「今の30代、40代って、中高の授業で教えられるべきことをちゃんと教えられていないんです」そう語るのは、女性クリニックWe!TOYAMA(富山市)の院長であり、中学生、高校生に向けてさまざまな啓発活動を行っている産婦人科医の種部恭子(たねべ・きょうこ)先生。

「産む人生もあり、産まない人生もあり。大事なのは、正しい知識に基づいて女性が自分で決めること」と種部先生。8月24日に昭和女子大学にてバイエル薬品主催で行われた、かがやきスクールスペシャル「バイエル カラダのミカタ 高校生シンポジウム」の講演から内容の一部をお届けします。

「産む/産まない」を自分で決めない日本の女性

実は日本は「望んで産む女性」が少ない国なんです。

実際に妊娠した女性のうち、「望んだ出産」だったと答えた女性は36%、「予定外の出産」だったと答えたのも36%。さらに「望まない出産」と答えた人が3%、そして25%が「中絶」を選択しています。つまり実際に「望んで出産した人」は全体の3割強しかいないということ。フランスの場合、「望んだ出産」が66%、「予定外の出産」が12%ですから、これは大きな差です*。
*Alan Guttmacher Institute,1995

このことから何が言えるのか? それは日本の女性が、「産む/産まない」の決断を自分でしていないということ。何となく「できちゃった」というケースが、他の先進国よりも多いんです。

私は個人的には、「産まない人生」も「産む人生」もどちらもありだと思っています。それぞれに素晴らしさがある。強調したいのは、いずれの人生を選ぶにしろ、正しい情報を知った上で、後悔のない決断を下してほしいってことです。もっと働きたかったのに「できちゃった」、もしくは本当は母になりたかったのに「チャンスを逃してしまった」という事態は避けてほしいな、と。

卵子の数は40歳で5000個、45歳で200個

最近では女性の間で「歳をとると妊娠しにくくなる」という事実が、だいぶ知られるようになりました。でも、いったい何歳になったら、どのくらい妊娠しにくくなるのか、具体的に知っている人は少ないのではないでしょうか?

「生涯子どもを持てない確率」について調べた研究があります。それによると、生涯子ナシの確率は、25〜29歳では9.3%、30〜34歳では15.5%であるのに対して、35〜39歳になると一気に高くなり29.6%。さらに40〜44歳だと63.6%まで跳ね上がります*。つまり40代前半では20代の5分の1まで、可能性が低くなってしまうんです。
*Menken ; Age and Infertility ; Science, Vol.233 September 1986.pp1389-1394

加齢と共に卵子が少なくなっていくという話も、かなりの女性が一度は耳にしたことがあると思います。でも、何歳から一気に減少するかまで知っている人は少ないかも。ある研究によると、卵子が減るスピードが一気に2倍になるのは37.5歳。量も質も、ここでガクンとダウンしてしまいます。

生まれた時に700万個あった卵子は、20歳で12万個、30歳で5万個と徐々に減り続け、40歳では5000個になってしまいます。45歳ではなんと200個……*。
*Baker TG. AJOG 1971

こんな数字を突きつけられたら、どうですか? もっと早く知っておきたかったと思う人も少なくないのではないでしょうか?

男性は55歳を過ぎると男の子を作れない?

実は曲がり角を迎えるのは卵子だけではありません。精子にも35歳からいろいろと変化が出てきます。精子自体は作れても、質が変わってしまうのです。

精子の数が減り始めるのは34歳、精液の濃度が薄くなり始めるのが40歳、そして運動率が低下し始めるのが43歳といわれています。そして、55歳を過ぎると男の子が生まれにくくなります。というのも、Y染色体を持つ精子が減ってしまうから*。男の子がほしい場合は、特に早めの準備をおすすめします。
* Stone et. al. Fertil Steril 2013

人生設計は中高生から始めた方がいい!?

結論としては、女性も男性も35歳を過ぎると、妊娠しにくくなるということ。でも、30代半ばといえば、仕事が一番楽しい時期なんですよね。だから、「子どもを持ちたい」と考える人は誰しも(特に女性は)、産んでからキャリアを積むか、キャリアを積んでから産むか、悩むんです。

女性も男性も、すべての人が自分の望んだ人生を送れるように、10代、20代の頃にきちんとした情報を伝えることがとても大事だな、と私は常々感じています。私は普段から中高生に向けて話をすることが多いのですが、「将来、3人子どもが欲しいなら、25歳から産み始めないと、カラダの面でも仕事の面でもキツいよ」という話をします。中高生にそんな話をするの?と驚かれる方もいますが、「悔いのない人生設計」をするには、その年頃から正しい知識を身につけていなくちゃいけないと思うんです。

昔に比べて450回も増えた月経の回数

「産む/産まない」の問題に加えて、望む人生を送るために女性に知っておいてもらいたいことがあります。それは月経のこと。

実は現代は、一生で迎える月経の回数が増えているんです。昔は栄養状態が今ほどよくなかったこともあり、初経が平均で16歳、閉経が40代後半でした。ところが、今は初経が12歳、閉経が50代前半。妊娠中は月経が止まるので、出産回数が減ると、その分月経の回数は増えます。結果、現代の女性は昔の女性に比べて450回も月経が増えているといわれています。

月経は、毎月女性のカラダに大きなダメージを与えます。「今月は受精できるかな?」とカラダは準備して待っているのに空振りが続き、排卵や月経のたびに負担がかかります。その結果、「子宮体がん」や「卵巣がん」といった病気が増えてしまうことがわかっています。

この月経によるカラダへのダメージを軽減するには、ピルがおすすめ。ピルを飲むことで、「産まない人生」を選んでも、婦人科系の病気のリスクを減らせるわけです。

女性はひと月のうち半分は「調子がよくない」

ピルをおすすめする理由はもう一つあります。

それは日々のパフォーマンスを上げるため。月経前の1週間くらい前って、イライラしたり眠かったりして集中力が続かないですよね。さらに月経中の1週間は生理痛、吐き気、頭痛があってまたも調子が悪い。考えてみれば、女性はひと月のうち半分は、「いまいち調子がよくない状態」にあるわけです。

でもピルを飲んでいれば、こうした心身のアップダウンをなくして、いつでもいい状態を保てます。ピルといえば、日本ではどうしても「避妊」のイメージがつきまといますが、カラダやメンタルのコンディションを保ち、毎日のパフォーマンスを上げるためにも効果的なんですよ。働く女性には特におすすめしたいですね。

(編集部)

種部恭子(たねべ・きょうこ) 1990年 富山医科薬科大学医学部卒。医学博士、産婦人科医。2006年7月より女性クリニックWe富山院長に就任。生殖医療(内分泌・不妊)、思春期・更年期、女性医療。生涯を通じた女性の健康に関して積極的に社会活動を行っている。