ブラジル・リオデジャネイロに住むエリーザ・コレピコロさん(34)。若くして“白髪を残す”決断をし、白髪に悩む若い女性を応援するためにブログ「Projeto Gris」を2年前に立ち上げました。コレピコロさんのブログは白髪に悩む若い女性を中心に支持され、新聞などメディアの取材を受けるなど注目されています。

一般的には「ずぼら」「老化」の象徴と見られがちな白髪をそのままにする決断をしたきっかけは? 白髪を残す決断を通して見えたことは? コレピコロさんに話を聞きました。

白髪

染髪をやめたきっかけ

ーーいつから白髪が気になり始めたのですか?

エリーザ・コレピコロさん(以下、コレピコロ):最初に白髪を見つけたのは16歳の時。まだ生えても数本ずつしかなくて、見つけ次第ヘアマニキュアを使って、ただ純粋に染めることを楽しんでいました。

20歳を過ぎてから毎月染めないと目立つようになって、28歳の時には色が抜けるのが早くて染めるのが間に合わなくなってきたんです。ヘアカラーを使い始めましたが、髪がすごく傷み、抜け毛や切れ毛も激しくなりました。

やめた今は髪も傷んでいないので、きっとヘアカラーが原因だったんだと思います。30歳になってから、「(染髪を)やめたら一体どうなるだろう?」と考え始めるようになりました。

“拠りどころ”は英「VOGUE」のサラ・ハリス

コレピコロ:ブラジル人女性は、肌にボトックス注射をしたり、整形手術をしたり、若く見せることに強いこだわりがあります。 この壁を打ち破るのは簡単なことではありません。

白髪に関しては、「若い女性は白髪でいてはいけない」「白髪にするなら髪は短くないとダメ」という二つの考え方が一般的だと思います。

そんな時、ファッション誌「VOGUE」(英国版)のエディターのサラ・ハリスさんを見つけました。私が初めて見つけた白髪の若い女性です。調べてみたら、私と同じように「16歳から白髪が生えて、31歳で全体が白髪になった」と。彼女の髪は腰まで長くて、真っ白。でもとてもオシャレで「白髪でもいいんだ! キレイでいられるんだ! じゃあ、自分はなぜ挑戦しないの?」と思うようになりました。

みんな、 自分がひとりぼっちだと感じないために“拠りどころ”を必要としているのではないでしょうか。私の場合は彼女が“拠りどころ”になりました。

夫は猛反対、でも…

ーー白髪のままでいることをまわりに相談しましたか? 反応はどうでしたか?

コレピコロ:夫にはめちゃくちゃ反対されました(笑)。「ゼッタイ染めなきゃダメだよ! まだ若いのにおかしいよ!」ってね。

ーー(染髪を)やめたのはいつですか?

コレピコロ:31歳の5月頃、夫が長期有給休暇に入った時に「全体的にブリーチしてみたいんだけどどうかな?」と聞かれました。実は夫も若くして白髪があって。私は「やってみたらいいじゃん。髪はまた生えてくるものだし、気に入らなければまた染めたりすればいいんだし」と言いました。

私がアイデアを受け入れたことに驚いたみたいだったけど、やってみたらすごく似合っていてカッコよくなりました。それと同時に、私が白髪のままでいることに反対する理由がなくなったんです。「あなたがブリーチしてよくて、なんで私は白髪染めをやめちゃいけないの?」と(笑)。

それで32歳になった年の7月に、染髪をやめることを決意して、そのタイミングでブログを始めたんです。

悩む女性のためにしたかった「何か」

ーーブログ「Projeto Gris」を始めたのはどうしてですか?

コレピコロ:白髪染めをやめるのを考え始めた30歳頃から、いつもネットで白髪の女性がいないか探していました。でも、いつも自分よりずっと年上の人ばかりで、近い年代の人はいませんでした。サラ・ハリスさんのような女性を見つけたこともあったけど、英語の情報しかなくて。ポルトガル語の情報はまったくと言っていいほど見当たらなかったんです。

若い女性が白髪を選んだらどうなるか、気になる人は私以外にもたくさんいると思っていました。そんな若い女性を応援する「何か」をしたかったんです。私が白髪を選ぶことにしたプロセスを写真で公開して、立ち止まっている人の助けになればと考えました。

「白髪だけど、何か?」

ーーブログを始めてからの反響はいかがですか?

コレピコロ:毎日写真をアップしても髪の毛に変化がないので、2、3ヵ月ごとに経過を報告しています。最初は全然アクセスがありませんでしたが、ブログを続けて1年後くらいに増え始めました。髪も伸びて、白髪が目立つようになった時期です。

ブログを始めて2年が経った頃、たまたまFacebook内の広告に「Tenho cabelos brancos, e daí? (私白髪だけど、何か?)」というページが出てきて覗いてみると、女性たちがそれぞれ自分の白髪体験を語っていました。

それで私も投稿したんです。その投稿が瞬く間にたくさんの人にシェアされ、約1000の「いいね!」と約100件のコメントがつきました。投稿はさらに拡散され、「hypeness」というサイトがシェアし、私のブログのアクセスも一気に増えました。リオデジャネイロの有名な新聞社にも取材され、そこからは雪だるま式に注目度が上がりました。「ただ白髪を染めないだけ」というシンプルな事実に、こんなに反響があるとは予想もしていませんでした。さらには、こうやって日本のメディアにも取り上げられるなんて!(笑)

ブログにも「怖かったけど決断する勇気が出た」という若い女性からのコメントがたくさん届いています。以前はそれを探す側でしたが、今は「幸せになりたい」人たちに勇気を与える立場になれて嬉しいです。

35歳以下で白髪を受け入れることを不思議に思われるけれど、白髪は必ずしも「老い」を意味しません。遺伝子によるものですから、年齢が若くても、自分の意志がどうであっても、生えてくる時は生えてくるのです。

街で会う人の反応も最初は「なんで染めないの? そんなに若いのに!」といったものが多かったですが、最近では「似合ってるね!」「素敵だね!」に変わってきました。

エリーザ・コレピコロさん

エリーザ・コレピコロさん

大事なのは「なぜそれを選択したのか」

ーー日本の女性たちにメッセージをお願いします。

コレピコロ:勘違いしないでほしいのは、私は髪を染めることに反対しているわけではありません。例えば髪を染めるのが好きで幸せを感じるなら、続けたらいいと思います。でも、染めるのが嫌いでしょうがないならやめてみたらいい。チャレンジしてみたらいいんです。 鏡を見て「これが好き」と思えたらそれが最高の決断。

それは髪の問題だけではありません。人生において選択する際に「義務だからやる」のは最悪なこと、まったく価値のないことだと思います。自分の中でなぜそれを選択したのか意識することが一番大事。 皆と同じになる必要はない。あなたはあなた。まわりがなんと言おうと、あなた自身を幸せにするものを見つければいい。

ただ、それが“何なのか”は誰かが教えてくれるものではない。自分で見つけるものだと思います。

Elisa Colepicolo(エリーザ・コレピコロ)ブロガー、博物館学アドバイザー。1982年7月8日生まれ。ブラジル・リオデジャネイロ在住。リオデジャネイロ州連邦大学(UNIRIO)博物館学修了。現在は、クライアントの家を訪問し、個人の所蔵品、書籍、写真、CDなどの整理・目録作成などをメインに行う事業を立ち上げて10年になる起業家の顔も持つ。ブログ「Projeto Gris」ブログのProjetoはポルトガル語で「プロジェクト」を意味し、Grisは「白髪の」を意味するGrisalhoからとったもの。

シケイラ紀子