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2016/07/01
恋愛、結婚、浮気、ケンカ、離婚……いつの時代も変わらない男女の「もつれ」を遺伝子学で解き明かしていく連載です。生命情報学専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生に、様々な男女のもつれの原因を遺伝子学の観点から答えていただきます。
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「糟糠(そうこう)の妻」と呼ばれるように、夫を立て、操を立てる貞淑な女性はいつの世も世間から尊ばれるもの。しかし一方で、人気ドラマ「不機嫌な果実」に登場する人妻のように、奔放極まる女性も人を惹きつけます。「アダムとイブのもつれる遺伝子」第7回では、生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生から、「異性に対する“誠実さ”は遺伝子に左右されている」という驚きの説が明かされます。

「誠実になる遺伝子」がヒトの中に存在する

「浮気者は一生治らない」なんてよく言いますけど、実は、ヒトの中には「他人に対する誠実さ」をつかさどる遺伝子が存在するんですよ。その名も「KATNAL2(カットナル・ツー)」。カッとなる、って何だかダジャレみたいですけど、それはただの偶然で(笑)、KATNAL2のどの型を持つかでその人の誠実さが決まるんです。

この場合の誠実さとは、「嘘をつかない」「他人に親切にする」「浮気をしない」といった、いわば「人間関係における誠実さ」を指します。

たとえば、3種類あるKATNAL2の型のうち、ある遺伝子を両親から受け継ぐと謹厳実直な性格になりやすく、また別の型をもらうと、逆に不誠実になりやすいとのこと。中間の型を持つと、誠実さの度合いもちょうど中間になります。

これにはSNP(スニップ)と呼ばれる、遺伝子の塩基配列がたった1ヵ所だけ異なる部分が関係しているんです。スニップがあると、突然変異とまではいかなくとも、体質に影響を与えるので、それが個性として表にあらわれます。

生物としては奔放な人のほうがカシコイ?

最近では、海外で“遺伝子占い”とでも呼べそうなものが出てきています。「あなたの中のドーパミンとセロトニンとKATNAL2のバランスを見ることで、あなたの性格を鑑定します」という占いめいたものがトレンドになっているんです。

以前の連載でも取り上げましたが、ドーパミンは積極的でアクティブになる神経伝達物質、セロトニンは不安に駆られやすくなる神経伝達物質です。3つのうち、どれが強く出ているかによって、性格も違ってくるんですね。これが結構当たると評判で。もしかしたら、そのうち日本でも「動物占い」みたいに、注目の的になるのかもしれません。

ちなみに、KATNAL2はヒト以外のいろいろな種にもある古参の遺伝子。かなり前からその存在は知られていましたが、具体的にどういう機能を持つかは研究されていなかったんです。それが、ここ10年、20年でようやく明らかになってきた……という感じですね。

とはいえ、「相手を裏切らない」「他人に優しくする」といった、いわゆる「誠実さ」が尊ばれるのは文明化された人間社会ならではのもの。シビアな生存競争の中では、こういう誠実さは逆に不利になってしまう可能性が高いんです。生物として生き延びることを考えると、誠実さなんてどこ吹く風といった感じの“奔放な人”の方がカシコイのかもしれませんね。

「血液型」は本当に性格を左右している

性格にまつわる話でいえば、占いや性格診断でおなじみの「血液型」も関係してくるんです。

よく「血液型占いを信じているのは日本人だけだ」「性格にはほとんど影響しない」という意見が聞かれますが、今のA型、B型、O型、AB型の4種類が出てきた背景を見ていくと、「迷信」とは言い切れない部分が結構出てくるんです。実際、最近の研究では、人の性格や体質を左右しているのは腸内環境で、その腸内環境を決定づけているのが実は血液型なんじゃないかという結果も出ています。

ちなみに私は科学者でありながら、血液型マニアでもあります(笑)。会った人の血液型はほぼ全部覚えています。そのサンプル数はかなりの数に上りますが、確かに「血液型」と「性格」の間には関連性がありそうな気がしています。

実はAB型は最先端の血液型だった

血液型の中で、もっとも古い時代から存在しているのはO型です。O型は昔からある分、生存競争の修羅場をたくさん生き抜いてきている。だから他の血液型よりも免疫が強いんです。免疫が強いということは他の人間と交わる上でも強みですから、結果、O型は社交的で開放的な性格になったといえるでしょう。

一方、もともとA型は農耕民族、B型は遊牧民族が持つ血液型。AB型は、A型とB型を掛け合わせて生まれた、もっとも新しい血液型です。B型は、乳製品のお世話になっている遊牧民由来ゆえ、乳製品の消化を助ける細菌に関連する遺伝子の働きがとても強い。「A型とB型は相性が最悪」なんて言いますが、そもそも両者は農耕民族と遊牧民族で、ライフスタイルがまるで違うのですから、合わないのは当然なんです。

性格は遺伝半分、環境半分

人間の性格は、どこまで遺伝で決まるのか?

これは今、遺伝子学の世界でもまさに研究が進んでいるホットな問題。まだはっきりとはわかっていないのですが、おそらく“半々”ではないかと考えられています。

遺伝子の話は結構複雑なんです。ある特定の遺伝子を持っていると、それがそのまま確実にあらわれるという単純な話ではなくて……。同じ遺伝子を持っていても、実際の働き方が違うこともありますし。なかなか一筋縄ではいかないシロモノなんですね。

みなさんも実感している思いますが、ヒトの性格ってかなりの部分環境で決まりますよね。私も遺伝子を研究しながらも、そう感じていた部分もあるんです。でも、数年前に自分が妊娠した時、おなかの中の赤ちゃんが妊婦さんによって、やんちゃで動き回っていたり、いつもまどろんでいるように穏やかだったりするのを目の当たりにして、本当に胎児の頃から個性があるんだ、と思いました。やっぱり遺伝子に影響されている部分は大きいのかもしれませんね。

筒井久美子(つつい・くみこ)
理学博士。国際医療福祉大学医療福祉学部助教。東京医科歯科大学大学院博士後期課程修了。専門は医療情報学、生命情報学。学生時代のペットは培養細胞。ナンパされた男に「趣味は?」と訊かれ、「細胞培養」と答えたら逃げられた過去あり。現在1児の母。将来の夢は娘と一緒に細胞ちゃんを培養すること。

小泉ちはる

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