「ファストファッションはなぜ安い?」イベントレポート

ファストファッションの裏側にあるもの 地球と人に優しい消費のカタチ

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ファストファッションの裏側にあるもの 地球と人に優しい消費のカタチ

次々に生まれるファストファッションのブランド。もはやシーズンごとに服を捨てるのは当たり前になっていますが、その裏側にはアパレル工場で過酷労働を強いられている発展途上国の人々がいます。

世界の人権問題に取り組むNGO団体「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長・伊藤和子(いとう・かずこ)さんの著書『ファストファッションはなぜ安い?』(コモンズ)の出版記念イベントが7月5日に開催。伊藤さんと共に登壇したのは、人、社会、自然環境に配慮した宝石類を使用したジュエリーブランド「HASUNA」創業者の白木夏子(しらき・なつこ)さん、フリーアナウンサーで一般社団法人「エシカル協会」代表理事を務める末吉里花(すえよし・りか)さんのふたり。労働搾取と私たちの消費についてディスカッションを行いました。

バングラデシュの工場倒壊事故から見えてくるもの

2013年、バングラデシュで縫製工場の倒壊事故が起こりました。1000人以上の死傷者を出した事故現場で作られていたのは、「ベネトン」「ウォルマート」「マンゴ」といった世界的に有名なファストファッションブランドの商品。伊藤さんの著書では、世界に大きな衝撃を与えたこの事故を取り上げています。

さらに、日本を代表するファストファッションの下請け工場でも違法な長時間労働が行われていたことに触れています。

白木夏子さん(以下、白木):こうした大企業に対して声を挙げることに恐怖はありませんでしたか?

伊藤和子さん(以下、伊藤):名誉毀損の裁判を起こされたり、メディアを使ってバッシングされる可能性も考慮しました。でも、だからこそ証拠集めはきちんとやろうと、潜入調査をして証拠写真を集めました。調査報告を出す前に企業にも内容の確認依頼をしたところ、意外にも「そのまま出していただいて大丈夫です」というお返事が来たものの、内心はひやひやしていましたね。

消費者と生産者にできること

続いて話題は、伊藤さん、白木さん、末吉さんがそれぞれ続けている活動に移りました。

末吉里花さん(以下、末吉):「世界ふしぎ発見」という番組のミステリーハンターを務めていたのですが、世界の秘境を巡る中で、一部の権力のために弱い立場の人が犠牲になっているという共通の構造が見えてきました。多くの人にこのことを伝えなくてはと思ったのが、「エシカル協会」を立ち上げたきっかけです。

世界では、ファストファッションがトレンド化する一方で、エコマークやフェアトレードなどの認証も広まっています。なぜ企業が取り組むようになったかというと、このままでは地球環境を持続していくのが難しいと実感し始めたらからなのです。

消費者が安い商品を求めることで労働者の貧困を助長し、人権を脅かす。ひいては環境までも破壊するという負のスパイラルを起こしています。遠い国で起きている問題ではなく、消費者と労働者は隣り合わせなのだという気持ちを持っていただきたいです。

白木:私はビジネスとしてものづくりをしているので、従来の考えであれば、いかに原価を安くし、いかに安い工場に発注するかが重要です。しかし「HASUNA」では、原料を値切ったり買い叩いたりということはしません。そのため、高い原価のものをどうやって売っていこうかと最初は悩みました。

ジュエリーの価値を決めるのは、「歴史」「クラフトマンシップ」「デザイン」の3つと言われています。歴史はまだ浅いけれど、海外と日本の高い技術を駆使し、絶対に妥協しないデザインでつくりあげる。そうした信念のもとでやっています。

「エシカル」という言葉がなくても幸せな社会

参加者からの質疑応答の時間になると、その人の主観によって意味が左右される「エシカル(倫理的)」という言葉に焦点が当てられました。

末吉:今後、「エシカル」という言葉がいろいろなところで使われるようになることが予想されるので、逆に危惧している状態です。行政は商品に基準を設けようとしているけれど、それで本当に「エシカルである」と保証できるのかという課題もあります。最終的に目指すのは、「エシカル」という言葉を使わずともみんなが幸せに暮らせる社会をつくることですね。

白木:ジュエリーブランドHASUNAでは「エシカル」という言葉はあえて使いません。企業として当然エシカルなものづくりをしているという前提で、最高のジュエリーをつくることに専念しています。

一方、NGOや一般社団法人は、まずは問題を多くの人に知ってもらうことが最優先。「エシカル」というラベルを掲げて多くの人の注目を集めることが大事ですよね。だから、企業と、NGOや一般社団法人とでは役割が大きく異なるのではないかと思います。

消費者の声がポジティブなトレンドをつくる

最後は「エシカル」な消費について語り合いました。

白木:職人の方が頑張ってつくったものを買うと、こちらも嬉しい気持ちになりますよね。毎日を楽しく過ごしたいので、こうした嬉しい気持ちを循環させていきたいと思っています。自分が物を選ぶ時には、理念に共感できるか、思いを込めて作られているかという点を重視しています。

伊藤:フェアトレード商品を買おうと思っても、全部をフェアトレードで揃えるのは金銭的にも難しいですよね。厳しいことをやろうとすると、続けられなくなってしまうので、できるところからやっていくのが大事だと思います。一回買ったものは長く着るだけでも違いますよね。

それから、SNSなどで消費者からノイズを起こしてほしいです。購入していない人が問題提起をするより、実際の購入者が、買った服について「問題があるのでこうしてほしい」と声を上げる方がずっと効力があります。消費者の方々から企業や社会に向けてメッセージを発してもらい、ポジティブなトレンドがつくっていけたらいいな、と。

(竹川春菜)

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