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2016/07/27

なぜ、人は不倫をするのか?
これまで不倫に関する著書を多数世に送り出してきたライターの亀山早苗(かめやま・さなえ)さん。今回から始まる全5回連載では、古今東西の人々を悩ませ続けてきたこの難題について、亀山さんと考えていきます。第1回は、28歳のアカリさんのケース。28になるまで恋愛経験がまったくなかった彼女が、あるきっかけから既婚の上司と関係をもってしまい……純粋ゆえに堕ちていく、彼女の恋の行方は?

「最初の恋愛が不倫」の闇

恋愛は楽しいことだけでなく、相手の気持ちを忖度して悶々としてしまうもの。だからこそ、初めての恋愛が不倫だったら精神的にきついだろう。最初からいきなり「妻」という確固たる立場のパートナーがいる男性を愛すると、傷つくことばかりになるのではないだろうか。

ただ、20代後半での初めての恋愛が不倫だったというケースは少なくない。その年齢になって尊敬する上司に出会い、それが熱烈な片思い状態となり、あげく暴走という話は時々耳にする。

妻帯者の上司と……アカリさん(28歳)

27歳で初めて恋愛したのが勤め先である建設関係会社の上司だというアカリさん(28歳)。10歳年上で既婚、ふたりの子どもがいるそうだ。アカリさんは日に日に彼に惹かれていった。

「今まで人を好きになることがどういうことかわからなかったんです。でも、彼に対しては過去に感じたことのない強い感情がわき起こってくる。彼のためなら何でもできると思った。それでちょっと大きな仕事が一段落した時に開かれた打ち上げの二次会で彼にぴったりくっついて、『課長のことが好きなんです。もう気持ちが止められません』と打ち明けたんです」

同じ職場、しかも上司に大胆な告白をするものだ。恋愛に慣れていないと、こうした距離感のとれない行動に出がちなのかもしれない。ただ、彼はその告白を受け流し、関係はそれまでと変わらず上司と部下だった。

恋愛ではなく、仕事でいい関係が築ければいいとアカリさんには思えなかった。仕事で自分のことはある程度認めてくれているはず、それなら女としても認めてくれるに違いないと思った。

「先輩から聞いた話では、彼の奥さんって彼より4歳年上らしいんです。ということは40歳を過ぎている。彼だって若い私に興味がないはずはない。日常的に会話をしていると、決して感触が悪いわけじゃなかったから」

恋愛経験がないがゆえの純粋さ、思い込みの激しさ

決して彼女を責めるつもりも悪く言うつもりもないのだが、よく言えば恋愛経験がないがゆえの純粋さ、悪く言うと自分に都合のいい思い込みの激しさが垣間見える。異性との関係が、恋愛感情か無関心かの二択になっていることも気にかかった。

「彼は私に冷たくはない。だから恋愛感情をもっている」と思うことが飛躍だという自覚がないのだ。

アカリさんは自宅を出て、彼の家から自転車で10分ほどの距離にアパートを見つけてひとり暮らしを始めた。

「帰りが一緒になった時など、彼に『ここに住み始めたんです』とアピールしておきました。
その後、満を持して、飲み会で思い切り酔ったふりをしたんです。二次会が終わって、なんとなくばらばらにみんなが駅に向かっていく中、彼の腕にしがみついて『歩けない、帰れない』とダダをこねた。『しかたないなあ』と彼はタクシーを拾って一緒に乗ってくれました。タクシーの中では彼にもたれたまま。アパートに着いた時も動けないふりをして。すると彼は料金を払って一緒に降りてくれたんです」

彼にすがってアパートの2階へ。鍵を取り出して彼に開けてもらい、玄関に入ると彼女はしゃがみこんだ。彼を帰さないためだ。優しい彼は彼女を抱いてベッドに運んでくれた。そこで彼に抱きついたまま、彼女は涙を流した。

「こんなに好きなのにって。本当にせつなくて泣けてきた」

彼女の描いた筋書き通り、彼は自分を律することができなくなった。そしてようやくふたりは「結ばれた」そう。

“一度のあやまち”を処理できない

それが3 ヵ月ほど前のこと。彼女はこれで彼と付き合うことができる、彼の「オンナ」になったと思い込んだが、それ以来、彼とふたりきりで会ったことはない。

「関係をもった数日後、『今度は家で料理を用意して待ってます』とショートメールを送ったんですが、彼は『そういうことはやめてほしい』と。ショックを受けていたら、『今度また、みんなで飲みに行こう』って。飲みに行ったあと、私と一緒にアパートに来るということだと思ったんですが、次にみんなで飲みに行ったら彼は一次会だけで帰ってしまったんです」

彼としては、あの日のことは勢いによる過ちだったのだ。酔った彼女の誘惑にうっかり乗ってしまった。だが、二度と過ちは繰り返せないとも思っただろう。彼女のウブなきまじめさは彼にとっては恐怖に近いかもしれない。一次会で帰ったことで、自分の気持ちを察してほしいと願ったかもしれないが、もちろん彼女は今も彼からの連絡を待っている。

「私は略奪しようとは思っていません。彼のことが好きだから時々会えればそれでいい。彼も私のことが好きだからこそ、ああいう関係になったわけでしょう? 私がバージンだったことに彼が気づいたかどうかわからないけど、今度会ったらそのことも言うつもりです。本気で好きになったからこそ処女を捧げたのだと」

処女を捧げたという古風な言い回しを何十年ぶりかに聞いて驚いてしまった。愛情を押しつける攻撃性と、この古風さがなんともアンバランスに感じられる。

「でも彼はどう思っているのかしら」という言葉を何度か挟んでみたが、彼女には「彼も私を好きに決まっている。でも立場上、気持ちをはっきり表現できないんです」と決めつけるばかり。彼女は今日も悶々としながら、彼からの連絡を待っているのだろう。会社では「仕事の顔を貫いている」というが、それもそのうち自制がきかなくなるのではないか。先行きが心配でたまらない。

亀山早苗

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