空には月、耳にはサンバ

ブラジルが好きな理由の一つは、やはり音楽。サンバ、ショーロ、ボサノバ、MPB、フォホーなどいろいろありますが、やはりサンバは特別。あのリズムと旋律に身を任せていると、いろいろな感情がわいてきます。

生きる哀しみと喜びが同時に押し寄せ、どこか切なくなる。明るいのに、悲しい。否、悲しいから人は明るくするのでしょう。

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アフリカから連れてこられた黒人奴隷のリズムと西洋の音楽から生まれたサンバには、心と身体の奥深くに訴えるものがある気がします。

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先日、リオに行った時に、素晴らしい「Roda de Samba(ホーダ・ジ・サンバ)」に出会いました。直訳すると、「サンバの輪」。テーブルを囲んで飲みながらサンバを演奏するスタイルのことです。

「金曜の夜はここでライブをやってるよ」と知人に教えてもらい、向かった先はセントロ地区、Pedra do Sal(ペドラ・ド・サル)というちょっとした広場のような一角。ここは、サンバの発祥の地としても知られています。

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夜9時頃そこへ向かうと、近づくにつれサンバの音が。ビールや焼き肉の串などの屋台が出ていて、ちょっとしたお祭りのようです。音楽を聞くのはもちろんタダ(というか投げ銭)。

ミュージシャンたちが簡易テーブルと椅子に座りサンバを奏でているところに、カリオカたちがお酒を手にしてぎっしり集まっていました。その音楽と雰囲気の素晴らしいこと!

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誰もが知っているサンバを奏でると、観客は大声で大合唱。

「ブラジル人、とりわけリオの人々は、『音楽の最高の楽しみは自ら歌うことにあり』と心得ている。ワンコーラスをオーディエンスが歌い、ライブの主役であるはずのアーティストが伴奏に回ることも珍しくない」(『リオデジャネイロという生き方』中原 仁/ケイタ☆ブラジル)

まさにその通りの光景です。なんだろう、この高揚感。

歌は聴くものじゃなく、歌うもの。踊りは見るものじゃなく、自ら踊るもの。空には月、耳にはサンバ、手にはカイピリーニャ。なぜだか泣けてくる。ああ、生きててよかった。そう思える瞬間があってよかった。

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それにしても、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまでがこうやって一緒に盛り上がれる音楽、一緒に歌える曲が日本にはどれだけあるでしょうか。ブラジルの音楽環境はうらやましい限り。

これだからブラジルは、片道1日以上かけても、ちょっとくらい治安が悪くても、やっぱり来る価値のある場所なのです。こんな場所、地球上のどこを探したって他の場所にはないのだから。

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宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。編集者、ライター。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽雑誌、女性誌、週刊誌、カメラ雑誌などで働く。朝日新聞デジタルで「島めぐり」「ワインのおはなし」「花のない花屋」などを連載中。ラテン音楽とワインが好きなエピキュリアン。
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