夏定番のお酒・ビール。渇きを癒すためにごくごく飲むというよりは、じっくりと味わうのが今のスタイル。せっかく気軽に飲めるものだから、おうちでももっと楽しみたい! そこで、『白熱ビール教室』(星海社)の著者である、杉村啓(すぎむら・けい)さんに、家飲みでもビールが何倍も美味しくなる豆知識を聞きました。

適温はアルコール度数+2℃

――家でビールを飲む場合、グラスはどんなものでもいいのでしょうか?

杉村啓さん(以下、杉村):グラスによってもビールの味わいは大きく変わります。たくさんあるのですが、持っておきたいグラス3種をご紹介しますね。

ひとつめは「フルート型(ピルスナーグラス)」と言って、日本のビールを美味しく飲めるもの。泡をきれいに見せてくれます。ふたつめは「チューリップ型」。チューリップのように上の方でいったんすぼまってから外側に広がる形をしています。すぼみのところに香りが溜まるので、味と一緒に香りも楽しめます。もう一つは「タンブラー型」のグラス。どんなビールにも合う万能性がいいですね。3つとも、注いでみると味わいや印象が変わるので面白いですよ。

――ビールにも適温はあるのでしょうか?

杉村:ビールの種類によって適温も異なります。おおざっぱに言うと、だいたいのビールでは瓶や缶に書いてあるアルコール度数の数値からプラス2度までが適温になるので、まずはそれだけ覚えておくといいでしょう。例えばアルコール度数5度のビールは、5〜7℃が適温ですね。

――すごい!覚えやすい! とにかく冷やせばいいというわけではないんですね。

杉村:そうなんです。人のカラダは、体温から20℃離れたものを飲むと快感を覚える仕組みになっていて、そこから離れるほど快感の度合いが高まります。なので、キンキンに冷えたビールが好まれるんです。ただ、冷えすぎると今度は香りが失われてしまう。「適温」なら香りと炭酸感がバランスよく楽しめるんです。

――ただ、温度を測るのって、少し面倒な気がします……。

杉村:そこでオススメなのが、冷蔵庫から出してからの置き時間で調整する方法。日本でよく飲まれている大手のビール「ピルスナー」はアルコール度数が5%前後なので、冷蔵庫から出してすぐが適温ですが、「ペールエール」は7〜8%くらいあるので、取り出してから5分くらい待つと美味しく飲めます。「IPA」は10%くらいあるので10分待つといいですね。

合わせるフードは「色」と「国」で決める

――ビールは種類が豊富なので、フードとの組み合わせも楽しめそうですね。

杉村:ビールでは、フードとの組み合わせを「ペアリング」と呼びます。わかりやすいペアリングのコツは、「色」ですね。ビールは色が濃いほど味わいも濃くなっていき、ペアリングする料理の「色」も濃くなります。例えば、色の淡い白ビールなら薄味のチキンや魚のフライ、色の濃いIPAなら肉の煮込みやカレーが合いますね。なので、色の濃いもの同士、淡いもの同士を合わせるのは鉄則なんです。

それから、「国」で合わせるという方法もあります。ドイツのビールだったらドイツのソーセージ、イギリスのビールはフィッシュ&チップス、アメリカのペールエールならハンバーガーという具合です。

――ビールを飲んでいる時に、塩をふった枝豆やポテトチップスなどしょっぱいものが食べたくなるのは、なぜなのでしょう?

杉村:特に日本のビールはカリウムが豊富に含まれているため、しょっぱいものと相性がいいんです。体内ではカリウムとナトリウムが均衡をとれるよう、カリウムが大量にカラダに入ると、相対的に少なくなったナトリウムを取り込もうとします。ナトリウムとは要するに塩。だから日本のビールを飲むと、しょっぱいものが欲しくなるんですよ。

――なるほど。「意外に合う」おつまみはありますか?

杉村:甘いものも意外にビールと合いますよ。例えばチョコレートは色が濃いので、合わせるなら濃いビール。甘みを引き立てつつ、ほどよい苦さが口の中をさっぱりさせてくれます。

今さら聞けない、「生ビールの“生”って何?」

――ちなみに、缶ビールのパッケージには「生」と書いてありますよね。これってどういう意味なのでしょう?

杉村:加熱殺菌していないものを指します。もともとビールの中には生きた酵母がいるので、そのまま出荷すると発酵が続いて品質が変わってしまう。そのため加熱殺菌が必要となるのですが、加熱すると今度は香りが変わってしまうんですね。

そこで、ろ過して酵母だけを取り除く方法が編み出されました。加熱で香りが変化することも、発酵が進んで味が変わってしまうこともない。これを「生」と呼んでいます。お店では「瓶ビール」「生ビール」と分けて表記されていたりしますが、中身は同じです。

杉村啓さん

杉村啓さん

ビールの「飲みすぎ」には理由があった

――最後に、飲みすぎずに楽しむコツを教えてください。

杉村:やはり水を一緒に飲むのが一番です。ビールを飲んだら水も同量飲む。アルコールの排出には水が必要になるため脱水症状になりやすいんです。だから水を補うのは大切です。

それから、ついついグビグビいってしまわないように注意したいですね。ビールならジョッキ3杯を飲める人でも、同量の水を飲むのは結構難しいですよね。これはビールが胃に入ると、早く腸に送り出そうとして胃の出口が開くから。そのためグビグビいけてしまうんです。途中で水を飲んでおくと、飲みすぎも防げます。

――ビールの楽しみ方がわかってきました!

杉村:ビールはアルコール度数が低くて飲みやすいので、お酒が強い人でも弱い人でも、みんなで楽しめますよね。また、種類が豊富なので料理に合わせやすくて失敗が少ない。気軽に味わえるものなので、ぜひいろいろ試してみてください。

(竹川春菜)

杉村啓(すぎむら・けい)
ライター、醤油研究家、日本酒研究家、料理漫画研究家。1976年生まれ、千葉県出身。愛称は「むむ先生」。ライターとしてさまざまなウェブメディアを中心に執筆を行うかたわら、雑誌に寄稿したり、日本酒や醤油のイベントを行ったり、テレビやラジオにも多く出演している。著書に『白熱日本酒教室』(星海社)など。
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