40歳の時、おひとり様で都内に「7坪ハウス」を建てた雑貨店オーナーの塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。バリキャリ編集者だった30代には、家具、インテリア、服、旅行、習い事……とあらゆる“消費”に手を出したそう。そんな塚本さんと編集部が「オンナの30代」と「消費」の幸せなバランスについて語り合います。
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「30代の自己投資熱」と「旅」の危うい関係

–世間はお盆休み真っ只中ですが、塚本さん、今年はどこか旅行に行かないんですか? 

塚本佳子さん(以下、塚本)
:残念ながら、予定はないです。フリーになってからは、とんと旅行に行かなくなってしまいましたね。行かないというよりも、行けないというのが正しいんですけど。

–というと?

塚本:経済的にまだまだ不安定なんですよ〜。友人から「今年は結構長く夏休みが取れそうだから海外に行かない?」とメールをもらったんですけど、「只今、絶賛貧乏中!」って返しました(笑)。

――お金ないのに、相変わらず悲壮感もないですね〜(笑)。でも、フリーになるまでは毎年の海外旅行は当たり前だったとか。

塚本:はい、年に2回行っていた時期もあって、「海外旅行を年に2回している私」に酔っていましたね。30代はバブリーに海外旅行しまくってました。

――(笑)どんな国に行かれたんですか?

塚本:台湾、韓国、ベトナム、タイ、シンガポール、上海、アメリカ、ハワイ、フランス、イギリス、アイルランド、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、トルコ、エジプト、ジャマイカ……。

――ジャマイカ? 何しに行ったんですか?

塚本:イルカに会いに。それでなぜジャマイカを選んだのかまったく覚えていないけど、イルカよりも馬の背中に乗って海を泳いだことのほうが思い出深いですね。

――面白いことでしてますね。常々思うんですけど、旅って結構安易に達成感を得られちゃいますよね。お金出しただけなのに、それなりに何かやった気になっちゃう。

塚本:あー、わかります。達成感もしかり、「大人になったな」と成長した気にもなりますしね。ひとり暮らしを始めた時もそうだったけど、経済的に自立すると、すごく大人になった気がしますよね。そういう意味で、「海外旅行に行く」って、経済的に自立して大人になった証だと思っていたのかも。

――うん、わかります。ちなみに、塚本さんが初めてひとり旅をしたのっていくつの時ですか?

塚本:結構遅かったですね。28歳の時、イギリスへひと月ほど。

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――ひとり旅をした理由は?

塚本:仕事に疲れてしまって……。

――(笑)イギリスのどのあたりを回ったんですか?

塚本:ロンドンとお隣のアイルランドだけなんですけど。実は英語でも勉強するかって、ちょろっと語学学校に通ったり……。

――えっ、留学ですか?

塚本:とんでもない! これ話すの恥ずかしいんですよ、まったく身になっていないから。語学学校は日本人だらけで、結局遊んでいただけでした。

――そもそも、なぜ英語を学ぼうと思ったんですか?

塚本:う〜ん、特に理由はないんですよね。なんとなく英語がしゃべれたらかっこいいと思ったんでしょうね。

――女性はアラサーになると語学留学をしたくなるらしいですよ。大学を卒業して5、6年働くと多少お金が貯まるので、一回会社を辞めて語学留学する。そういう女性たちが結構多いらしいです。

塚本:あー、確かに私が行った時も圧倒的に女性が多かったですね。そして日本人同士でつるんでしまう……。本気で語学を習得したいなら、都会から離れた日本人の少ない学校を選んだ方がいいかも。でないと、語学に関しては本当にムダな消費に終わりますよ。とはいえ、ひとりで海外を旅したことはとてもいい経験になりました。

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ひとり旅vs.とも旅

――ところで、塚本さんの旅行って、基本はひとり旅ですか?

塚本:いえいえ、断然友達との旅行が多いです。初めてひとり旅をした時、感動とか楽しさを共有できる人がいなくてつまらなかったんですよね。食事をする場所も限られちゃうし。

――どんな人と旅行に行くんですか?


塚本
:ほぼ幼なじみですね。別の人と行ったこともありますけど、何度も旅行しているのは幼なじみだけです。さっき挙げた海外旅行先も、ほとんど幼なじみと行きました。

――同じ部屋で数日過ごすわけですから、誰でもいいというわけにはいかないですよね。


塚本
:確かに人は選びますね。この人とは二度と旅行したくないと思った人もいます。旅行の手配から旅先でのスケジュールまで、全部私任せで何もしてくれない人とかね。疲れちゃって、最終日に「今日は別行動にしようか」って言っちゃいました。そういう意味では、幼なじみとは阿吽の呼吸じゃないけど、なんとなく役割り分担がうまくいくんですよ。食べ物の好みも似ているので、どこに行ってもあまり気を使わずにすむ。

――食べ物の好みは重要ですよね。それとお金のかけ方。ホテルにはあまりお金をかけたくないとか、食事は豪華にしたいとか、人それぞれにこだわりがあるじゃないですか。

塚本:それも結構気が合って、食がメインの旅もあれば、物価が安めの国の場合、今回は5つ星の豪華なホテルに泊まっちゃおう!みたいな感じで。幼なじみとの旅行では意に反して相手に合わせるということがほとんどない。幼なじみがどう思っているかはわかりませんけど(笑)。

――そういう友人、貴重ですよ。

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そろそろ「積み重ねる旅」がしたい

――先ほども話に出ましたけど、旅って安易な達成感がありますよね。行っただけで満足みたいな。

塚本:まさに私はそのタイプ。行って楽しんでおしまい。もちろん、大切な思い出ではあるんですけど、最近思うんですよね、単なる消費で終わりにしない「積み重ねる旅」がしたいな、って。

――旅の積み重ねですか?

塚本:姉の旦那さんが旅好きで、旅行話を聞くたびに、「ああいう旅ができたらいいなあ」ってつくづく羨ましくなります。彼はクラシックやオペラが好きで、貧乏学生をしていた20年前に天井桟敷で聴いたオペラ歌手の公演を、同じ場所でもう一度聴きたいとウィーンまで出かけたりするんです。数年前にドイツに行った時も、ベルリンの壁が崩壊する直前に訪れた時の写真とまったく同じアングルで撮影してみたり。

――旅にはっきりした目的があるんですね。

塚本:そうなんですよ。私みたいに出たとこ勝負で現地に着いてからガイドブックをペラペラ見ながら観光地を回り、記念撮影だけして帰ってくるのとは全然違う(笑)。思い出だけじゃなくて、自分の感情や国々の風景までも、時間を超えてちゃんと彼の中に蓄積されてるんですよね。兄から旅の話を聞くたびに心底羨ましいな、と。

――なるほど、確かに積み重ねですね。

塚本:考えてみたら、今までいろんな場所を旅してきたけれど、「観光地と観光地をつなぐ旅」ばかりしてたかもしれませんね。しかも普段はバリバリ仕事をして疲れてるから移動中は景色も見ずに爆睡していたり(笑)。30代の旅って、結構そういう旅が多かったなあ。

義理の兄みたいに、ニュージーランドに行った時は「ロード・オブ・ザ・リング」のロケ地を巡ったり、アラスカでは何百kmというハイウェイをひたすら走り、ゴールドラッシュに湧いた時代に一攫千金を夢見て北上した人々と同じルートで北極圏を目指したり……といったハードな旅は私にはムリかもしれないけれど、自分の中に何かが積み重なっていく旅には憧れますね。

――そういう旅って、どうしたらできるんだろう? 私も憧れます。

塚本:旅がちゃんと普段の自分と繋がってるんですよね。「世界遺産を見たい」とか「蚤の市に行きたい」という薄っぺらな目的じゃなくて、趣味が凝縮されているというか。旅って非日常だけど、私が憧れる旅のカタチって、すべてが日常と繋がって継続されているものじゃないかな。自分の好きなことに関する知識がちゃんと蓄積されて、人生の糧になっていく旅。単に点が増えていくだけではなくて、すべての旅が線になって繋がっていく旅。40代はそんな旅がしたいなあ。

――知識が蓄積されていく旅ですか、いいですね。好きなことがはっきり見えてくると、そういう旅ができるようになるのかもしれませんね。

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【お茶会のメニュー】

〈器〉
・グラス(Villeroy&boch)
・取り皿
・ショクラードボッラルのお皿(近日、Fikaで取扱い予定)
・生クリームの器(iittala)
・ピッチャー

*金額掲載の器は「Fika」にて取扱中。

〈お菓子とお茶〉
・ショクラードボッラル(チョコレートボール)
・リンゴンベリのソーダ

☆ショクラードボッラルの作り方
[材料]一口大=約10個分
バター……50g/グラニュー糖……50g/バニラエッセンス……数滴(なくてもOK)/ココア……大さじ1.5/オートミール……60g/濃いめのコーヒー……大さじ1.5/
トッピング:ココナッツフレーク(ロングでもOK)……15〜20g/ホイップクリーム……お好みで

[1] バター(室温)とグラニュー糖を混ぜ合わせたら、バニラエッセンスを数滴加える。
[2] 1にココアを加えて、よく混ぜる。
[3] さらにオートミールとコーヒーを入れて、ざっくりと混ぜ合わせたら、1時間程度冷蔵庫へ。
[4] 少し固くなった状態の生地を、手のひらで転がしながら小さなボール状に丸める。
[5] 4のボールにココナッツフレークをまぶしてコーティングする。

*ココナッツロングを使う場合、包丁でみじん切りのように細かくするとコーティングしやすい。
*食べる直前まで冷蔵庫で冷やしておく。
*バニラエッセンスの代わりに、リキュールや果物などのエッセンスを加えてもOK。

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「北欧雑貨と日本の器 Fika」
関連リンク:公式HPFacebook

塚本佳子(つかもと・よしこ) 編集者・ライター。週末のみ「北欧雑貨と日本の器 Fika」の店主。暮らしを豊かにするための方法を日々模索中。著書に“7坪の家”ができるまでを綴った『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、北欧雑貨の買い付け珍道中を綴った『好きなことだけ』、スウェーデンのお茶文化を綴った『Fika』(いずれもPヴァイン)がある。
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