入れるため。好奇心を満たすため。加齢に抗うため。ストレス発散のため。私たちは、結局のところ、何のためにこれからも消費を続けていくのでしょうか?30代は消費にありとあらゆる明け暮れ、40歳で都内に一軒家を建ててしまった、編集者兼雑貨店オーナー、塚本佳子(つかもと・よしこ)さんのおうちで今日もお茶会が始まります。

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消費とは“自分の思い通りになるもの”

–7月から隔週でお届けしてきたこの連載も、いよいよ今回で最後なんですね。なんか、感慨深いな。

塚本佳子さん(以下、塚本さん):最終回にあたって連載を読み直したんですけど、20代中頃から30代の後半にかけて、よくもまあムダな消費をしてきたもんだなと、自分でもびっくり。

–(笑)改めて「オンナ30代の消費」の理由を考えてみると、一つはストレス発散かなと。

塚本:ストレス発散の消費はかなり表層的というか、刹那的な対処法ではあるけど、効き目はバツグンですよね。私の場合、20代後半がそうでした。買いものした後はモヤモヤがきれいに消えてスッキリしましたからね。

–そう! スッキリしますよね。私、去年と今年で環境がずいぶん変化したんですけど、そのせいで今年はストレスが倍増。比例するように消費が増えました。ストレス過多の時に好きな器屋さんで衝動買いした時の、あのスッキリ感。何なんでしょうね? 

塚本:ストレスって満たされない、自分の思い通りにならない時に起こるものですよね。だから、代替行為としてココロを満たしてくれるのが消費なのかも。最大の消費であるこの「家」も、出発点はストレスが多分に影響してましたからね(笑)。ストレスと消費がセットの人は結構多いと思いますよ。

–それから「なりたい自分になるため」という消費もありますよね。

塚本:30代に入ってからの消費はこの理由が大きい気がする。収入が増えるのと同時に人生に対する焦りも増えてくるから、自分探しというか自己投資的な消費が多くなりますよね。

「第2回」のインテリアや習い事にかけた金額、「第5回」の一生モノに囲まれて暮らしたい願望、「第7回」のカラダにかける消費あたりは、まさに自分磨きの一端。

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消費を続けた結果、賢くなるのかも

塚本:とはいえ、理想の自分を手に入れるためには、絶対に消費は必要です! まあ、ムダな消費もかなりしてきたけど(笑)。「何でこんなもの買ったんだろう?」とか、あっという間にぜい肉が増えて「エステにかけた数十万円が水の泡……」なんていうことを、何度経験してきたことか。

–でも、その時々ではムダと思えることも、そういった積み重ねで経験値は上がっていく。次の消費のステップアップに繋がるということはありますよね。賢くなるというか。

塚本:それはありますね。「何でこんなもの買ったんだろう?」という消費は確実に減っています。私の場合、インテリア・雑貨については顕著ですね。でも、いまだに洋服にはありますよ。それほど興味がなかったせいか、洋服や靴にはあまりお金を使ってこなかった。インテリアに比べてファッションに注いだ消費が圧倒的に少ないからか、今でも自分に似合う服がわからずに、失敗を繰り返しています(笑)。

–単に歳を重ねれば自分のことが見えてくるわけではないんですよね。そこに、どれだけのエネルギーと時間とお金を費やしたか、つまり消費したかで大きく変わってくるということなんでしょうね。

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結局、私たちは「誇り」を買っているの?

塚本:ただ、理由がストレス発散にしても自分磨きにしても、自分で一生懸命に稼いだお金であることが、結構重要な気がする。

–それわかります。私、8ヵ月だけ専業主婦をしていたことがあるんですけど、夫の収入で食器を買って「今日これ買ったの」と夫に見せて「いいね、いくらだったの?」と聞かれた時、半額くらいで答えてた(笑)。

塚本:後ろめたさがあるんだ。

–夫は別に詰問しているわけではないのに、どこかに罪悪感がある。それと80歳過ぎてから不動産屋さんになったおばあちゃんの話をどこかで読んだことがあるんですけど、90歳近くなっても仕事を続ける理由が印象的だったんです。

塚本:すごいバイタリティの持ち主ですね。その理由とは?

–自分で稼いだお金で好きなものを買う喜びを晩年になって初めて味わって、その自由さが忘れられないから。それまで専業主婦だった人なので余計に感動が大きかったんでしょうね。

塚本:うんうん。それがどんな小さなものでも、自分のお金で買ったというだけで、誇らしさとか自信に繋がるんですよね。実は消費って、そういう気持ちを買っている部分もあるのかもしれない。

–塚本さんの場合だと家まで建ててしまったわけだから、ものすごい自信に繋がったんじゃないですか?

塚本:思いのほか自信に繋がっているのは確かですね。安心材料にもなっているし。

–お金を使うってそういうことですよね。そして消費で得られる自信って、金額に比例している気がする。

塚本:なんとなく“消費”と聞くと悪なイメージを持ちがちだけど、自分の中に基準が増えて経験値が上がっていくことで自信にも繋がる。そう考えたら、悪いどころかかなり健全なことですよね。

–“消費、万歳!”ですよ(笑)。

塚本:(笑)ストレスを出発点に7坪の家を建てて、住み始めたら思いがけず「理想のライフスタイル」に近づいていき、「みんなに見てほしい!」と思うくらい誇りや自信に繋がった。本当“消費、万歳!”ですよね。これからもたくさんの消費をして人生の経験値を上げていきたいな。そのためにも、しっかり稼がないとね!

全10回にわたり、ご愛読ありがとうございました。

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【お茶会のメニュー】
〈器〉
・カップ&ソーサー(カップ3564円/ソーサー3024円)
・コーヒードリッパー&サーバー(13500円)
・ミルクピッチャー(3240円)
・白樺かご(8100円)

*金額掲載の器は「Fika」にて取扱中。

〈お菓子とお茶〉
・シナモンロール

☆シナモンロルの作り方

[材料]
〈生地〉牛乳……130g/バター……40g/強力粉……250g/ヨーグルト……100g(水気を切って50〜60g)/ドライイースト……3g/砂糖……30g/塩……小さじ1/4/カルダモン……小さじ1
〈フィリング〉室温に戻したバター……35g/砂糖……35g/シナモン……大さじ1/卵……適量

[1]鍋に牛乳とバターを入れる。バターが溶けたら火からおろして冷ます。
[2]ボウルに1と〈生地〉の残りの材料を入れ、10分程度こねる。
[3]生地が滑らかになったら丸くまとめて、濡れ布巾をかぶせて1時間前後ねかせる(一次発酵)。
[4]〈フィリング〉の材料(卵以外)を練り合わせる。
[5]発酵して倍ほどに膨らんだ3の生地を厚さ5mm程度の長方形に伸ばす。
[6]4で作ったフィリングを5の生地の上に塗る。
[7]端からクルクルとロール状に巻いていく。
[8]8等分に切ったら、渦巻き部分が上を向くように天板に並べる。
[9]乾燥しないように濡れ布巾などをかけ、30分程度ねかす(二次発酵)。
[10]表面に卵を塗る。
[11]180〜200度のオーブンで15分程度焼く。

塚本佳子(つかもと・よしこ) 編集者・ライター。週末のみ「北欧雑貨と日本の器 Fika」の店主。暮らしを豊かにするための方法を日々模索中。著書に“7坪の家”ができるまでを綴った『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、北欧雑貨の買い付け珍道中を綴った『好きなことだけ』、スウェーデンのお茶文化を綴った『Fika』(いずれもPヴァイン)がある。