「2016年は、特に素晴らしい出来栄えの当たり年」

ボジョレー・ヌーボーの話ではない。フランスの有名新聞「ル・モンド」が、日本で相次ぐ不倫についてのコラムにつけた小見出しである。
関連リンク:Au Japon, le grand retour de l’adultère sur le petit écran

そこまでオシャレに言わなくてもと思うが、確かに今年は豊作だ。ざっと振り返ってみよう。1月からベッキーとゲスの極み乙女・川谷絵音、2月に“ゲス不倫”と報じられた宮崎謙介、3月には乙武洋匡、そして5月にも、とにかく明るい安村。「穿いてましたよ!!」との釈明のあとも、6月からはファンキー加藤・三遊亭円楽・高知東生と、怒涛の不倫報道ラッシュが続いている。

フランスのメディアで、日本の不倫そのものよりも話題なのは……

こうした日本の不倫報道ラッシュが、ついに海を越えてフランスにも届いたのだ。さすがフランスというべきか、各メディアではまるでフランス文学のような美麗な言葉づかいで日本の状況を伝えている。

「ル・モンド」誌東京特派員のフィリップ・メスメール記者は、「日本にて、小さな画面に不倫が大きく返り咲き(Au Japon, le grand retour de l’adultère sur le petit écran)」というタイトルでコラムを発表し、主に日本のテレビにおける不倫の扱いとその背景を紹介した。

また、2月には同じく「ル・モンド」紙で宮崎謙介議員の不倫が報じられたが、謝罪会見の評価は「ややマゾヒスト」。彼がカメラに取り囲まれ深々と頭を下げる写真のキャプションには、「オルヴォワール(さよなら、また会いましょう)」とフレンチジョークな一言コメントがついている。

関連リンク:Le député japonais qui défendait le congé de paternité démissionne pour adultère

女性向けメディア「ル・ジュルナル・ドゥ・ファム」は、ゲスの極み乙女・川谷絵音と異なりベッキーだけが活動休止に追い込まれた今年2月の状況を指して、「ベッキー:日の出ずる国の性差別犠牲者」と断じた。

関連リンク:Becky, victime du sexisme au pays du Soleil-Levant

総じて、フランスのメディアが話題にしているのは、日本の不倫そのものではない。日本社会の不倫に対するリアクションである。

不倫をした大統領が、クビになるどころかアレに使われる国・フランス

2016-6-30-madishon

ミッテラン、シラク、サルコジ、そして現大統領オランド。フランスの大統領は、少なくとも4代続けて不倫経験者である。不倫が報じられたのち、彼らはクビになる……どころか、不倫専門出会い系サイトの広告に顔写真を使われた。真っ赤なキスマークを合成され、「この人たちの共通点はな~んだ?」というキャッチコピーで。

公人にだってプライバシーはある、というのが、フランスで共有されている認識のようだ。「政教分離」ならぬ、「公私分離」である。たとえば1994年、ミッテラン元大統領が愛人との間に生まれた娘と過ごす姿をゴシップ誌に撮られた時も、叩かれたのはプライバシーを侵害したゴシップ誌のほうだった。隠し子がいるのかと記者に問われたミッテランは、こんな名言を残している。

「Et alors?(で、それがなにか?)」

フランスでも不倫は不倫、だが……

もちろん、「愛の国フランスでは不倫は当然!」などと言ってしまうのは勘違いである。フランスの現行法でも、不倫は不倫した側を有責とする離婚の事由になりうる。また、不倫そのものを犯罪として処罰する法律は、日本では1947年に廃止されたのに対し、フランスでは1975年まで残っていた。

不倫そのものの是非はともあれ、不倫に対する社会の反応には、フランスから学べるものがありそうだ。日本で加熱する不倫報道やSNS上での叩き行為が、不倫された側や罪もない子どもまでもを傷つけてはいないだろうか。不倫した人物の性別により、あからさまに扱いを変えるようなことはしていないだろうか。

公私分離と、男性より女性のほうに清純さを求める風潮からの脱却。こうした変化が、2016年の不倫報道を経て期待できるならば、フランスのメディアの言うとおり「当たり年」と呼んでもいいのかもしれない。

牧村朝子

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