R0044463-s

10月に入ると、そろそろ紅葉が気になるもの。山の方はもう色づき始めたかな、北の方はどうだろう……? 遠くの景色を思い、少しうずうずしてきます。

そういえば何年か前、どうしても行きたくなって、この時期に弾丸で奥入瀬渓流へ紅葉を見に行ったことがありました。東京から新幹線とバスを乗り継ぎ、約半日。「韓国へ行く方が早いんじゃないの?」というくらい時間がかかったのですが、現地はあいにくの雨……。

奥入瀬5-s

晴れていたらまた全然違う景色なんだろうなあ……と思いながらも、肌寒い雨の中、色づくブナ林を散歩して満足しました。

奥入瀬3-s

夜は十和田湖へ移動し、湖畔のホテルへ。おそらくバブル時代に建てられた、昔は豪華だったであろう古い建物でした。今は人もまばらで、ときおりグループ客とすれ違うくらいです。居酒屋を探しに街へ出ても、あたりは真っ暗で懐中電灯がないと怖いくらい。

奥入瀬2-s

お店もあまりないので、開いていた酒屋へ駆け込むと、青森の名酒、田酒が! 作戦変更して、部屋でしんみり飲むことにしました。たまにはしんみり、お酒を飲みながら本を読むのもいいものです。

ところで、意外にも紅葉にはいまだ謎が多いそう。高校時代の担任が面白い生物の先生で、みずからも大学で研究をしている方でした。その先生が長年研究テーマにしているのが、「紅葉現象」。なぜ秋になると葉は色を変えるのか、という謎を追いかけていました。

奥入瀬1-s

秋になると葉の色が変わることなんて、「そういうものだから」と疑問にも思っていませんでしたが、言われてみれば確かに「はて?」です。変色の仕組みやメカニズムには諸説あるようですが、実験によりその説明が十分でないことがわかっているそうです。さらに、変色する“意味”にいたっては、まったくと言っていいほどわかっていないそう。

その先生はいつもこんなことを言っていました。

「先生が本来やるべきことは、“わかっている”ことを教えるのではなく、“世界にはこんなにもわからないことがある”というのを教えること。人間は、興味さえもてば、自分で学んで行く」

本当にその通り。紅葉を見ると、いつも先生のことを思い出します。

R0044153-s

宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。編集者、ライター。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽雑誌、女性誌、週刊誌、カメラ雑誌などで働く。朝日新聞デジタルで「島めぐり」「ワインのおはなし」「花のない花屋」などを連載中。ラテン音楽とワインが好きなエピキュリアン。