「離婚は心の整理が9割、法律が1割」と言い切る弁護士、原口未緒(はらぐち・みお)さん。カウンセリングやコーチングの要素を取り入れた独自の相談方法で、ドロ沼離婚を次々と着地させてきた人気女性弁護士です。ウートピで実施した「覆面離婚相談」に今回応募してくださったのは、公務員のサラさん(35)。

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33歳の時に、当時中学校教師だった男性と半年ほどの交際を経て結婚。結婚後、夫は教職を辞めてサラさんの両親が経営する会社に入社するも、両親と衝突して1年もたたないうちに退職。サラさんは里帰り出産を機に夫と同居していたアパートを出て、夫婦は別居状態に。現在は生後半年の娘と実家に同居。離婚調停中

モメているのは本当にお金のこと?

原口未緒先生(以下、原口):サラさんは、どうして離婚したいと考えるようになったんですか?

サラさん(以下、サラ):一番の理由は、夫が両親の経営する会社に入社したのにもかかわらず、私の親にひどいことを言って傷つけて一方的に辞めたことですね。毎日のように親の悪口ばかり言っている夫に耐えられなくなったんです。

子どもにも全然関心を持ってくれないし、子どもが生まれる前に一度、私に暴力をふるったことも、離婚を考えるきっかけになりました。

原口:里帰り出産されてからはずっと別居ですよね? その間、話し合いはされましたか?

サラ:はい。双方の両親を交えて話し合いました。でも夫が、「サラの親が、サラを洗脳して離婚させようとしている」と言い張って、話になりませんでした。それで、弁護士を通して離婚調停を申し立てることにしたんです。

原口:離婚調停の争点は何ですか? 親権ではないですよね?

サラ:はい、出産後も1回しか娘に会いに来てくれなかったくらいですから、子どもには全然興味ないんです。争っているのは、財産分与と養育費です。私の方が収入が多いので……。もともとお金に汚い人だったので、1円でも多く私の財産を取ってやろうと考えているんだと思います。

離婚話が出る前は、夫も子どもの教育について「こんなふうにお金を使おうね」と話をしていたのに、いざ生まれたら子どもにも会いに来てくれないし、どうして養育費まで値切ってくるんだろう、と……。

原口:サラさんのお話を聞いていると、お金の問題だけではなく、お子さんに関心を持ってくれないことが気になっているように聞こえるんですが、もし、ご主人が結婚生活を続けることに積極的になったら、やり直してもいいと考えていますか?

サラ:それはないです。

原口:じゃあ、子どもに会いにこないのは、むしろ都合がいいはずですよね。「子どもに絶対会わせたくない」という人も多いのに、サラさん、珍しいなと思って。

サラ:確かに、別居中、夫の様子を伺っていたところがあったと思います。私も親も、いろんなイヤなことをされてきたけど「悪かった」と、ひと言あれば、すべて水に流すつもりでいたんですね。たとえば、子どもに会いにきて愛情を示してくれたら、離婚しなくてもいいと思ったかもしれません……。

両親への罪悪感が、離婚をこじらせる要因に

原口:ご主人とうまくいかなくなったのはいつぐらいからですか? 結婚前はうまくいっていた?

サラ:私にはとても優しい人だったんです。料理が得意でよく家のこともやってくれましたし。でも、いま考えると、確かにちょっと変だなと思うときもありました。「サラ以外はみんな敵でもいい」と言ったり、怒ると急に人が変わったりするところもありました。

親はそんな雰囲気に気づいていて、結婚前から「あの人、変だよ」って反対していたんですよね。それを押し切って結婚したので、できるだけ彼のイヤな面を見て見ないふりをしてきたところもあります。

原口:もう一度お伺いしたいのですが、サラさんが離婚を決意した一番の理由って何でしたか?

サラ:両親を罵倒したことです。

原口:それって、自分のことじゃないですよね?  先ほどからお伺いしていると、親御さんについての発言が多いなと感じるんですが。

サラ:私も今、指摘されてハッとしました。確かに「本当に別れていいんだろうか」と、悩んでいたこともあるんです。でも、まわりは「明らかに危ない男だから、いますぐにでも離れなさい」って。

原口:ほら、そこでも「まわりの人」が出てきますよね。多分、サラさんは、周囲の期待に応えようとする性格なんだと思います。離婚を勧められても「私の人生なんだから、放っておいてよ」って言えればいいんですけれど。

サラ:確かに、昔はそう反抗していたかもしれないです。ただ、今回は母が疑問視している人と結婚したので、言いにくいな……と。

原口:サラさんの気持ちの中に、「お母さんの反対を押しきって結婚したのに、結局、迷惑をかけて悪いな」という罪悪感があるんですよね。

サラ:確かに、そう思うところがあります。

原口:あと厄介なのは、サラさん自身がまだ、ご主人に未練があるんじゃないですか? いいところもあったし、優しいところもあったしって。

サラ:それは、家族にも突っ込まれました。ただ、みんなが口をそろえて言うのは、「目を覚ましなさい」と。

自分のために時間を使うと、調停もうまくいく

原口:サラさん、今は、周囲に振り回されるばかりで、まだご主人と別れたいとはっきり思えてないんでしょうね。そうなると、離婚はこじれやすくなります。私の本でも「離婚は、気持ちの整理が9割」と書きましたが、腹が決まってないうちに、周囲に流されて離婚を進めると、大抵うまくいかないんですよ。

サラ:自分としては整理がついていたつもりだったんですけれど、やっぱり気持ちにケリをつけられていないんですね、私。

原口:サラさんの発言には、ご主人に「〜してほしい」という言葉がよく出てきます。それはご主人に対して気持ちが残っている証拠です。だから財産分与に関しても納得がいかないし、子どもに会いに来ないことも悔しいと思ってしまうんです。

サラ:その通りだと思います。私、これからどうしていけばいいですか?

原口:腹が決まるまで待つしかないですね。今は焦らず「自分のため」に時間を使って過ごすのがいいですよ。何かやりたいことはないですか?

サラ:妊娠であきらめてしまった資格の取得をしたいと思っています。保育園に預けるまで1年あるので、その間に……。

原口:そうですね。復職する1年後までにやれることをやりましょう。そうすれば、なかなか進まない調停にイライラすることもなくなります。自分の将来のために時間を使っていると「ま、いいや、こんな男に時間を費やすのはもったいない」と思えるようになります。そうすれば、調停もスッとまとまるものです。

サラ:わかりました。これから自分のことに時間を使うように考えてみます。

原口未緒(はらぐち・みお)
弁護士。1975年東京都生まれ。98年学習院大学法学部卒業、2003年弁護士登録。都内法律事務所にて民事、商事、家事、刑事、倒産処理など多様な案件を扱う。08年、北海道の法律事務所へ赴任。地域唯一の弁護士として主に債務整理案件を担当。10年に独立し、未緒法律事務所を開所。夫婦・離婚案件を主に扱い、相談件数は350を超える。13年より業務にコーチング・カウンセリング・セラピーなどの手法を取り入れ、「心もケアする弁護士」として奮闘中。

佐藤友美

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