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2016/07/19

メイ新首相誕生にポルノ女優が大喜び……その理由とは?

7月13日、イギリス史上2人目となる女性首相が誕生した。“氷の女王”“政界のおしゃれ番長”とあだ名される、保守党のテリーザ・メイ氏(59)である。

この件で、思わぬ得をしたポルノ女優がいる。その名もテレサ・メイ氏(49)だ。……と、ここまででもう何が起こったか想像できてしまうだろうが、お察しの通りである。イギリスでは、ポルノ女優のメイ氏を新首相のメイ氏と勘違いする人が続出したのだ。

現地メディア「テレグラフ」によれば、数千人のtwitterフォロワーしか持たなかったポルノ女優のメイ氏は、瞬く間にイギリスのtwitterトレンドの10位以内に躍り出た。メイ氏の元には、本気なのか悪ふざけなのか、「EU離脱で忙しいでしょうね」「国民投票をやりなおせ!」などといったツイートが殺到したようだ。

これを受けて、メイ氏もすっかり悪乗りし、「私とテリーザ・メイ、どっちが首相にふさわしいと思う?」などというtwitter投票を始めてしまった。

 

 

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(twitter @RealTeresaMay スクリーンショット/2016年7月17日閲覧)

 またtwitterのプロフィールでも、「イギリスのグラマーなモデル、テレサです。首相じゃなくってね」「私の本をAmazonで買わない? 政治より面白いわよ」などと言いたい放題。さて、新首相であるテリーザ・メイ氏は、どんな反応をしたのだろうか?

 

……もちろん、完全スルーだ。

「私は目の前の仕事に取り組むだけ」

新首相テリーザ・メイ氏は、一言で言えばクールな人物だ。仕事に私情を差し挟まず、職務を淡々と遂行する。そのクールさたるや、赤いネイルにヒョウ柄のパンプスという、普通に考えて大阪のおばちゃんを思わせるアイテムをスタイリッシュに見せてしまうレベルだ(画像集:ハフィントンポスト日本版)。

だが、特に都会出身というわけではない。海辺の町・イーストボーンで、イギリス国教会の牧師の娘として生まれた。公立学校に通い、本人いわく“いい子ぶりっ子”だったというメイ氏は、やがてオックスフォード大学に進み地理学を専攻。卒業後はイギリスの中央銀行であるイングランド銀行に就職し、1997年から40歳で国政の道へ入った(参考:インディペンデント)。

“私は昼食を食べながら人の噂話などしません。議会のバーでお酒も飲みません。感情を露骨に表すことも多くはありません。私は目の前の仕事に取り組むだけです”

(ハフィントンポスト日本版より引用、原文はザ・ガーディアンほかに掲載)

こうした姿勢は、イギリスのEU離脱問題についても顕著に表れている。19年間保守党でキャリアを積んできたメイ氏は、イギリスのEU離脱が話題に上がった時も、残留という現状維持を訴えていた。

“もし私たちがEUを離脱すれば、雇用や経済に大きな影響を及ぼすことになります”

“(EUの総人口である)5億人以上の市場を相手にできるというのは、(イギリスの経済にとって)非常に大事なことでしょう”
(2016年6月22日、ワーウィック大学を訪れてのコメント/コヴェントリー・テレグラフより抄訳)

ところが、2016年6月23日に行われた国民投票で、約48%を占めたEU残留派に対し、EU離脱派は約52%で勝利。わずか3%という僅差に、残留派からは国民投票のやり直しを求める声も上がった。そんな混乱の中でも、メイ新首相の対応は実に淡々としていた。

“離脱は離脱です。私たちは離脱を成功させるのです。EU内に残る試みも、裏口からまた入り込むようなまねも、国民投票のやり直しもありえません。この国はEU離脱という投票結果を出したのですから、私は首相として確かにEU離脱を進めましょう”

 

(2016年7月11日、バーミンガムで行われた演説のtwitter書き起こしより抄訳)

メイ氏によればイギリス国内の政治家には、国民投票を無視してEU残留を進めようという向きもあるという。だがこうした動きについても、「民主主義のもと投票で選ばれた政治家が国民投票の結果を無視するなどあってはならないこと」と切り捨てた。

メイ新首相の掲げる「Brexit(ブレグジット)」とは?

EU離脱のことは、英語圏において、Britain(英国)とExit(出口、離脱)を組み合わせた「Brexit(ブレグジット)」という新語で呼ばれ始めている。メイ新首相は「Brexit means Brexit(ブレグジットはブレグジットだ)」をキャッチフレーズに、民主主義下で選ばれた自覚を持って淡々と職務を進めているように見える。

2016年7月13日には、「EU離脱担当相」を新設。前ロンドン市長のジョンソン氏を起用した(出典:日テレNEWS24)。また「Brexit means Brexit」のフレーズも、さっそくテレグラフ・BBC・ファイナンシャルタイムズといったマスメディアによる記事の見出しに踊った。こうした演説の才能は、「Yes we can」のオバマ大統領や「聖域なき改革」の小泉純一郎元首相が操ったような、多数の人々を一言で導くワンフレーズ・ポリティクスの手法を思わせる。

そんなテリーザ・メイ新首相の姿に、人々は「氷の女王」とあだ名するのだ。ちょうど、女性として初めてイギリス首相となったマーガレット・サッチャー氏が「鉄の女」と呼ばれたように。

ただ、女が仕事をする。それだけで「氷」だの「鉄」だのと言われなければならない日々は、いったいいつまで続くのだろうか。

最後に、メイ氏自身の言葉を引用しよう。

「私たちはEUからの離脱を進めながら、世界の中で強く、新しく、前向きな役割を築き上げる。イギリスを特権階級だけでなく、すべての人が恩恵を受けられる国にする」
(NHK NEWS WEBより)

テリーザ・メイ氏の活躍による恩恵を受けるのは、きっと、ポルノ女優テレサ・メイ氏だけにはとどまらないだろうと期待したい。

牧村朝子

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