「転職の壁」と「出産の壁」が同時に目の前に現れ始める女性の35歳。「好きなことをしたい」と「自由に生きたい」をどちらも両立したいなら、“起業”も一つの選択肢かも。この連載では、これまで30代女性の起業を多数サポートしてきたFPの氏家祥美さんと鈴木さや子さんに、35歳の起業のリアルと、失敗しないための秘訣を教えていただきます。
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over35の起業で最大の問題は「いつするか」。結婚もしたい。子どもだって、諦めたくない。自宅も購入したい。女性の30代はやりたいこと、譲れないことが盛りだくさん。そんな中でどのタイミングで独立・起業すれば後悔せずに済むのでしょうか?

「『好き』と『稼ぐ』を両立したい over35のためのぼちぼち起業」、今回のテーマは独立・起業のタイミングです。

失敗する女性に共通する2つの特徴

最初に断言しますが、どんなタイミングで起業しても、一度は「起業しなければよかった……」と思うような大変な時期はあります。そんな「どん底」を乗り越えられるかどうかは、結局のところ、「仕事への想い」の強さにかかっています。逆に言えば、いくらベストタイミングで起業しても、想いが足らなければ、いずれ事業から撤退していきます。

筆者のところに相談にやってくる女性を見ていると、「独立・起業しても、やがてフェードアウト(失敗)するだろうな」という将来がイメージできてしまう人が一定数存在します。そういう人に共通するのは「情熱不足」。情熱が十分ないために、「動かない」「言い訳をする」という2つの特徴があります。

相談を受けた筆者が「副業禁止できもできる起業準備」をアドバイスしても、実際には何もせずに、ただ「不安不安」と口にするケースが多い。また、アドバイスに対して「でも〜」「そういうの、私には向いてないんです」と否定から入るような人もフェードアウト組です。

3つの時間軸でライフイベントを書き出す

「情熱が足らない」「動かない」「言い訳をする」といったフェードアウト組の条件を克服しているなら、どんなタイミングで起業しても大丈夫。とはいえ、避けられるリスクや苦労は避けた方がいいに決まっていますから、準備中にライフプランを練ってタイミングをじっくり検討しましょう。

ライフプランとは、つまり人生設計のこと。これからの自分に起こる出来事(結婚、出産、自宅購入など)を、どの時期に、どのくらいお金をかけてやりたいか計画しましょう。

次の図を見てください。まずは時間軸を「今」「5年後」「10年後」の3つに分けて考えます。そして、いろいろなライフイベントの「時期」と「金額」を書き込んでいきます(図は30代の女性会社員がモデル)。

図1-s

書き込んだら、今の貯金額も記入します。続いて、起業のタイミングを検討するために、起業後3年の貯金額の推移をざっくり書き込んでみましょう。独立・起業すれば当面はほぼ確実に収入が減り、貯金を切り崩すことになりますから、かなりシビアに推移を予想します。

図2

この図では、「今」起業する場合(赤線)を見てみると、出産を考える2年後には貯金がかなり減っています。万が一、不妊治療となった場合は資金が足りなくなるかもしれません。

「5年後」に起業する場合(緑線)を見てみると、会社員のうちに2人目の出産まで終えて、育児が落ち着いた頃に起業するイメージがつかめるはず。ただし、このケースでは自宅購入の500万円を貯めるのが難しそうです。

一番やりたいことができなくなるリスク

図とにらめっこしながら「独立・起業のタイミング」を見つけるには、「優先順位」を自分で決める必要があります。

このケースなら、「子ども」「独立・起業」「自宅購入」のどれを一番優先したいか?を考えます。「子ども」が最優先なら、「今、独立・起業して軌道に乗ってから妊娠・出産」はリスキーと言えそうです。いつ軌道に乗るかなんて、誰にもわかりません。また「自宅購入」が最優先なら、目標貯金額を下げるか、会社員を続けて目標貯金額をできるだけ早く達成するという選択をすることになるでしょう。

「どうしても今すぐ起業したい」人は、「子ども」や「自宅購入」は軌道に乗るまで我慢する、または早く軌道に乗せられるように万全の努力をするという選択が見えてきます。

このように図にしてみると、独立・起業のタイミングによって今後のライフプランにどんな影響があるか、資金はショートしないかといったことが見えてきますね。不要な不安もなくなり、自分にとってベストのタイミングを見つけやすくなるでしょう。

ライフプランを立てる最大のメリットは、「一番やりたいことができなくなるリスク」を減らせること。あくまで「夢」を実現するためのツールに過ぎないのです。自分が立てたライフプランにがんじがらめになって、肝心の事業がうまくいかなくなっては元も子もありませんから、その時の状況に応じてフレキシブルに調整していきましょう。

(鈴木さや子)