将来の妊娠に備える卵子凍結保存について、市民の56%が「よい」と肯定的に考えていて、その割合は3年前より増えていると先月、毎日新聞が報じました。

市民の間では卵子凍結にポジティブな意見が増えているようですが、医師からはそのリスクに警鐘を鳴らす声も。卵子凍結保存のニーズやリスクについて「なかむらレディースクリニック」の中村容子(なかむら・ようこ)先生に聞きました。

ニーズは増えている

(卵子凍結のニーズは)増えています。特に2014年頃より増えているように思います。当院で行っている体外受精説明会にも、卵子凍結を検討中の方が時々いらっしゃいます。

高齢出産のリスクを忘れないで

卵子凍結によって、高齢でも出産できるという選択肢が増えたと歓迎する声もありますが、高齢になって妊娠・出産するリスクを忘れてはいけません(ちなみに日本産科婦人科学会では、病気が理由ではない、仕事やライフスタイルの優先が理由の社会的卵子凍結に関しては「推奨しない」という見解を示しています)。

また、注意すべきは、卵子凍結をビジネスと捉え、卵子凍結を推奨している施設が近年増加していることです。当院では十数年前より、抗がん剤や放射線療法の治療で妊孕性([にんようせい]妊娠する力)を失うかもしれない白血病患者などの悪性疾患の方を中心に、卵子凍結を行ってきました。

2016年8月時点で、当院では182症例の卵子をお預かりしており、これまでに融解した卵子は106個。移植あたりの妊娠率は39.3%で、8名の方がご出産されました(対象者の平均年齢38.6±5.1歳)。

卵子凍結を希望するなら…

体外受精における胚凍結は、卵子と精子をあわせて受精させたものを凍結保存しておき、実際に移植(子宮に戻す)する直前に融解して、使用します。卵子凍結は、受精させる前の状態で凍結保存しますので、胚を凍結保存するのと比較して、融解にも、その後の媒精(受精させること)や培養(育てること)においても高度な技術が必要です。

当院では、健康な方に比べ、はるかに高度な技術が要求される悪性疾患の方の、採卵(卵子を体の外に取り出すこと)・卵子凍結、融解、顕微授精、胚移植を数多く経験し、技術を集積してきました。それを元に現在では、採卵、凍結、融解、培養に、当院独自に開発した技術を用いて行っております。卵子凍結を希望する場合は、その延長線上にある融解、顕微授精、培養といった技術力にも注意して施設を選んだ方がいいでしょう。

さらに、卵子凍結保存をしていたら必ず妊娠・出産できる、というわけではないということを心に留めておいていただきたいです。卵子を保存しているから凍結をしているからと言って「これで安心」というわけではないのです。

(編集部)

中村容子(なかむら・ようこ)「女医プラス」所属。徳島県出身。大阪医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、臨床遺伝専門医。 現在、なかむらレディースクリニック(大阪府吹田市)にて、主に生殖医療に携わっている。