会社や組織に縛られることなく、自分ら人生の決断をし、新たな働き方を見つけてきた女性たちのインタビュー連載です。仕事もプライベートも、自分にウソはつきたくない。そんな30代女性が、もっとしなやかに、そして軽やかに生きていくためのヒントが、ここにありました。
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両想いを確認する純愛専用アプリ「one heart」で話題となった株式会社LIP代表の関口舞(せきぐち・まい)さん。社会人経験わずか半年で23歳の時に起業、いまだ26歳という関口さんの、その原動力はちょっと意外なところにありました。

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将来の夢は小説家か舞台俳優

──最初から20代で起業するつもりだったんですか?

関口舞さん(以下、関口):実は起業なんてまったく考えていませんでした。昔は小説家や舞台俳優を目指していました。そちらの方面に進もうと考えていたんですが、大学3年生の時にまわりが就活を始めたのをきっかけにビジネスの世界を覗いてみたら、ビジネスも面白そう!と思って。

──そして、就職したのが広告会社だったんですね。どうして広告業界に?

関口:きっかけは就活中に学生起業家の人と出会ったことでした。彼らを見ていて「かっこいいな、憧れるな」「こういう人たちと一緒にいたいな」と感じて。それで、広告会社でPRのプロになれば、彼らのお手伝いができるかも、と考えました。

──就職してどうでしたか?

関口:ところが、入社して数週間で辞めたくなってしまって。というのも、新卒なので当たり前だったのかもしれないのですが、仕事をしている時間よりも待機している時間のほうが長く、私がそれに適合できなかったんです。自分が欲しいスキルはいつになったら身につけられるんだろう……と。なんだか絶望してしまい、だんだん元気をなくしていきました。

「仕様書って何?」からのアプリ開発

──それで、半年で会社を辞められたんですね。

関口:仮に転職をして、また環境のせいにして成長できないとしたら、その会社にも申し訳ないですし、逆にリスクが高いと感じたので自分で会社を作ることにしました。辞めると決めてからは、自分にできることは何だろう、と一生懸命に考えましたね。当時の私にできたのは「学生と企業をつなぐこと」。学生時代に就活サイトでライターをしていた経験もあり、学生や転職したい同世代に知り合いがたくさんいたんです。一方で、ベンチャー企業の人事担当者が人材確保に苦労していることを知りました。そこで、双方をマッチングしてみたらどうだろう?と。

──実際に起業されたタイミングは?

関口:会社を辞めた瞬間から、ですね(笑)。退職してすぐにビジネスとしてスタートさせました。イベントを開いて会社の魅力をアピールしたり、採用ページを作成したり、まずは自分のできることから、コツコツ続けていきました。

──そして、次にリリースしたのが話題となった純愛専用アプリ「one heart」ですね。

関口:人材のマッチングサービスがうまく回り始めて余裕ができたので、「もっと大きなビジネスをやりたい」という思いが膨らんできたんです。世の中が大騒ぎするようなサービス、心から楽しんでくれるようなサービスを生み出したいな、と。で、思いついたのが「両想いを確認するアプリ」です。

──ご自分で開発されたんですか?

関口:いいえ! 私はアプリ開発はできないので、前のサービスでつながりのあった会社さんの手を借りてアプリをリリースしました。でも、開発の現場にいたことさえなかったので、エンジニアさんに依頼するにも「仕様書って何?」ってレベルだったんです(笑)。デザインのスキルがあるわけでもなく……手描きで伝えましたけど、なんとかなりました。

──そして、すぐに大ヒットに?

関口:メディアの方々が興味をもって取り上げてくださり、話題にすることができました。 結果、一気にダウンロード数が増えて、一時期はApp storeのカテゴリランキングが「ヤフオク!」より上位だったこともありました。

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「世の中って、優しいな」という実感

──起業してみてどうでしたか?

関口:起業して気づいたのは、「世の中って、優しいな」ってことですね。一生懸命ぶつかっていって、多くの方に助けていただきました。

起業したばかりの頃は、自力でできないことばかりです。なので自分の能力だけでなく、周囲の人に助けてもらえたからこそ、なんとかなっていると思っています。本当にいろんな方にお世話になりました。プレスリリースにしても、広告会社にいたわずかな期間にちょっと勉強した程度だったので、上手な書き方を企業へ教えてもらいに行きました。

──頼み方のコツってあるんですか?

関口:何かを教えていただいたり、力を貸していただく代わりに、自分にできることで恩返しをするようにしていました。例えば、優秀な学生さんをインターン生として紹介したり、その企業さんのことを紹介する記事を書いて拡散したり。

その時点での「自分にできること」はほんの小さなことだったとしても、相手のお役に立てることもある。あるいは私の実現したいことやビジョンに共感してくださって、どう恩返ししたらいいかわからないくらいたくさん助けてくださった方もいて。本当に感謝しています。

「揉めたくないから一人でやる」から卒業して

──「one heart」を出したあとで、考え方は変わりましたか?

関口:変わりましたね。それまでは、誰かと一緒にやって揉めるのがイヤだったんです。だから、一人ぼっちで起業していました。でも、「one heart」を出して、実際に私の作ったサービスで人と人がつながるのに感動して、人と一緒にチームを組んで、もっとこの領域にチャレンジしたいという決意が湧いてきました。

──そして今の株式会社LIPを立ち上げたんですね。

関口:きっかけもありました。「one heart」でこれから攻めていこうというタイミングでFacebookのAPIの仕様が変わり使えなくなってしまったんです。「なんとかしてください!」とザッカーバーグへメッセンジャーで直訴したのですが、既読にもなりませんでした。

でも、ここで諦めるのはイヤだった。自分ひとりの力だけでは大きなことはできない、という限界もその時に感じました。なので、誰か一緒にやってくれる人を探し始めました。結果、共同創業者となる松村を紹介してもらい、ちょうど彼とやりたいサービスの方向性や信念が一致し、意気投合して株式会社LIPを立ち上げました。

──これからやりたいことは?

関口:まずは11月にリリースした婚活サービスを成功させたいですね。結婚相談所のような“カップルをプランニングするシステム”をインターネットで実現したくて始めたサービスです。それからプライベートでは、実はまだ小説家になる夢も諦めていないんです。休日は、たまに文章を書く時間も確保しています。

――関口さんはまだ20代ですが、結婚や出産について考えていることは?

関口:ロマンチストなので、今晩にでも超運命の出会いがあれば明日結婚してもいいくらいです(笑)。ただ、結婚によって自分のライフスタイルが変わるのは不安ですね。もし、いつか結婚して子どもが生まれたら、今ほど無茶するのは難しくなるかも……と漠然とした不安はあります。だから、なるべく早く、フルで働けなくなった時になんとかなるスキルは身につけておきたいな、と。

「世の中って、優しいな」このひと言に関口さんのスタイルが凝縮されているように感じました。ちょっと甘くて温かいその世界観が、関口さんのチャレンジの原動力になっているようです。

(編集部)