父と旅

「父親」とGoogle検索で打つと、その後自動的に出てくるワードは「嫌い」「うざい」「モラハラ」(苦笑)。ちなみに「母親」と打つと、「死ね」「嫌い」「過干渉」「ストレス」……。はぁ、家族って大変……。

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そんな現代日本の家族の例にもれず、私も中学生や高校生の頃は、父親のことを「うざい」と思っていたし(世の娘を持つお父さん、それは宿命です)、今でも格別に仲がいいというわけではありませんが、実は、これまでの人生で一番一緒に旅をしてきた相手は父親かもしれません。

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バイク乗りだった父は、毎年夏休みになると、小学生だった私を後ろに乗せ、日本中あちこち連れて回りました。必要最低限の荷物をバイクに積み、四国一周、北海道一周……。炎天下、一日中ほとんどバイクに乗っていた日もあります。それが2週間から1ヵ月! けっこうハードな旅です。

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今なら素直に感謝できますが、当時はどちらかというと、「しょうがないなあ」という気分(笑)。年頃だったので、「日焼けがイヤ」「ヘルメットで髪の毛がぺっちゃんこになるのがイヤ」と、どうでもいいことを気にしていました。

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そういえば、3歳だった私を無理矢理山へ連れて行ったのも父(と母)です。山の頂上で出逢ったふたりは、私が生まれて歩けるようになると、「待ってました!」とばかりに、すぐ山へ連れだしました。しかもいきなり北アルプスへ。きつくないか?

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わけもわからず連れて行かれた私は、半べそをかきながらもお菓子につられ、「偉いわねえ」と行き交う大人たちにおだてられ、なんとか登ったそうですが、その後はもちろん山嫌いに……。

とはいえ、たとえ嫌いになったとしても“経験”というのはやっぱり貴重だと今は思えます。「そういう世界がある」と知っていることは、人生の選択肢が増えることだから。

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子どもの頃に山という世界をのぞき見ていた私は、大学生になってふと、ワンダーフォーゲル部の扉を叩き、一度だけ滝登りに行ったのでした。子どもの頃は楽しくなかったのに、大人になってから行くと楽しいこと! そのあたりから、少しずつ“自然回帰”していき、今ではすっかり山好きに。(写真は上高地)

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子どもの頃はありがたみも何もわからず、半分「めんどくさいな……」と思いながら連れ回されていましたが、結局のところ、それでいいのかもしれません。二度と戻らない子ども時代。父がくれた最大のプレゼントは“経験”だったのでしょう。

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宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。編集者、ライター。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽雑誌、女性誌、週刊誌、カメラ雑誌などで働く。朝日新聞デジタルで「島めぐり」「ワインのおはなし」「花のない花屋」などを連載中。ラテン音楽とワインが好きなエピキュリアン。