恋愛、結婚、浮気、ケンカ、離婚……いつの時代も変わらない男女の「もつれ」を遺伝子学で解き明かしていく連載です。生命情報学専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生に、様々な男女のもつれの原因を遺伝子学の観点から答えていただきます。
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生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生が、進化や遺伝学の観点から男女のあれこれを読み解く「アダムとイブのもつれる遺伝子」もいよいよ最終回。今回のテーマは「男女の身長差と男の存在価値」です。

男の身長にこだわるのは、時代遅れかも

進化の過程をたどっていくと、ライオンやホッキョクグマなどオス同士の競争が激しい生物の間では、“オス度”が高い個体が選ばれます。つまり、カラダが大きくて強い個体の方がモテるということ。ヒトでも、長身の男性(カラダが大きい)は、テストステロン値が高い(“オス度”が高い)傾向にあります。

ということを考え合わせると、優秀な遺伝子を残していくためには、女性はテストステロン値の高い男に惹かれそうなものですよね。実際、かつては「三高(高収入・高学歴・高身長)」と呼ばれ、高身長が男を選ぶ際の重要な基準になっていた時代もあります。

しかし最近では、「彼氏の身長が低くても気にしない」という女性が増えているよう。「別に男同士で競争しなくてもいいや」「競争に勝ったところで意味ないし」そんな時代の風潮の中、女性の側もテストステロンまみれの男を積極的に求めなくなっているのかも。「男らしさ」の象徴たるカラダの大きさにこだわるのは、もう時代遅れなのかもしれませんね。

低身長の男性の方が離婚率が低い

ここで驚くべき研究結果をご紹介すると、なんと、「身長が低い男性の方が離婚率が低い」ことが判明しているんです。

背の高い男性は、テストステロン値がずば抜けていることが多い分、他のオスとの競争も激しく、異性からも顔で選ばれがち。若い頃からモテまくるせいで、人生の本質を見極められないまま早く結婚してしまい、破局に到る確率が高まるのではないかと推測されています。

一方、背の低い男性は、身長や男らしい顔つきといった見た目ではなく、内面の魅力で勝負します。限られたチャンスを最大限に活かそうと工夫するので、お近づきになった女性をしっかりと見極めて大事にし、対等に付き合ってくれるのでは?と考えられます。

カップルの理想の身長差は?

男女の身長について言うならば、気になるのが「カップルの理想の身長差」。よく「男女の理想の身長差はハグもキスもしやすい15cm」といいますよね。女性の中には、少しでも理想の値に近づこうとペタンコ靴を履いたり、逆にハイヒールを購入したりと“調整”に励んでいる人も少なくないかもしれません。

でも、実はコレ、国によって全然違うんです。

海外、特にヨーロッパの文献を見ると、「カップルの身長差がほとんどない方がうまくいく」と書いてあるのに、韓国では「身長差が大きい方が幸せを感じる」とされているんですよ。世界中どこの国を見ても、男女の平均身長の差はおしなべて10cm程度。それなのに、身長差に対する認識は千差万別なんです。必ずしも、男性が高い方がいい!とはいえないわけです。星の数ほどいる動物の中で唯一、オスがメスより大きかったり小さかったりする、ヒトならでは事情といえるかもしれません。

メスに食われたオスは卵の栄養に

「カラダの大きなオス同士が争い、王者になった大きなオスがメスを獲得する」という生物の場合、オスが一家の大黒柱になっていきます。たとえば、ライオンはメスが狩りを担当しますが、オスは縄張りに他のオスを近寄らせず、近づいてきた猫科のオスを殺したりします。子育てでも主導権を握ります。

逆に、オスの方がメスより小さい生物の場合、「女性優位」、ひいては「子ども優位」であるケースが多いんです。代表的な例が、カマキリ。カマキリのメスが交尾後にオスを喰らうことはよく知られています。

不思議なのは、食べられた後の話。

最新の研究によると、メスに食べられてしまうのはオス全体の30%程度らしいのですが、オスを食べたメスの卵の方が、生き残る確率が高いことがわかったんです。食べられたオスの体内物質をたどっていくと、メス自身の栄養ではなく、100%卵の糧になることが判明。カマキリのオスはまさに身を賭して次の世代に生をつないでいるんですね。なんだか、ちょっと涙ぐましいですよね。

筒井久美子(つつい・くみこ)
理学博士。国際医療福祉大学医療福祉学部助教。東京医科歯科大学大学院博士後期課程修了。専門は医療情報学、生命情報学。学生時代のペットは培養細胞。ナンパされた男に「趣味は?」と訊かれ、「細胞培養」と答えたら逃げられた過去あり。現在1児の母。将来の夢は娘と一緒に細胞ちゃんを培養すること。

小泉ちはる

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