海外のひとり旅で困ることといえば、夜ごはん。レストランにひとりで入る勇気なんてないし、入ったところで量が多くて食べきれないし。で、結局ファーストフードやスーパーのお惣菜でカンタンに済ませて……なんて、味気ない夜ごはんからはもう卒業。

今回は、女子のひとり旅でも気後れせずに気軽に入れるカウンターのお店を紹介します。舞台はパリ。在仏21年のフードジャーナリスト・伊藤文(いとう・あや)さんに、今、パリで注目のカウンター夜ごはん3選を教えていただきました。

カウンターは旅人に優しい場所

カウンターは地元の人にも旅人にも優しい場所です。なぜなら、予約を取らなくていいから。そして、気の向くまま自由に料理を注文できるから。普通のレストランの客室だと、どうしても、アントレ、メイン、デザートと食べなくてはならないような気にさせられる、あるいはそのような規則で食事が進みますが、カウンターなら気にしなくて大丈夫。

例えば、おつまみに最初からチーズを注文してもいいですし、ワンプレートだけの注文でも大歓迎。しかも、最近のカウンターでいただける料理は、センスが光る創作料理も多いので、美食の街・パリをしっかりと満喫できるんです。

では、さっそく私がおすすめする3軒を見ていきましょう。

「海の店」と「山の店」を行き来できる立ち飲み店

1軒目は、フランス語が読めなくても心配無用の、立ち飲みだけの店「アヴァン・コントワール・ドゥ・ラ・メール」。リッツやクリヨンホテルで腕を磨いたシェフ、イヴ・カンドボルドがオーナーのお店です。

パリ

いつも満員電車のように混んでいるほどの人気ぶり。タパス的な小皿の創作料理をたくさん用意していて、天井にずらりと掲げられたプレートがメニューです。写真も掲載されているので、フランス語が読めなくとも「これ!」と指さすだけでOKです。

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この店にはなんと90ものメニューが用意されています。おすすめは、香辛料のきいたシポラタソーセージと生牡蠣。他にもフランボワーズを和えたマグロのタルタル、イカスミのタリアッテレ、海老のプランシャ(鉄板焼)もとっても美味です。

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実はこのお店は今年オープンしたばかりの「海の幸専門店」で、すぐ隣にはオーナーが最初に始めたお店が「山の幸専門店」として並んでいます。いつしかお客は「海の店」と「山の店」を、ワイングラス片手に行ったり来たり。パリらしい自由さがなんとも微笑ましいお店です。

「トップ・シェフ」が即興でつくる家庭料理

2軒目は、最近シックな地域として若者から人気の、サン・マルタン運河の東側にある「ラ・カーヴ・ア・ミッシェル」。料理人のロマン・ティスチェンコはなんとフランスの人気テレビ番組「トップ・シェフ」の優勝者ですから、その腕はピカイチです。「肩肘張らない、自宅にいるかのような雰囲気で料理を出したかった」そう語るロマンが出してくれる創作料理はシンプルそのもの。

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「ラ・カーヴ〜」の前には、スペイン食材の卸業者であるカルロス・グリエレが小さな店を持っていて、時々スペインから運ばれてくる食材を、お裾分けしてくれます。新鮮エビをさっとロマンがソテー。それに合う白ワインをすかさず店の責任者であるファブリスが注いでくれる。そんな阿吽の呼吸のサービスが最高に嬉しいお店です。

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野菜と愛がたっぷりのカフェビストロで癒されて

そして3軒目は「カフェ・トラマ」。2013年にオープンしたばかりの、レトロモダンな内装がとびきりチャーミングなカフェビストロです。この店を切り盛りするのはトラマ家の父と娘。店主は娘のマリオン、父アランが料理人として支えています。

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アランは70歳を超えているというのに、その料理はモダンでしかも本質的。野菜たっぷりのプレートが多く、肉や魚のキュイッソン(火入れ)も完璧です。聞けば1970年代から25年切り盛りしていた彼自身の店は一世を風靡していた知る人ぞ知る名店だったそう。

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そして今、娘マリオンの店も、地元の人々にしっかりと愛される優良店に。エビの一種であるラングスティーヌのラビオリ(パスタ)、パスタ付きの蛸のマリネ、ジンジャー風味のタルタル……何を選ぶか、いつも迷ってしまいます。私も普段から通っている、父娘愛に溢れた素敵なお店です。

いかがでしたか? 今度ひとりでパリを旅することがあれば、カウンター夜ごはんにチャレンジしてみようという気になれましたか?

今、パリは空前のカウンターバーブーム。次々にユニークなお店が生まれています。休暇が取れたら、ぜひ近いうちに遊びに来てくださいね。

【店舗情報】
「アヴァン・コントワール・ドゥ・ラ・メール」
Avant Comptoir de la mer
3 carrefour de l’Odéon 75006
01.42.38.47.55

「ラ・カーヴ・ア・ミッシェル」
La Cave à Michel
36 rue Sainte-Marthe 75010
01.42.45.94.47

「カフェ・トラマ」
Café Trama
83 rue du Cherche-Midi 75006
01.45.48.33.71

写真:Taisuke Yoshida

伊藤文(いとう・あや) パリ在住21年。立教大学卒業。コルドン・ブルーパリ校で製菓を修めたのち、食ジャーナリスト、翻訳家として活動。2013年、プロジェクト「食会」を立ち上げ、ウェブ・マガジンをバイリンガルで創刊。最新刊『パリ、カウンターでごはん』(誠文堂新光社)が現在、絶賛発売中。