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誰かを連れていきたくなる島

五島列島に行ったある友人が言いました。

「あそこで刺身を食べると不幸になるよ」

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島の魚があまりにも美味しすぎて、“アフター五島”のあとは、どこで刺身を食べても美味しいと感じられなくなるとのこと。大げさな!と笑いながら聞いていましたが、その数ヵ月後、私も五島列島へ行くことに。あの噂は本当だろうか?と、さっそくお寿司屋さんへ駆け込むと……。

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はい、まんまと不幸になりました。美味しすぎます。値賀咲(イサキ)、豆アジ、透き通るイカ……新鮮な魚が舌の上でとろける、とろける。

小値賀島(おぢかじま)に住んでいる方いわく、島にはいわゆる魚屋さんはないとのこと。魚は“釣るもの”か“もらうもの”。どうしても買う必要がある時は、早朝の漁港に行って漁師さんから買うそうです。切り身なんて存在しません。島の人が「島外では魚は食べない」というのも頷けます。味が全然違うもの!

ちなみに小値賀島では、小値賀アイランドツーリズムが運営している“古民家ステイ”と、地元の方の家に泊まる“民泊”に泊まりました。『美しき日本の残像』(朝日新聞出版)の著者でもある東洋文化研究者のアレックス・カー氏がプロデュースした古民家は、ため息がでるほどステキです。古いものを生かしつつ、現代生活の快適さも取り入れたまさに“理想の空間”。ここに泊まること自体が何にも代え難い“経験”になります。

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一方、民泊の面白さも捨てがたい。現地の方の家にお邪魔し、お母さんに魚のさばき方やアジのたたきを教わりました。夜は手料理とお酒に舌鼓を打ちながらみんなで笑い転げ、まるで昔からの知り合いとの飲み会のよう。帰る日はちょっぴり切ない気持ちになってしまいました。

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今度は友だちにもあの魚を味わわせたい。あの空間を見せたい。あの人たちに会わせたい。小値賀島は、誰かを連れていきたくなる島です。

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宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。編集者、ライター。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽雑誌、女性誌、週刊誌、カメラ雑誌などで働く。朝日新聞デジタルで「島めぐり」「ワインのおはなし」「花のない花屋」などを連載中。ラテン音楽とワインが好きなエピキュリアン。