“7坪のお茶会” 消費で終わらない土曜日の午後 第2回

身にならなかった“30代の消費”のあれこれ オトナの女が陥る「自己投資」の落とし穴

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身にならなかった“30代の消費”のあれこれ オトナの女が陥る「自己投資」の落とし穴

「消費で終わらない土曜日の午後」
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なぜ、「オンナの30代」は“消費”が増えるのか?

――30代って、誰に聞いてもお金を使うって言うけど、なぜなんでしょうね?

塚本:単純に収入が増えるのが一番の理由じゃないですか。それと、20代の経験でいろいろなことが見えてきたり、知り合いが増えることで視野が広がって刺激も受ける。「私の人生、これでいいの?」と自己実現的なことを始めると、どんどんお金は出ていく。20代は日々の仕事に追われてそこまで深く物事を考えていなかったですね、私の場合。

――じゃあ、20代はそれほどお金を使っていなかった?

塚本:30代に比べれば半分以下でしょうね。20代の後半からは、毎年海外旅行に行くのが当たり前の暮らしになりましたけど。懐かしのセレブな時代(笑)。

――(笑)そのへんは後でうかがうとして、20代で大きな影響を受けた人っています?

塚本
:今の生活につながる意味でも、かなり影響を受けた女性がひとりいます。当時、仕事でお世話になっていたイラストレーターさん。仕事関係者で、唯一プライベートでも遊んだ人でした。彼女は古い都営アパートをおしゃれに改造して暮らしていました。彼女との出会いがインテリアに興味を持った原点ですね。

――イラストレーターさんのお宅はどんな感じだったんですか?

塚本:知り合った頃はイギリスの重厚なアンティーク家具で統一されていました。料理も上手だし、サーブしてくれる器や盛りつけまでおしゃれで。イラストレーターさんの家に遊びに行くだけで、自分までおしゃれになった気分でした。あの頃は食器や雑貨、生活スタイルなど、イラストレーターさんのマネばかりしていましたね。

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英国アンティーク調から北欧テイストまで…私のインテリア遍歴

――そういえば、塚本さんもインテリアをイギリスのアンティーク調にしたことがあるって言ってましたよね。

塚本:そうそう。イラストレーターさんが家具を新調するというので、いくつか譲り受けたんですよ。アンティークショップで購入するよりも格安で譲ってくれたけど、インテリア初心者の私には勇気のいる出費でした。今ではひとつも手元に残っていませんけど。消費遍歴の一端ですね(苦笑)。

実はイラストレーターさん、次は北欧テイストでインテリアをコーディネートしてたんです。当時はまったくわからなかったけど。私に北欧ブームがやってきた数年後に、ようやく「そういえばイラストレーターさんちのテーブルランプ、ルイスポールセンだった」「あの時新調した椅子って、アルネ・ヤコブセンのアントチェアだったのか」と、がてんがいきました。

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インテリアに習い事…身にならなかった30代の消費あれこれ

――インテリア以外には、どんなことにお金を使っていたんですか?

塚本:いろいろありますよ。なかでもお金と時間を消費したのは習い事かな。バカみたいにいろいろと手を出していましたね。お菓子やパン、料理、紅茶教室にも通ったな。ヨガやピラティス、スイミングの運動系も定期的にブームがやってきたし、まったく身につかなかったのは英会話や韓国語の語学。芸術系では絵、カメラ、編み物。ちょっと変わったところではフラメンコとか。完全に身についたと胸を張れるのはスイミングくらいです(苦笑)。

――いろいろやっていたんですね〜。自分磨きという意識ですかね。

塚本:たぶん、そうだったんでしょうね。仕事に活かそうとか、将来的に別の方向に進みたいという明確な目的があったわけでもなく、その時々の思いつきでしたから。もちろん、その時はすごくやりたいと思って始めるんですよ。でも結局、何一つ積み上げられなかった。

――積み上がっていないというのは、今になって思えばということですか?

塚本:いつも最初は思うんですよ。これは絶対にやりたいことだしお金をかければちゃんと学ぶだろうって。そんなことを何度も繰り返しては、お金と時間をムダ遣い。今思えば、「これがやりたい」というよりも、「何か」したかったんでしょうね。“好奇心旺盛な私”みたいな部分に満足していのかもしれない。凝りない性格だなといつも思うんだけど、バリバリ働いてある程度収入があったからできたことですよね。

――お金があると気持ちに余裕が出たりしますからね。

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大人になるほどに“満足しているふり”がうまくなる

塚本:確かにお金があると気持ちに余裕はできますね。当時、よく遊でいた女友達がいて、彼女もバリバリ仕事をしてそこそこ稼いでいたので、30代の頃は「お金を稼いで好きなことできるって、楽しいよね。お金があると自由だよね」なんて、ちょっと上目線の会話で盛り上がっていました。

それと、編集者という職業も周囲から見れば憧れの対象だったりね。それもちょっと上目線の理由になったりして。「すごいね」と言われると謙遜しながらも優越感があった。仕事自体は楽しかったけど、30代になってからは会社の方針と相容れない部分が表に出てきてだんだんつらくなってきました。「でも、お給料いいし」というところでバランスをとっていた感じでした。今振り返ってみると“好きなこと”にお金と時間を費やすことで“満足したふり”をしていたのかもしれません。

――なんかわかります。身についてきちゃうんですよね。“楽しいふり”とか“幸せなふり”が。

塚本:そうそう、あながち経験を積んできているからこそ、自分に対しても他人に対してもダメな自分を見ない、見せないようにする技が身につく。その上でお給料がよかったりすると、“年に2回も海外旅行に行っている私”とか、“デザイナーズマンションに住んでいる私”とか、“好きなことにいくらでもお金をかけられる私”とか、そんな薄っぺらな部分に優越感を持ってしまって……。愚の骨頂ですよ。

消費で”フタ”をすると、その消費は身につかない

塚本:そんな感じだから、いつまで経っても自分に自信が持てませんでしたね。特に会社員だった頃はずっと他人に歩かされている感じ。責任のある役職に就いても、「他に適任者がいなかったから私に回ってきただけ。でも求められれば応えなくちゃ」と、そんな受け身的な気持ちでした。

自信がないからすぐに人と自分を比較しては“妬み”とか“嫉み”など、負の感情を量産していた気がします。好きなことをして人生を謳歌しているはずなのに、誰かが会社を辞めて海外移住するとか、これまでとまったく違うキャリアを踏み出すという話を聞くと、一気に落ち込むんですよ。「何やってんだろう、私は」って。30代の頃はそんなふうに他人の人生をよく妬んでいましたね。

――なぜ、そういう感情が生まれるんでしょう?

塚本:人生を変えたかったんじゃないかな。でも変えることができないジレンマみたいな。満足したふりをしている中で、時々人を妬んでは落ち込むことを繰り返す。妬むだけで、落ち込むだけで、すぐにその感情にフタをしちゃうんですけどね。

そして、新しい習い事なんかを始めては楽しいと思い込む。また「妬み」がわき起こるけど、やっぱりその感情にはフタをしちゃう。でも、フタは完全に閉めることはできないんですよね。いつかフタを閉められなくなって妬みと落ち込みしかない人生になったらどうしよう、みたいな恐怖に駆られることもありました。心が病んでたんでしょうね(笑)。

――今の塚本さんからはまったく想像がつかないけど……。しかも笑い飛ばしているし。

塚本:いつの間にか人を妬むという感情がなくなったからでしょうね。会社を辞めて、今は本当の意味で自分の意思で自由に好きなことをしているんだと思います。だから気持ちが安定してラクちんです。20代よりも30代、30代よりも40代と、どんどんラクになってきた気がする。

30代の頃より気持ちがラクになった分、ムダな消費をしなくなりましたね。もしかしたら10年後の自分が今の自分を振り返ったら“ラクなふりをしていた”と思うかもしれないけど(笑)。そうなったらきっと、50代はさらにラクになっているということでしょうね。

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【お茶会のメニュー】

〈器〉
・お茶のグラス(Chaina Seas)
・豆乳プリンのガラスの器(864円)
・トッピングのお皿
・黒蜜のミルクポットと豆皿(豆皿:1080円)
・お茶のピッチャー(Bormioli Rocco)

*金額掲載の器は「Fika」にて取扱中。

〈お菓子とお茶〉
・豆乳プリン
・トッピング(きなこ・あずき、ゆずジャム、クリームチーズ、黒蜜)
・冷たいほうじ茶

☆豆乳プリンの作り方

[材料]直径9cm・高さ5cmの器2個分
豆乳プリン:豆乳……200cc/砂糖……25g/ゼラチン……2.5g〜2.8g/水……25cc〜28cc
トッピング:きなこ……適当/あずき……適当/ゆずジャム……適当/クリームチーズ+レモン汁+砂糖……適当/黒蜜……適当(※作る場合は黒糖1:水1の割合/弱火で、灰汁を取りながら数分煮詰める。目安は50g:50ccで6〜7分)

[1]水にゼラチンを入れてふやかす。
[2]鍋に豆乳と砂糖を入れて温める。
[3]沸騰直前(縁に小さな泡が出はじめたら)に火を止めて、[1]を加えてよく混ぜる。
[4] [3]をカップ入れてあら熱がとれたら、固まるまで冷蔵庫で冷やす。

*ゼラチンは少なめだと滑らかでツルンとした食感に、多めだとプリプリな食感になる。

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「北欧雑貨と日本の器 Fika」
関連リンク:公式HPFacebook

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消費で終わらない土曜日の午後

40歳の時、おひとり様で都内に「7坪ハウス」を建てた雑貨店オーナーの塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。バリキャリ編集者だった30代には、家具、インテリア、服、旅行、習い事……とあらゆる“消費”に手を出したそう。そんな塚本さんと編集部が「オンナの30代」と「消費」の幸せなバランスについて語り合います。

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