女性が働く上で、産休や育休、復帰後の働きやすさは、避けて通れないテーマです。女性も男性も心地よく働くために、企業はどんな制度を準備して、これらの問題に向き合っているのか。ママライターがレポートします。
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ユニークな体験型ギフトを提供しているソウ・エクスペリエンスは、「子連れ出勤OK」の企業としてマスコミでも取り上げられていますが、実は「託児ルームなし」「保育士なし」「専用スペースはちょっとだけ」という驚くべき特徴が!

これで本当に子どもを連れて働けるの!?という疑問に対して「むしろ、会社も親も子どもも無理をしない、この形だから続けられるんです」と語るのは同社の広報担当・関口昌弘(せきぐち・まさひろ)さん。本当に優しい「子連れ出勤」のカタチについて聞きました。

「じゃあ、連れてきちゃえば?」の一言が始まりだった

――なぜ、子連れ出勤を導入したのでしょうか?

関口昌弘さん(以下、関口):私たちは、乗馬、陶芸、パラグライダーから、出産祝いのギフトとしてベビーサインやベビーエクササイズ教室などの「体験ギフト」を制作・販売しています。働き方も“よい体験”でなければいけないということから、常に働き方を考えています。そのひとつとして出てきたのが子連れ出勤です。

――何かきっかけがあったのでしょうか?

関口:代表の西村琢が時々自分の子どもを職場に連れてくることがあり、子連れ出勤なんて意識することもないまま会社に子どもがいたというのがそもそもの始まりです(笑)。

その後、パートスタッフに子どもが生まれ一時仕事を休んでいたのですが、こっちは人手が足りなくて、向こうは意外と暇を持て余していました。「じゃあ、子どもを連れてきちゃえば? ダメだったらやめよう」ということで実験的に始まりました。やってみたら意外とすんなりいけて、「これだったら大丈夫だね」という認識が社内に生まれました。

関口昌弘さん

関口昌弘さん

昼休みは親子そろって公園へ

――今は何歳のお子さんがいますか?

関口:常時来ているのは0~2歳の子が2人かな。あと幼稚園帰りによる子もいますが、それはごくたまにです。

――子どもがママから離れなくて仕事にならないということは?

関口:そういう時もあります。その場合はおんぶや抱っこしながら仕事をすることもあります。でも、場所に慣れてくるとひとり遊びをする時間が増えてきます。

——会社に気兼ねしてしまう、という人もいるのではないでしょうか。

関口:そうですね。パートタイムの社員からは、「気兼ねなく面倒をみてあげたいので、その分の時給を引いてほしい」という声があり、実施することになりました。「みなし残業時間」ならぬ「みなしお世話時間」というもので、子どもを連れてきた日は実際の勤務時間から2割を引くんです。フルタイムスタッフは時給制ではないので、給料は変えていません。

――オフィスに来る子どもは日中どんな感じで過ごしていますか?

関口:一緒に“出勤”してきた別の子と遊んだり、手の空いているスタッフにかまってもらったり、お昼休みは親と一緒に公園に行ったり、眠くなったら床に布団を敷いてお昼寝したりしています。また部屋で遊ぶのに飽きちゃった場合は、コーヒーを買いに行く人についていき、外でちょっと気分転換をしてくることもあります。

「こづれしゅっきん10このルール」

――子どもがいて「困った!」ということはありませんか?

関口:よく聞かれるのですが、基本的にはないんですよ。しいて言うなら、電話で静かに話したい時でしょうか。子どもの声が少し大きい場合は、親が子どもを外に連れていったり、または子機を使って別の部屋で電話をします。付き合いの長い取引先には社内に子どもがいることはあらかじめ伝えてありますが、「素敵ですね」「いい制度ですね」と、社外の反応もわりといいです。

子どもたちが遊ぶ、土足禁止のエリア

子どもたちが遊ぶ、土足禁止のエリア

――社内には発送用の商品も置いてありますが、子どもが触ったりしませんか?

関口:ビニールなどで梱包された状態で置いてあるので、触っても大丈夫ですが、「それは触っちゃダメだよ」というとやらなくなりました。

スタッフによっては、他人の子にどこまで注意していいかわからないという意見もあり「こづれしゅっきん10このルール」を定めることにしました。たとえば、大きな声は出さない、電話は触らない、電話している人には話しかけない、機嫌が悪い時は外に散歩に行くなどです。このルールがあることで、親以外のスタッフも子どもを注意しやすいし、子ども自身もルールを守れるようになります。

子どもがいないスタッフも好反応

――働いているスタッフの反応はいかがでしょうか?

関口:子連れ出社している親からは、「親以外とのつながりができて嬉しい、家でふたりきりでいる時より冷静でいられる、大家族で育てている感じがする」という声があります。子どもがいないスタッフからは、「オフィスの雰囲気がよくなる、将来の子育てに役立ちそう、優秀な人材が集まりやすい」などの声があります。

――子どもが苦手なスタッフは?

関口:子どもがいることは文化として根づいているので、苦手な人は最初から応募してこないと思います。

会社も親も子ども無理をしないことが一番

関口:私たちの会社は規模も小さいし予算もないので、基本的に親が自分の責任で面倒をみながら仕事をしています。子どものためにやっていることは、机の角を保護するくらい。必要なものは各自が持ってきています。

普段から会社、親、子どものいずれかに無理が出るようならやめようねということは話していますが、今のところは大丈夫です。基本的には3歳までには保育園か幼稚園に預けましょうというスタンスで、預ける場所ができるまでの制度として必要があればこれからも続けていきます。

取材を終えて

「職場に子どもがいたら仕事なんてできないのでは?」と思っていたのですが、取材していた1時間、子どもたちはおんぶされていたり、親の机の横に座ってお絵かきをしていたりして、社員のひとりかと思うほど職場に溶け込んでいました。

保育園に預けられないなどの理由で働くことを断念するママも多いなか、「子連れ出勤OK」の会社は希望の星なのではないでしょうか。会社も親も子どもも無理をしないからこそ、続けていけるのかもしれません。

間野 由利子

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