恋愛、結婚、浮気、ケンカ、離婚……いつの時代も変わらない男女の「もつれ」を遺伝子学で解き明かしていく連載です。生命情報学専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生に、様々な男女のもつれの原因を遺伝子学の観点から答えていただきます。
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「牡牛座(4月半ばから5月半ば)は堅実で、山羊座(12月半ばから1月半ば)は知的」なんて、ホロスコープ(西洋占星術)の世界ではよく言われることですが、実は最近の研究では、性格ばかりか、特定の病気のなりやすさ/なりにくさまで、生まれ月によって傾向があることがわかっているそう。「アダムとイブのもつれる遺伝子」第8回のテーマは、「狙い目の男は生まれ月でわかる!?」。生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生に、生まれ月と性格や健康の関係について聞きました。

生まれ月と病気のリスクは関連している

「相性のいい男が欲しいけど、においを嗅ぐチャンスはないし」「とにかく丈夫で優秀な男を選びたい」という人に注目してほしいのが、ズバリ「生まれ月」。

生まれ月によって病気のリスクが異なることが、アメリカで170万人を対象に行われた最新の研究で明らかになったんです。では、もっとも丈夫で、生物として優れている男は何月生まれなのでしょうか?

5月生まれには東大生や優秀なアスリートが多い

一番病気のリスクが低いのは5月生まれで、次いで7月。3番目が12月という結果です。5月生まれは一番健康で、なおかつ東大生や日本代表となるようなアスリートが多いといわれています。つまり、心身ともに優秀な男である可能性が高いんです。

逆に、病気のリスクが高いのは、早生まれにあたる1〜3月生まれ。1月生まれは高血圧、2月は肺がん、3月は循環器系のリスクが高く、日本人の死因トップを総なめにする病名が並んでいますね。

また、ハンガリーのある研究チームは、生を受けた季節と性格の関係を、以下のように発表しています。

春生まれ:楽観的で、社長やリーダーなど上に立つタイプが多い
夏生まれ:特殊な才能を持つ人が多く、楽観的に人生を乗り切るが気分屋
秋生まれ:体力に恵まれ、長生きする傾向がある
冬生まれ:聡明でストイック、奇抜なアイデアを持つ

妊娠中の母親の環境が胎児の将来を決める

なぜ、このような結果になるかというと、胎児期から乳児期に至るまでの母体の環境が、その後の成長に深く関わっているからではないかと考えられています。

であるとするなら、初夏生まれが一番健康であるのも頷けるんです。初夏に出産ということは、妊娠初期が夏の終わりから秋頃にあたるので、気候も母体の栄養状態もいいんです。「天高く馬肥ゆる秋」と言いますしね。それに、母親が日を浴びる時間だって長くなります。また新生児期を夏から秋にかけての温暖な季節に過ごせるのも、やっぱり有利に働きます。

別に私たち現代人は太陽が出たら起きて太陽が沈んだら寝るという生活をしているわけではありませんが、日照時間によってホルモンの分泌などが決まり、カラダは夜昼を区別してリズムを調整しています。結果として、日照時間が遺伝子の働きに大きく影響するので、決してないがしろにできない大事なファクターなんです。

光が遺伝子の“スイッチ”を操作することも

この連載でも何度か取り上げましたが、「遺伝子異常」が引き起こされるメカニズムにはいくつかパターンがあります。そのうちのひとつは、一般的にイメージされる突然変異や、連載第4回で取り上げたセロトニントランスポーターのように、複数の型が存在しているパターン。または遺伝子自体は正常ですが、スイッチの切り替えがうまくいかないというパターンなどなど。

そして、そのスイッチのオンオフを日光が操っている遺伝子も存在するわけです。

特に顕著なのが、昼夜の区別や睡眠リズムに関連する遺伝子、UV適応(紫外線からカラダを守る)に関連する遺伝子です。母体が浴びた日照量の違いが、子どもの遺伝子の機能に影響し、さらには疾患につながる可能性だってあるわけです。

ここまでの話を簡単にまとめると、研究調査データによれば優秀な男を狙うなら5月生まれが第一候補として挙げられということ。「子どもがほしい!」と思った場合、9月から10月にかけて子種を仕込むと5月生まれの子になりますね(笑)。

妊娠中に葉酸をとってもムダな場合も

優秀な男を手に入れたし、無事に妊娠もした。でも、そこで安心してはいけません。妊娠中は「せっせと葉酸をとるように」というのが今や常識となっていますが、その常識も、自身の遺伝子の状態いかんによっては覆されてしまうんです。

日本ではまだあまり知られていませんが、葉酸をはじめとした、ビタミンB群の代謝がうまくいかない遺伝子というのが存在します。その名はMTHFR。この遺伝子にはCC型(正常)、CT型(中間)、TT型(代謝不可能)の3つの型があり、日本人ですと、それぞれ3割、6割、1割くらいの割合になっています。そして、なんと、TT型の人は、妊娠中に市販されている葉酸をとってもその大半は代謝・吸収されないんです。

サプリは必ずしも「いいもの」ではない

実は私自身もTT型で、葉酸の還元型(緑黄色野菜などに含まれる自然界での存在型)である「葉酸塩」のサプリをアメリカから取り寄せて飲んでいました。「サプリ=カラダにいいもの」と一般的には信じられていますが、自分の遺伝子に合わないサプリメントを知らず知らずのうちに摂ってしまっているとしたら、究極の「ムダ」ですよね。

最近、アメリカの大学では実験的に「遺伝子学食」なるものが提供されたそうです。ダイエットサポートの一環で、学生の遺伝子型によって太りにくい食材で作ったメニューをおすすめするというもの。日本でも「遺伝子化粧品」なるものが販売されていて、その人の遺伝子にあった化粧品をオーダーメイドで調合してくれるようです。

遺伝子のメカニズムがここまで詳しくわかってくると、健康法や美容法にしても、「これさえ、やっていれば大丈夫!」というテッパンの方法は、もはやありえないのかもしれませんね。

筒井久美子(つつい・くみこ)
理学博士。国際医療福祉大学医療福祉学部助教。東京医科歯科大学大学院博士後期課程修了。専門は医療情報学、生命情報学。学生時代のペットは培養細胞。ナンパされた男に「趣味は?」と訊かれ、「細胞培養」と答えたら逃げられた過去あり。現在1児の母。将来の夢は娘と一緒に細胞ちゃんを培養すること。

小泉ちはる

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