「産んでも働くママになる」第9回 ランクアップ

社員の5割がママ社員、17時にはほとんど全員退社 それでも1人1.6億稼げる理由

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社員の5割がママ社員、17時にはほとんど全員退社 それでも1人1.6億稼げる理由

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仕事が終われば17時に帰宅できる、就業時間中にピラティスのレッスンを受けられる、子どもが熱を出したら病児保育スタッフを自宅に派遣してくれる、などなど福利厚生がとにかく充実している会社があった!

そんなちょっと気になる会社とは、マナラ化粧品販売会社のランクアップ。どうしてここまで福利厚生を充実させるのか? 「女性みんなに働き続けてほしい」と語る同社代表取締役・岩崎裕美子(いわさき・ゆみこ)さんに胸のうちを聞きました。

「独身子なし社員vs.子持ち社員」をなくす

――社員の半分がママ社員とのことですが、ママ社員が育休を取ったり、時短勤務にしたりした場合、仕事のしわ寄せが非ママ社員にいくことはありませんか?

岩崎裕美子さん(以下、岩崎):時短といってもうちはほとんどの社員が17時で退社します。新卒だけある程度仕事を覚えるまでは、最長22時まで残業してもいいことにしていますが。時短を利用しても16時退社だし、ほぼ全員が毎日17時には帰ります。16時で帰る人と20時まで残る人がいたら絶対に軋轢が生まれるじゃないですか。場合によってはデートにも行けなくて婚期を逃すことになったり。それじゃ、独身の人がかわいそう。だから残業をなくしたんです。

取締役にまで出世しても産んだらクビ

岩崎:この会社を起業する前は広告代理店で働いていて、取締役営業本部長にまでなりました。ただ、35歳になりふと先のことを考えた時……この会社で出産後も働き続けるのは無理だと感じたんです。せっかく10年以上働いて成果を出せるようになったのに、子どもを産んだら戦力外扱いになるだろう、と。それが見えちゃったんですね。

――前の会社を退社された時、お子さんはいたんですか?

岩崎:いませんでした。当時35歳でしたから、まだ妊娠のチャンスはありました。仕事で女性が活躍するには、男のように長時間働くか、親と同居して子どもの面倒を見てもらうか、仕事を辞めるしか、その三択しかないんです。「死ぬほど仕事が好きなのに、なぜ子どもを産んだというだけで、すべてのキャリアを捨てなければいけないの?」と、すごく悩みました。それで今の会社を起こし、長時間労働を改善することにしたんです。

17時退社にしたら、病気になる社員が続出!?

――著書『ほとんどの社員が17時に帰る 10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)によると、長時間労働を改善したにもかかわらず順風満帆とはいかなかったようですね。

岩崎:そうです。当時は18時定時で、そのあと1時間くらい残業をするというスタイルでした。でも、ここで意識を変えないと、と感じたんです。キッカケは自分の出産です。41歳にして初産を経験し3ヵ月で復帰しました。

ちょうどその頃、会社でトラブルがあって、創業以来初というくらい深夜残業が続いていたんです。私は保育園のお迎えがあるから残業できない。社長なのに頑張っている社員を残して早く帰らないといけない……。仕事も家事も育児も、どれもが中途半端でした。

そんな時、ストレスが原因で私自身が体調を崩してしまったんです。社員の大半は女性なので、私が産んだ以上、出産ラッシュが始まるであろうことは予想できました。ここで変えないと、私のように体調不良になる社員が続出すると感じました。

――それで全員17時退社となったんですね。

岩崎:そうです。18時退社から30分、1時間とだんだん早くなり、ほとんどの社員が17時には退社できるようになりました。ところが、今度はメニエール病や頭痛といった不調を訴える社員が増えてしまって……。原因はストレスです。以前の私はワンマンで、社員の話に耳を傾けていなかったんです。その結果、社内の雰囲気は暗くなり、病気になる社員が出てきてしまいました。

その反省もあり、今は「改善提案」という制度を取り入れています。これは採用・不採用に関係なく、改善提案を1件出したら500円もらえるというもの。ピラティスのレッスン、スポーツジム補助費、ランチ補助など、いろんな福利厚生がここから生まれました。その一つに「病児シッター制度」があります。

1人の病児シッター利用が月20万円を超えたことも!

――「病児シッター制度」とは?

岩崎:子どもが病気の時に専門知識のある保育スタッフが自宅に来てくれる制度です。社員の負担額は1日300円。差額は会社が負担します。最大で月20万円も使った社員がいますが、それでもいいんです。この制度を利用して1日2時間でも仕事ができたら、まわりの負担も減るし、本人も気がラクになりますから。

――ママになると、会社やまわりの理解がないと仕事は続けられないですよね。

岩崎:そうですね。当日になって突然休むと、絶対まわりに迷惑をかけますからね。最初は「いいよ」と言ってくれていた同僚も、何回も続いたら「いい加減にしろ」と思いますよ。仕事を任せる方も、「責任のない仕事にしておこう……」と考えちゃいますしね。すると、本人はモチベーションが下がり、それが原因で辞めていく。こういうケースは多いですよ。

でも、私としてはせっかく一緒に頑張ってきた仲間だからこそ、産んだことを理由に辞めないでほしい。会社としても、社員が長く勤め続けてくれることで、得るものはたくさんあります。それは数字を見ても明らかです。

以前、勤めていた広告代理店の場合、3年間の離職率は100%でしたが、ランクアップの場合、過去3年間に退職したのは2人だけ。売上も、その広告代理店が寝ずに働き続けて20人で20億円だったのに対し、弊社は45人で75億円です。1人あたりの売上は1.6億円。この数字だけ見ても、人材が流出する会社が継続的に成長していくことの難しさがわかります。

――今度の目標を教えてください。

岩崎:この会社のミッションは、女性が幸せに生きられるようにすること。キャリアを積んだ女性が、ママになっても一生涯いきいきと働き続けられる社会を作りたい。それが私の夢です。今は化粧品がビジネスのメインですが、キャリア女性を助けられるような事業を増やしていきたいですね。

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産んでも働くママになる

女性が働く上で、産休や育休、復帰後の働きやすさは、避けて通れないテーマです。女性も男性も心地よく働くために、企業はどんな制度を準備して、これらの問題に向き合っているのか。ママライターがレポートします。

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