仕事に恋に人生に、人の悩みは尽きないもの。

人に相談したり、ひとり悶々したりするのもよいですが、古典を手にとってみるのもオススメです。歴史上や物語の中の人物の生き様から学んでみてはいかがでしょうか。

『源氏物語』の全訳(ちくま文庫)で知られる古典エッセイストの大塚ひかりさんに30代女性のお悩みに回答していただきます。1回目のテーマは「恋愛と結婚」です。

5年間付き合っている恋人がいますが、いわゆる”草食系男子”です。家族のような存在で、一緒にいると安心できますが、刺激が足りないと思うこともしばしば。もともとの好みのタイプが肉食系の男性なので、ぐいぐい引っ張っていってくれる男性に会うとときめいてしまうことも。そろそろ結婚の話も出ていますが、そんな”浮気性”の私が1人の男性と結婚生活を続けていかれるのか不安で、結婚をすべきか迷っています。(33歳・会社員)

平安時代だったら理想の妻

あなたのような人こそ結婚向き、ぜひ結婚すべきです。

刺激を求めるあなたであれば、容姿にも気を遣い、いつまでも恋する女の雰囲気を漂わせていられるでしょう。平安時代、そんな女性は理想の妻でした。平安中期の『大和物語』には、古妻が貧しくなったので、金持ちの新妻と結婚した男が、しばらくして新妻を訪ねたところ、自分のいないところでは質素な服を着て、かまわぬ格好で自分でご飯を盛っているのを見て、すっかり幻滅して古妻のもとに戻ったという話があります。

当時は一夫多妻で、男が女の家に通う結婚形態が基本なので、家の維持費とか食費なんかは女が払っていたために、男も女の経済力を重視していた。しかしそれ以上に重視したのは「セックスアピール」です。

平安時代の「女子力」って?

平安時代の「女子力」は、料理や洗濯がうまいことではありません。むしろそんなのが得意な女は妻にふさわしくない。「生活感が漂う世話女房」より「風雅を解する恋愛体質な女」が良い女、女子力の高い妻だったんです。男も同じで、『源氏物語』では、恋の遊びのできない男は“まめ人”(実直者)、要は野暮天と見なされ、“なほなほしき心地”(平凡な感じ)がするとバカにされています。 

長続きの秘訣は「通い婚」?

いや、それは平安時代の話だろう、とお思いでしょう。ならばあなたのまわりを平安時代にしてはどうでしょう。もし恋人の同意が得られたら、通い婚にする。その代わり、夫が女を作っても受け入れる覚悟がないといけませんし、女も経済力を求められる平安時代のように、あなたもずっと仕事を続け、収入を確保しないといけない。それができればよい結婚生活になるのではないでしょうか。

南北朝時代の『徒然草』の兼好法師も言ってます。“よそながら、ときどき通ひ住まんこそ、年月(としつき)へても絶えぬなからひともならめ”と。離れていながら、女のもとに時々通って泊まるのが、年月が経っても切れぬ仲にもなろう、というわけです。

(大塚ひかり)

大塚ひかり(おおつか・ひかり)古典エッセイスト。1961年横浜市生まれ。『源氏の男はみんなサイテー』『カラダで感じる源氏物語』『ブス論』『愛とまぐはひの古事記』(いずれも、ちくま文庫)『本当はひどかった昔の日本』(新潮文庫)など古典エッセイのほか、個人全訳『源氏物語』(全6巻 ちくま文庫)がある。