脳と疲労 第5回

忙しくても「疲れない脳」をつくる お笑い芸人流“デュアルタスク”とは?

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忙しくても「疲れない脳」をつくる お笑い芸人流“デュアルタスク”とは?

「日本で一番疲れているのは35〜45歳の女性」と話すのは、東京疲労睡眠クリニック院長の梶本修身(かじもと・おさみ)先生。最終回となる今回は、「疲れにくい体」をつくるための生活の工夫と、疲労に負けない脳の鍛え方についてお聞きします。

28℃のエアコン設定で仕事効率15%ダウン

――梶本先生は、(取材中)先ほどからエアコンの温度をこまめに変更されていますね。室温コントロールは疲労を溜めないコツでもあるんですか?

梶本修身先生(以下、梶本)
:はい、室温の調整は「疲れにくい体」をつくるための大事なポイントのひとつですね。本連載の第1回 でもお話ししたとおり、あらゆる疲労は体温、呼吸、心拍数、血液循環などを24時間コントロールしている自律神経のオーバーワークによって起こります。疲労を蓄積させないためには、できるかぎり自律神経に負担をかけない環境に身を置くことが大切です。

――最近はエコ政策で、夏場でも高めのエアコン設定温度を推奨していますよね。

梶本:これは、まったくもってナンセンス。夏場に室温を25 ℃から28℃に設定変更すると7%のエネルギー削減効果がありますが、一方で人間の仕事のパフォーマンスは15%も落ちます。省エネと引き換えに、体温や発汗調整をする自律神経に余計な負荷をかけ、自分のエネルギーをロスしてしまう場合もあるのです。仕事効率や疲労軽減の観点からいえば、暑さ・寒さを我慢しないことが大事。室温は適宜、自分が快適に感じる温度に変えていくべきです。

――疲労を寄せつけないためには、身のまわりの環境を整えていくことが大事なんですね。他にポイントはありますか?

梶本:一番よくないのは、環境の変化のない閉鎖的な部屋で黙々と仕事をすること。本当は、温度や湿度、風、照明、音、香りなどが随時変わっていくような“ゆらぎ”のある空間が最適です。森林浴をすると元気になれるのは、自然界の中に十分なゆらぎがあるからなんですね。

ただそうはいっても、会社勤めですとなかなかそのようなゆらぎ空間は期待できないでしょう。時々窓を開けたり、昼休みには屋外に出たりするなどの工夫をしてみてください。

活性酸素のシャワー・紫外線には要注意

――他に、疲れの発生源なるようなものはありますか?

梶本:日常的に気をつけたいのは、紫外線です。海に行って帰ってくるとグッタリする人も多いと思いますが、これは紫外線をたくさん浴びることによって体内で疲労のもとになる活性酸素が生じるためです。

「日焼け止めと日傘でガードしているから大丈夫」という女性でも、目までガードしているでしょうか。スポーツ選手たちがサングラスをしているのは、まぶしさを軽減するためだけではなく、目から入る「紫外線疲れ」を防ぐためです。肌だけでなく、1年を通して紫外線カットのサングラス着用を習慣づけましょう。

疲労を防ぐためにデュアルタスクを鍛える

――すべての疲労は自律神経を司る脳(視床下部や前帯状回)から来ているということですが、疲労に負けない脳トレーニングの方法などがあれば教えてください。

梶本:疲労に負けない脳をつくるためには、脳全体をうまく活用し、複雑な作業を効率よく処理できる能力を高めていく必要があります。わかりやすくいうと、頭の回転や機転の早さを鍛えていくということです。

たとえば、テレビで活躍しているお笑い芸人の方たち。緊張感漂う本番で彼らは場の空気を瞬時に読みながら、軽快なトークを繰り出し、さらに次のボケやツッコミのことまで計算しています。これは3つ4つの作業を同時に頭の中で行うデュアルタスクというもので、本来ならばものすごく疲れる作業。ところが脳のあらゆる場所を活用しているせいか、ひとつのことに集中して脳の一ヵ所だけを酷使している人よりも疲労は軽いようです。このデュアルタスク能力が身につくと、日常生活のたいていのことは楽々こなせるようになります。

――私たちがデュアルタスク能力を普段の生活で身につける方法はありますか?

梶本:何より効果的なのは、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションです。プレゼンや商談などある程度の緊張感がある状況の中でのコミュニケーションは脳を鍛え、脳疲労を予防するうえでとても有効です。そういう環境がなければ、気の置けない仲間との他愛ない雑談でもかまいません。

――連載の最後に、梶本先生からメッセージをお願いします。

梶本:35~45歳という疲労世代の女性たちは、自身のこと以外にもやらなければいけないことがたくさんあります。ありありと「疲労」を自覚していても時間に追われ、ごまかしごまかしで今をしのぎながらがんばっている人も多いと思いますが、適切な疲労ケアを心がけ、活力ある心と体を養っていってください。

(江川知里)

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