映画「花芯」主演・村川絵梨さんインタビュー

「不倫の恋」と「恋と孤独」 映画「花芯」主演・村川絵梨さんと考える

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「不倫の恋」と「恋と孤独」 映画「花芯」主演・村川絵梨さんと考える

有名人の不倫騒動が連日ワイドショーを騒がせた2016年前半の日本。インターネット上には当事者たちに対して、「責任をとれ」「ゲス不倫」など非難の声が溢れた。その一方で、テレビドラマや映画の世界では不倫をテーマにした作品が注目を集め、特に女性たちに好意的に受け入れられている。8月6日公開の映画「花芯」も注目の一本だ。

原作は瀬戸内寂聴さんの『花芯』

「花芯」は瀬戸内寂聴さんが1957(昭和32)年に発表した同名小説を映画化した作品。自身も夫と幼い娘を捨てて若い男のもとへ走った経験を持つ寂聴さんが、夫のいる身でありながら、本能のままに恋と性愛がもたらす悦びを追い求めていく女性の生きざまを描き、当時「エロ小説」のレッテルを貼られた。その後、寂聴さんは5年もの間、文壇を閉め出されることになる。

恋に奔放な主人公「園子」を体当たりで演じたのは、女優の村川絵梨さん。世の中を敵に回しても、自分が求める悦びを棄てなかった女性の心に向き合った。

同性が恐れ、反発する、“濃度”の高い女

「こういうふうに自分の意志で突き進める女性になれたら、世の中の女の人は泣かなくてすむのに」。最初に脚本を読んだ時、そう感じたという村川さん。恋のために夫と息子を捨てる園子という女性に対して、さすがに共感は覚えなかったものの、「反感もなかった」と振り返る。

「あの時代に、男性に翻弄されることなく、むしろ彼女が翻弄している。たぶん彼女自身にそんなつもりはないんですけど。恋に対してすごくピュアな部分にも尊敬の念すら覚えます。包み隠さず生きている感じが、ちょっと羨ましい」

恋に一途な女性というのは、総じて魅力的だ。当然、ひとりでできる行為ではないため、異性を惹きつける魅力的な容貌と、ある種のコケティッシュさを兼ね備えている。園子も、どこへ行っても“女の濃度”が高い女だ。演じるにあたり村川さんは、「“個”としてたたずんでいる人」をイメージしたという。

ヒロインは共感を求めず、また共感もされない

(c)2016 「花芯」製作委員会

(c)2016 「花芯」製作委員会

「愛や恋に純粋で、自分が信じたもの、抱いた恋心に対する思いの強さをすごいなと思いながら演じました。たとえ周囲から『あの男は変な奴だ』と恋した相手を非難されても、彼女の心は1ミリも動かない。まわりに何か言われても、園子は『そうだね』って同調しない人だということを意識しました。簡単に人に共感しない。だから、共感もされないんだと思うんです」

映画の完成後に寂聴さんと対談し、「恋をすればするほど、どんどん孤独になる」と言われたことが心に響いたという。

「自由気ままに恋をしてしまうと、どうしても敵を作るし、自分のもとを去って行く人もいる。そういう孤独がつきものだということを、園子は知っている気がして。そして、それを別に恐れていないんです」

孤独を埋める恋は中毒

寂聴さんはメディアのインタビューなどで「同床異夢」という言葉を口にしている。同じ寝床で抱き合っていても、見る夢は違うということ。人は本来、孤独なものだということだ。

「みんな孤独だから恋をするんでしょうね。寂しいから浮気をするんだと思う。寂しさや孤独に打ち克つなんて、アスリート並みのストイックな精神力がないと無理(笑)。孤独の穴を埋めるための恋って、一番中毒性があると思います。それに、特に女性は恋で人が変わってしまう。寂聴さんからは、『たくさん本を読むより、恋をしなさい』と言われました(笑)。何かを読んだり勉強するより、一つの恋から得られるものってすごく大きいから、と」

(c)2016 「花芯」製作委員会

(c)2016 「花芯」製作委員会

芸術になるなら濡れ場も辞さない

不倫や禁断の愛をテーマにしたテレビドラマや映画が多産されてはいるものの、一昔前の作品と比べて性愛描写はずいぶんと「自主規制」されるようになってしまった。特に若手女優が演じる濡れ場は、中途半端に感じている「ふり」をする顔面が映し出されるだけで、正直興ざめする。

その点「花芯」は、村川さんがしなやかな裸身をさらけ出して恋する女を全身で演じきっている。映画を観た寂聴さんも「身体を張った捨て身の演技の迫力に感動」というコメントを寄せているが、村川さんもご本人から「『頑張ってたわね!』と声をかけてもらった」と笑う。

「でも、身体をさらけ出せばいいっていうわけではないとも思っているんです。今回の『花芯』は芸術の一環になり得る範囲。あまりに生々しいと、映画を観ている立場の時、私もビックリしちゃうことがあるので、ドキドキしながら観られる範囲がラブシーンとしてはいいのかなって。出演する前に、安藤(尋)監督が詳細に『このぐらいの露出で』ときちんと提示してくださったので、何の心配もなく『わかりました!』と言えました。女性の方にも観ていただけたらいいなと思います」

映画「花芯」インタビュー

本作出演をきっかけに着物の着付けも学び始めたという村川さん。劇中でも全編着物姿だが、補正や着崩れの直しをほとんどせず、男性が放っておけない園子の「隙」を表現した。
ヘアメイク:フジワラ ミホコ(LUCK HAIR)/衣装協力:銀座いち利

今年29歳になる村川さん。来たるべき30代を前に「包み隠さず“女性”を演じられる、女性からも共感してもらえる女優になっていきたい」と語る。その第一歩として選んだ「花芯」。結婚には今以上に忍耐が伴った時代、本能のままに生きたヒロインは、村川さんの凜とした持ち味もあいまって、逆風の中を進む美しきアンチヒーローのように見える。

■公開情報
映画『花芯』
8月6日(土)より新宿テアトルほか全国にて公開
公式サイトはこちら
(c)2016 「花芯」製作委員会

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