日本人女性の間で、この十数年の間に著しく増えている乳がん。統計的に見ても、他の部位のがんは減っているのに、乳がんだけは右肩上がりです。しかも、40代を中心に比較的若い世代に多いのも大きな特徴。

その背景には食生活の欧米化や晩産化があると言われいますが、本当の原因はどこにあるのでしょうか?

妊娠・出産は本当に乳がんのリスクを下げる?

「乳がんリスク」としてよく取り上げられるのが、次のリスト。みなさんもテレビや雑誌で一度くらい目にしたことがあるかも?

□初潮が早い  
□閉経が遅い
□出産未経験
□太っている
□家族に乳がんの人がいる
□両性の乳腺疾患の既往
□長期間ホルモン補充治療を受けている
□多量の飲酒や喫煙の習慣がある  

リストの3番目に「出産未経験」とありますが、これまでは出産経験がある方が乳がんのリスクが少ないとされてきました。妊娠・出産によって一時的に女性ホルモン・エストゲンの分泌が減ることが、乳がん予防に効果ありとされてきたのです。

ところが、最近になってこの定説をくつがえす研究結果が出てきました。

妊娠で乳がんになったケースに共通する遺伝子

それは、「ある遺伝子が欠損している場合、妊娠こそ、乳がん発症のきっかけになる」というもの。このほど東京工業大学の研究チームが発表しました。

まだマウス実験の段階の話だそうですが、「Nrk」という遺伝子がもともとないメスのマウスが妊娠すると、90%の高確率で乳がんを発症するとのこと。ちなみに、この遺伝子がなくても妊娠・出産を経験しなければ、乳がん発症は観察されないようです。

研究チームによると、この遺伝子がないと、妊娠後期にエストロゲン感受性が高まり、多量のエストロゲンに曝されるために乳がんを発症してしまうとのこと。ヒトにも「Nrk」と同じような遺伝子があるので、おそらく人体でも起こりうると考えられているのです。

はたして自分はどうだろう……?と、ちょっと心配になりますね。妊娠がトリガー(引き金)になる乳がんもあるかもしれない。これまでの常識をくつがえす研究結果に不安になりますが、乳がんのメカニズムがまたこうして一つ明らかになったのは朗報と言えるかもしれません。

【出典】
Deficiency of X-Linked Protein Kinase Nrk during Pregnancy Triggers Breast Tumor in Mice

(編集部)