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国の雇用施策対象となる障害者数は、約332万人(出典:厚生労働省 平成24年度 障害者の就労支援対策の状況)。彼らを支援するために、軽作業を通じて働くスキルを習得する障害者就労支援施設が設立されたが、利用者はわずか4.9%。そんな中、今年4月に設立された「一般社団法人アプローズ」が新たな挑戦をしている。全国でも稀な、障害者によるフラワーアレンジメントのサービスを打ち出して、一般企業等からの仕事を受注。アプローズ代表の光枝茉莉子さんに、障害者の就労支援についてお話を伺った。

アウディのイベントや国会議事堂に飾るフラワーアレンジメントを作る

――アプローズの活動内容を教えてください。

光枝茉莉子さん(以下、光枝):アプローズは障害者の方にフラワーアレンジメントの商品を作っていただき、販売する施設です。クッキーを作ったり、商品を袋詰めしたり、苗を栽培したりする所はありますが、お花に特化している施設は全国でも珍しいですね。

――なぜ、青山で開設されたんですか?

光枝:消費者へのイメージ戦略です。最初に持たれる、「障害者が作った」というマイナスイメージを払拭したくて。青山は、全国のお花屋さんが出店したい憧れの聖地。この土地のブランド力で、消費者にお洒落なイメージを持っていただこうと考えました。

――初仕事はアウディのイベント会場装花だったそうですね。お仕事のキッカケは?

光枝:開設直後に、広告代理店の知人に紹介してもらいました。デザイン案が採用された時は、職員全員で大喝采。たまたま見学にいらしていた障害者の方も「アウディの仕事ができるんなら、早く通いたい」と、すぐ利用を申し込んでくださいました。自分が作った作品を多くの方に見てもらえることが、モチベーションを高めるんだと実感しましたね。他にも、国会議事堂にお花を置いていただいたり、企業様とのタイアップ企画を進めたりしています。今後も一般企業に求められ、選ばれる商品を、広く世に出していきたいですね。

明るい雰囲気の施設にして、商品に売れる工夫を

――従来の障害者就労支援施設には、どんな印象をお持ちですか?

光枝:元々、都庁に勤めておりまして、開設支援のために多くの施設を見て回っていたんです。血眼になって障害者のために働く支援員さんに感銘を受けましたし、本当に素晴らしい施設が多い。その一方で、施設の在り方には疑問を感じていました。たとえば、就労支援施設って、都心部は特に、古い雑居ビルの中にある所が多いんですよ。狭いスペースの中で、20人くらいの人が黙々と袋詰めをしている場所もあったり……雰囲気が暗くて、ちょっと入りづらいんですね。販売しているクッキーも、いかにも「福祉作業所で作りました」っていう商品を売っていたりする。私だったら、もっと明るい雰囲気の施設にして、商品に売れる工夫をするのにな、と考えていました。

――逆に、「アプローズ」開設にあたって、ヒントになった施設はありますか?

光枝
:「NPO法人やまぼうし」。法政大学でお洒落なカフェを運営したり、一日250食が出るお弁当屋さんを経営したりしている所です。きちんと、品質で一般企業に選ばれて、売れる商品を作る。その姿を見て、「障害者施設でも、売れる商品を作って稼いでいいし、地味にまとまらなくてもいいんだ」って気づかされました。そこから本格的に起業を考えだしたんです。

――開設後、就労支援施設の課題を感じることはありますか?

光枝:そもそも、就労支援施設の存在が知られていないことですね。一般の方はもちろん、障害者でも知らない方が多い。行政が用意している就労支援機関は充実しているのですが、集約する窓口機能がないので情報が届かないんです。もっと施設が身近になれば、障害者の方が外に出るキッカケが増えますよね。私はアプローズが有名になることで、結果的に全国にある施設の存在自体を広められたらと考えています。

30歳女性起業家の障害者支援事業とは

自宅と社会の間に、体と心のバランスを整える居場所をつくる

――障害者が働くために、どんな支援が必要だと思いますか?

光枝:まずは、居場所を作ってあげること。キッカケがあれば家から出られる方って多いと思うんです。先日、5年間ひきこもっていた発達障害の女性が、「フラワーアレンジメントならやってみたい」って、いらっしゃって、最初は緊張されていましたが、どんどん笑顔になって、最後は嬉しそうに作品を持って帰られたんです。アプローズはそういう、家から出るキッカケになる、気軽に来られる施設にしたい。自宅ではないところで、社会と接点を持つ場所にしたいですね。

――いつか、社会に出ていけるように?

光枝:ここは、ずっと居続ける場所ではないんです。能力のある方は社会に出て行ったほうがいい。現実には、利用者の人数分だけ出る補助金目当てに、利用者を手放さない施設もあるんですけど……そうは、したくないですね。アプローズで体と心のバランスを整えたら、あとはもう、自分の足で歩いていけると思っていますから。私が好きなのは「鳥は空へ。魚は海へ。障害者は、社会へ」という言葉です。人として、障害者の方が社会にいるのは自然なこと。それを支援させていただくのが、私たちの仕事なんです。

障害種別は特定しません。気楽に来てください

――どんな障害の方でも、受け入れるそうですね。

光枝:障害種別は特定したくないですね。たとえば、聴覚障害の方から利用の問い合わせが来た時、アプローズには手話をできる職員がいないので、どうするか職員皆で話し合いました。結果、筆談やアイコンタクトでレッスンしてみよう、と、受け入れることにしました。私たちは最初からできないと決めつけず、手探りでもいいから、やってみるスタンスなんです。

――最後に、社会に出たいと思っていらっしゃる障害者の方にメッセージを。

光枝
:アプローズの利用者さんも、最初は障害者の施設に行くことに抵抗があって、緊張したそうです。でも来てみたら「こんなに気楽に通えると思わなかった」って、肩の力が抜ける方が多いんですよ。うちのお花のブランド名は「ビスターレ・ビスターレ」、ゆっくりしなよって意味なんです。どうぞ構えず、気楽にいらしてください。

(取材・文=田久保あやか)

●光枝茉莉子(みつえだ・まりこ)

1984年生まれ。8年間の都庁勤務の中で最も惚れ込んだのが、障害者の就労支援事業。30歳での起業を決意し、人に会っては夢を語る熱意と行動力で、賛同する職員と取引先を開拓。念願叶って、2014年4月に社団法人アプローズを設立する。【問い合わせ先】社団法人アプローズ tel 03-6804-3623