なぜ、息子の罪を母が、夫の罪を妻が謝まるの? 高畑淳子の謝罪会見から感じる社会の重圧

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なぜ、息子の罪を母が、夫の罪を妻が謝まるの? 高畑淳子の謝罪会見から感じる社会の重圧

8月23日、芸能界を震撼させた俳優・高畑裕太さん逮捕劇。その後、母親の高畑淳子さんが謝罪会見を開くなど、一週間以上が経過した今もマスコミを騒がせています。芸能ライターの小田慶子さんは、今回のスキャンダルをどのように見ているのでしょうか?

大物芸能人の息子の愚行

そもそも、その容疑が強姦致傷罪というのが前例のないことでした。タレントや俳優の逮捕劇は珍しくありませんが、そのほとんどが大麻取締法違反や交通法違反など。性的な犯罪でも、田代まさしのような迷惑防止条例違反容疑(のぞき、盗撮)、まだ記憶に新しいキングオブコメディ・高橋健一の窃盗及び建造物侵入(女子高生の制服を盗んだ)といった程度です。

実は、「イヤがる女性に暴力をふるって無理やり性交した(または性交しようとした)」というあまりにも重い容疑で捕まった例はないのです。高畑裕太は、演技派女優として知られる高畑淳子の息子ですが、これまでに起こった二世俳優の不祥事を振り返っても、石田純一の息子・いしだ壱成が大麻取締法違反、中村七之助の公務執行妨害など。この2ケースでも親が謝罪しましたが、「魂の殺人」と言われるレイプは、これらと同列に並べられるレベルの犯罪ではありません。

しかし、どんな凶悪犯罪であろうと、容疑者が成人(22歳)である限り、それは本人の責任。少なくともその親には法的な責任はありません。逮捕前、親子そろってテレビ番組に出ていたこともあり、ニュースや情報番組では、「成人した子ども(裕太容疑者)の犯罪に親(高畑淳子)が責任を持つべきか」という議論がたびたびなされました。

ただ、この議論自体が欧米ではありえないこと。「ユアタイム」(フジテレビ)ではキャスターのモーリー・ロバートソンが「(親と子を)切り離して考えるべきですね」と一刀両断にし、議論にすらなりませんでした。

各紙のひどすぎる見出し合戦

その一方、そんな世界的な常識は知ったことじゃないとばかりに、スポーツ新聞やそのオンライン版は、「高畑淳子『甘やかし』の代償」(スポーツ報知:公称143万部)、「高畑淳子 裕太容疑者ら子供を祖母に『預けてた』と明かす…逮捕前収録TVで」(デイリースポーツオンライン:新聞版68万部)などと、母親のバッシングを始めました。まるで「甘やかしていたから、犯罪者になった」「子どもを預けていたから、悪い子に育った」とでも言いたげです。この論理なら、乳児期から保育園に預けた子どもは、みんな性犯罪者になるのでしょうか?

そして、8月26日の朝には母親の高畑淳子が記者会見を行ないました。それを紙媒体でもっとも早く伝えたのが夕刊紙。「東京スポーツ」(全国で153万部)と「夕刊フジ」(106万部)は「刺し違えて死ぬ」というコメントを一番大きい見出しに選びました。会見で高畑淳子が「(事件前には息子に)いけないことをしたら、お互い刺し違えて死ぬぐらいの覚悟でやらなければいけない仕事だと言っていた」と明かしたのを、あたかも、今回の事件を受けて「息子がこんな大罪を犯してしまったからには、母親である私も責任を負って息子と共に死にます」と悲壮な覚悟で言ったように見せ、読者のミスリードを誘ったわけです。

ミスリードを狙うというやり方では、翌朝に出た「スポーツ報知」(143万部)もひどい。一面に大きく「高畑淳子 出廷へ」。まるで母親も共犯とされて法廷で裁かれるような印象を与えています。本文を読むと、「仕事の日程が合えば、初公判で情状証人(家族として被告の普段の態度などを説明すること)として法廷に立つことを示唆した」という程度のことなのに、よくもこんな見出しをつけたものです。

そして、「私の育て方がいけなかった」というコメントを大きな見出しにしたのは「夕刊フジ」、「日刊スポーツ」(166万部)、「サンケイスポーツ」(127万部)、「東京中日スポーツ」(14万部)と4紙。これこそが各編集部の望んでいた言葉だったのでしょう。「ほら、母親自身が子育ての失敗を認めたぞ」とでも言いたげな紙面レイアウト。実際に子どもが犯罪を起こした場合、「自分の育て方が悪かったのかも」と思うのは親として当然の感情ですが、各紙はそれがそもそもの元凶のように強調することで、子育て中のすべての母親にプレッシャーをかけています。

この会見ではフジテレビのアナウンサーが裕太容疑者の性癖について質問し、ネットなどで炎上しましたが、生中継のテレビとは違い、紙媒体では質問の内容よりその取り上げ方に、制作者の考えが表われます。つまり、「私の育て方がいけなかった」という見出しを選んだ媒体は、母親に責任があると言っているも同然なのです。逆に「スポーツニッポン」(172万部)のように、この会見を大きく取り上げながら、そういった言葉をいっさい見出しにしなかった媒体もあります。

母親の子育てに対する重すぎる「圧力」

7月には俳優の高島礼子が夫・高知東生(のちに離婚)の覚せい剤取締法違反について会見を行ないました。このケースでもなぜ妻が謝罪し、「妻としての責任がある」と言わなければならなかったのか。本来、妻や母親に法的責任はないのに、芸能人だからということで会見を開けば、発行100万部を超えるマスメディアであるスポーツ紙・夕刊紙がよってたかって、スケープゴートにする。そして、築き上げたキャリアにも大きく影響が出てしまう。この社会でいまだに強く求められる「良妻賢母」のイメージと、女性への社会的抑圧を感じずにはいられない一連の事件でした。

(小田慶子)

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