脳と疲労 第3回

女性に多い“隠れいびき”が眠りの質を下げる

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女性に多い“隠れいびき”が眠りの質を下げる

寝ても覚めても疲れている、朝起きた瞬間からグッタリ……こんな自覚症状がある働く女性は少なくないでしょう。実は本当の意味で疲労からリカバリー(回復)する方法はたった一つ、睡眠しかありません。今回は『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)の著者で、東京疲労睡眠クリニック院長の梶本修身(かじもと・おさみ)先生に、カラダを速攻リカバリーさせる睡眠法について聞きました。

睡眠は疲労回復の唯一のチャンス

――疲労は睡眠でしか解消できないのですか?

梶本修身先生(以下、梶本):はい、食事や環境の改善によって疲労を起こしにくくことはできますが、すでに発生してしまった疲労を取り除くためには睡眠しかありません。日中にどんなに疲弊しても良質な睡眠をとることができれば、翌朝にはきちんとリカバリーできるほどの力があります。

――睡眠による疲労回復のメカニズムを、もう少し詳しく教えてください。

梶本:国際疲労学会で報告されたある実験で、徹夜や激しい運動をさせたマウスの臓器を調べたところ、ある種のタンパク質が通常の3~5倍、とくに肝臓や心臓では10倍も多く検出されました。このタンパク質は、「ファティーグ・ファクター」(通称:疲労因子FF)と呼ばれています。

この実験によって「疲労とは、疲労因子FFが体内に多く溜まっている状態」ということが判明したわけですが、一方で私たち人間の体は、疲労回復因子FFの働きを抑制するための「疲労回復因子FR」という物質も備えています。疲労回復因子FRの働きが疲労因子FFの働きを上回るのは睡眠時。「睡眠が疲労回復の手助けになる」というのは、こういった理由があります。

翌朝グッタリの原因は“隠れいびき”

――まず疲労を回復させるためには、どれくらい睡眠時間をとればいいですか?

梶本:仕事でグッタリの状態で帰ってくると「今日はとりあえず早く寝るか……」と、ほとんどの人は睡眠時間を優先的に確保しようとしますよね。寝不足は疲労の大敵なので大事なことなのですが、一番気にしてほしいのは時間ではなく「どれだけ深く眠れたか」という睡眠の質です。世間には4時間で疲労回復できる人もいれば、10時間寝てもダメな人もいますが、この差は「睡眠力」の違いなんです。

――しっかり眠ったつもりなのに、朝起きた瞬間からダルいという人は睡眠の質に何か問題があるわけですね。具体的にはどういう対策が必要をとればいいですか?

梶本:まず、見直していただきたいのは「いびき」です。女性の場合は肺活量が少ないので、男性のように「ガーッ」とわかりやすいいびきをかく人は少ないかもしれません。ただ、寝息にしか聞こえないような小さないびきをかいている方はわりといます。

いびきというのは、睡眠中に気道が狭くなって生じる現象。スムーズな呼吸が阻害され、必要量の空気を肺に送りこむのに莫大なエネルギーを消費している状態です。「細いストローで一晩中風船を吹き続けている」そんなイメージを持ってもらうとわかりやすいでしょう。こんな状態では、睡眠で疲労回復するどころか余計に体を疲れさせるだけです。

――それはコワいですね。でも寝息のような小さないびきだと、本人も気づきにくいと思います。

梶本:睡眠時の酸素飽和度を調べる簡易型PSGという検査があります。保険適用で3000円くらいの費用でできるものなので、「寝ても寝ても疲れがとれない」という方にはおすすめしたい検査ですね。睡眠外来をやっている病院ならどこでも受けることができます。

ただし、無意識下で行われるいびきは自力で治すことはできません。そこで便利なのが、いびきをかきやすい人向けに開発された「疲労回復CPAP」という呼吸サポート器具。睡眠効率と疲労回復効果を劇的に高めてくれるので、私は国内外の出張の際にも必ず持っていきます。これを使い始めてから、6時間半必要だった睡眠時間が4時間で大丈夫になりました。

お風呂は寝る1、2時間前、食事は3時間前に

――他に、睡眠の質を高める方法はありますか?

梶本:人間の体は、深部体温が下がるときに眠くなることがわかっています。寝る1、2時間前に入浴し、ベッドに入るころに深部体温が下がるようにしておくことで寝つきがよくなります。また、交感神経を優位にする高温の全身浴はやめて、38~40℃程度のぬるま湯による半身浴で副交感神経を優位にしましょう。

そして夕食は、消化吸収がスムーズで自律神経に負担をかけにくい低脂肪なメニューをなるべく選ぶようにして、寝る3時間前までには終わらせるようにしてください。

(江川知里)

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