東京に生まれて、大学も就職も、生活の拠点はずっと東京。それが、ひょんなことからキャリアをリセットしてIターン&お一人様で富山県へ。 仕事、暮らし、人間関係……。42歳にして、まったく未知の世界に飛び込んでしまった、おんなお一人様の移住物語である。
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地方移住というハードルを、いとも簡単に乗り越える一番の原動力は、「恋」である、と大胆にも前回書いた。

ならば、地方男子と東京女子、地方女子と東京男子のマッチングがうまくいけば、移住者は増えるんじゃないの? と思うのは、やや短絡的な考えだろうか。ところ変われば、常識も変わる。男と女のあり方も変わる。

地方の田舎における「男性」「女性」のあり方について考えてみた。

【第2回】
最強の原動力は「恋」だ。女性が地方に移住する理由

女お一人様は“残念な生き方”か?

hanabatake

富山に移住することが決まってから、東京の友人たちが送別会やランチ会などを開いてくれた。中には「移住? 結婚で?」「富山で地域おこし協力隊をやるって、一体何をするの?」と興味津々で突っ込んでくる友人もいた。往々にして、みんな驚いたり、少なからず悲しんでくれていた(ように見えた)。

笑ったのが、親戚の叔母の反応だ。

私は基本、「人に相談する」ということがなくて、自分で決めた後はすべて「事後報告」なのだけど、この時も電話で「春から富山に行くことにしたから」と伝えると、「おめでとう!ついに決心したのね」と何だか嬉しそうな様子。「あれ?なぜこんなに喜んでくれるんだろう?」と思ったら、叔母は、この私が、嫁に行くものと勘違いしていたのだった。

「あぁ、ごめんね。違うの。そうじゃないの。結婚じゃなくて、ただ、やりたいことがあって富山に行くの」と言った時の叔母の残念そうなことと言ったら。「えー? そうなの? 結婚じゃないの? なんだぁ、ガッカリだわ」と本当に肩を落としていた。

私は申し訳ないような気分になって、「でもね、まだ諦めていないからね! グッド・ニュースを伝えられるように頑張るから」と苦し紛れに切り返したものだった。

そう、時代は変わったと言えども、戦後、昭和の高度経済成長期を生きてきた親世代にとっては、やはりオンナお一人様は「残念な」生き方なのだ。「結婚=オンナのしあわせ説」は、「非婚時代」「結婚自由化時代」になっても、圧倒的に世間が支持している「最強伝説」、いや、「定説」なのだ。

田舎で一人の時間はない

かさがけ

「恋」が移住の原動力になるのであれば、「結婚」はもっとも手っ取り早い移住のモチベーションになるだろう。今、日本全国、どこでも地方男子と都会女子をマッチングさせる婚活イベントは、頻繁に行われている。それだけ需要があるのだろうし、企画的には確かに面白い。取材対象としては興味深いテーマだ。

だけど、当事者たちにとっては、正直なところ、どうなのだろう? どれだけゴールに結びついているのかな、とも思う。

恋愛を経ての移住ならまだしも、結婚を前提にした「お見合い的な」短期間の付き合いの果てに地方の田舎に移り住んだとしたら。

何も知らずに田舎に飛び込むのもチャレンジなのかもしれない。

ただ、それが三世代同居で大家族だったりした場合、都会女子はどこまで耐えられるのかな? とも。都会の核家族と違い、地方では三世代同居も多い。そして、女性は結婚しても、男性と同じように働くのが普通だ。東京のように専業主婦は珍しいケースだ。

特に富山では、奥さんが、日中家にいることがはばかられる空気がある。

そして、家にいると、回覧板や町会費の集金やらで、ご近所さんたちがしょっちゅう、やってくる。家にクルマが置いてあれば在宅していることがわかるので、居留守もできない(たまに一人になりたいことがあっても……)。

都会時代には考えられなかったほど、田舎暮らしでは、玄関のドアが叩かれることが増えるのだ。

女性の立場はぐんと薄まる

青空

私の場合は、ずっと東京のドライな人間関係の中で暮らしてきて、予備知識なく地方に移住してきたけれど、暮らしてみて初めて見えてきた「地方の特殊性」がいくつかある。

例えば、都会にいると男女平等が当たり前で、仕事をしていても、特別、自分が「女性であるがゆえに一歩下がる」ことを意識する場面はほぼなかった。

それが、地方の田舎に行けば、男性が圧倒的に優位だし、日頃からすべての決定権を握っているのは、「お父さん」や「男性」だ。会議の場などでも、まずは誰が発言の口火を切るか、男性の発言をつい待ってしまう自分がいたりして驚く。

とある東北の田舎に取材に行った時のこと。

町の活性化に取り組む会のメンバーにインタビューした際、男性に交じって、一人だけ女性がいた。会の代表(70代くらいの男性)が一人ひとりの名前と活動内容を紹介してくれたのだが、その女性だけ、名前が紹介されず、さり気なくスルーされたのに驚いた。「あれ?」と、一瞬と思った。同じようなことが別の機会でもあった。

ある地方の機関誌に、女性職員の紹介記事が出ていたのだが、名前は出ておらず、写真とともに、「新たに職員となった女性」とだけ書かれていた。名前なし。匿名の某女性。そもそも、名なしでは、ニュースの役割を果たしていないではないか! 読んでいて思わず、ズッコケそうになった。

地方暮らしは生ぬるいもんじゃない

鳥さん

そう。女性の立ち場は、地方の田舎に行けば行くほど、弱く薄まる。

いい意味で、男性中心の時代の名残が残っている。日本の昔ながらの文化とも言えるのだろう。そして、これが「田舎ならではのやり方なのだ」と知った。それは都会から来た私にとっては「驚き」だが、地方に生まれ育った人々からすれば、当たり前なのだろう。

その「違い」や「ギャップ」が、客観的に見て面白いなぁ、と。そして、私はそんな「都会」と「田舎」の違いを楽しみながら生きている。

都会とはまるっきり異なる、男性、女性のあり方。

暮らし始めて見えてくるさまざまの風習を知るにつけ、「田舎に移住するって、『癒し』とか、『のどか』、とかそんな生ぬるいもんじゃないぞ」とも思う。

もし、これから地方に移住する、もしくは、嫁ぐ可能性のある女性に対しては、「お試し田舎暮らし」をしてみて、いち生活者として、見えてくるものを理解した上で移住や結婚を決断するのもありだよ、と。

そんな理屈よりも、好きな場所、好きな相手だったら、迷わず飛び込むわ!という私みたいな奇特なチャレンジャーならまったく問題ないのだけど……。

今、こうして地方の田舎ライフを120%満喫している移住者・未婚の私だけど、同じような道を志すかもしれない女性たちには、ささやかながら、だけど、声を大にして伝えたいのです。

写真:松田秀明

高橋秀子