タグ
2013/11/11

これからは「事実婚」の時代?

今年9月、最高裁は「婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子ども)の相続差別」を違憲と判断した。婚外子というと、日本では「不倫によって生まれた子ども」というイメージが強いため、「そのような子どもに同等の権利を認めると、家族制度が守れなくなるのではないか」などと物議を醸している。

一方で、今回の判決を歓迎する人たちもいる。「事実婚」を選んだカップルだ。最近では芸能人が事実婚を公表したり、“フランス婚”などとも呼ばれ、なにかと話題になっている。この新しい結婚のカタチは、日本女性にどのような変化をもたらすのか? 事実婚カップルの実情を取材した。

婚姻届を出さなくても、住民登録で「夫婦」になることができる

「事実婚で困るのは相続だけ」そう語るのは事実婚を選んだA子さん(60)だ。夫婦になるためには「婚姻届」を提出する「法律婚」が必要だと一般に思われているが、制度上はそうでもない。婚姻届を提出せずとも、「妻」「夫」として住民登録ができる。 “(未届け)”という注釈はつくが、相続以外は法律婚と同じ扱いだ。税制上も社会保険においても扶養に入ることが可能。育児も法律婚と同様の扱い。万が一別れることになった際も、ふたりで築いた財産は財産分与の請求ができ、また、相手の不貞行為などが原因の場合には慰謝料請求が可能となる。

どうして「事実婚」を選んだの?

しかし、そもそもなぜA子さんは事実婚を選んだのか。現在では夫婦別姓を通すために選択する人が多いが、A子さんはそれだけでなく「女性が男性の家に嫁に入る」という伝統的結婚のあり方への反発があったという。A子さんが生きたのは、まだまだ学生運動が盛んだった時代。はっきりとしたポリシーをもって、女性の社会進出を進めてきた世代らしい選択だったと言えるだろう。ネックとなる相続に関しても、万が一を考え二人で話し合い、遺言書を残してきた。A子さんは、「法律婚では当たり前とされることも、一つ一つ話し合って決めてきた。密度の濃い夫婦生活だと思う」と語る。

子どもが生まれる瞬間だけ結婚!

一方、デメリットとなるのが今回初めて違憲判決が出た婚外子差別だ。事実婚のままでは子どもは「婚外子」となり、万が一別れることになった際には、将来的に財産分与に関する不利益が子どもに生じる可能性があった。そこで、A子さんは子どもの出生時に婚姻届を提出、その後離婚届を出し事実婚に戻した。ちなみに、婚姻届提出の際の姓はじゃんけんで決めた。現在では、子どもも無事に自立し親元を巣立っていったそうだ。

女はわがまま、男は無責任?

一方で、制度とは別に出てくるのが世間の価値観の問題だ。家族は同じ姓であるべき、あるいは入籍してこそ結婚、という伝統的価値観は根強い。そのため、周囲からの理解が得難く「わがまま」「覚悟がない」と捉えられたり、女性の権利を尊重して事実婚を選んだはずの男性のほうが「無責任」「甲斐性なし」などと非難されることもある。

ただ、世界的には女性や子どもの人権を守るため、婚外子差別撤廃や夫婦別姓が選択できることはあるべき姿とされている。日本政府はこれについて国連から是正勧告を受けており、今回の最高裁の全裁判官一致での違憲判決はこうした背景を受けてのものだ。今後、最高裁判決を受け、民法が改正されれば、制度上唯一のネックであった相続の問題も解決されることとなる。制度上の体制が整ってきた今、世間の常識にとらわれず、より自分の価値観に沿った結婚の形を考えてみてはどうだろうか?

鈴木晶子