女性受刑者を更生させる保護施設とは

平成25年版の「犯罪白書」(法務省)によると、女性の受刑者は平成24年に2,225人、20年前の約2.4倍に増加しています。そのうち約8割が窃盗と覚せい剤取締法違反で占められています。特に覚せい剤は再犯率が高く、出所後の処遇について課題も多いのが実情です。

彼女たちのなかには、刑務所を出たあとに身元の引受人がいないケースも少なくありません。そんな人たちに一定期間居住場所を与えて、更生を手助けする「更生保護施設」が存在します。国からの委託費で運営する同施設は、全国に104か所あり、そのうち女性が入れる施設が14か所、女性のみを受け入れる施設は7か所となっています。

今回は東京都にある女性専用の更生保護施設の理事長をはじめ、職員の皆さんに入居した女性たちの現実についてお話を伺いました。

不遇な環境が犯罪の引き金に

理事長の小畑輝海さん

理事長の小畑輝海さん

――更生保護施設に入居されるのはどのような人でしょうか?

理事長の小畑輝海さん(以下、小畑):平均4か月、最大20名が入居していますが、そのうち約4割が覚せい剤関連、次いで窃盗や詐欺などで刑期を終えた人や仮釈放中の人です。家族のもとで、社会復帰を目指すのが通例ですが、家族から見放されてしまったり、そもそも事情があって家族がいない人もいます。

保護司の三浦芳美さん(以下、三浦):入居者全体に言えるのは、学力が低い、根気がない、協調性に欠ける面があるということですね。服役前は働いていない人が多いので、言葉遣いやコミュニケーション能力も低いです。そこを粘り強く繰り返し指導していくのが我々の仕事です。

――覚せい剤をはじめ、犯罪に手を染めてしまう女性に共通していることはありますか?

小畑:ひとつには育ってきた環境のハンデがありますね。厳しい家庭環境から、情操が育つ文化的な教育を受ける機会が少なく、親からの愛情を十分に受けられなかった者が多いと思います。また、なかには虐待を受けてきたという人もいますが、女性は男性に比べてダメージを受けやすく、精神的な弱さが依存を高めるように感じます。それが薬物依存につながっていることも多いのではと思います。

――薬物に手を染めてしまうきっかけはなんでしょうか。

小畑:交際相手や婚姻関係にある男性が原因のケースがほとんどですね。普通であれば誘われても断るところを、男性に依存してしまう弱さや相手に去られて孤独になってしまうことへの不安や恐怖が根底にあるのだと思います。そこを乗り越えられない力の弱さは、やはり育ってきた過程での愛情不足等が大きく関連していると考えています。

人間性の回復が更生をより確かなものにする

――こちらの施設では人間性の回復にも力を入れていらっしゃいますね。

小畑:同じ更生保護施設のなかには、入居者の自主性に任せるというところもありますが、そもそも自主的に正しい行動をとることができれば刑務所には入りません。もちろん住居と就労は自立のために必要条件ですが、社会生活を普通に送るためには精神的な強さを身につけなければ再犯にもつながってしまいます。また、別の見方から言うと、刑務所に一人服役させると年間300万円のコストが掛かると言われています。もちろん、税金から捻出されていますが、それよりも社会の中で再犯を防ぐことに力を入れ、国に税金を納める立場になってもらいたいと思います。そのためには、生活指導や就労支援と並んで、心のケアを通した人間性の回復が必要だと思っています。

――「人間性の回復」とは具体的にはどのようなことでしょうか?

小畑:まずは挨拶、自分の周りをきれいにするなどの普通の社会人としての社会常識を身につけることですね。いま入居してくる人の平均年齢は40歳と年々上がっていますが、大人を再教育するのは簡単ではありません。ですが、やはり人の力は大きいと思っています。職員は駄目なところは徹底して叱り、ともに泣き、全身全霊で指導にあたっています。また、民間ボランティアの人に協力してもらい、話し方教室やパソコン教室など20種類近くの教養指導を実施しています。内容もさることながら、皆さん人間力が高い人ばかりですので、入居者にはそういう人とより多く触れ合ってほしいと思っています。

働くことを通して自分の居場所を見つける

保護司の三浦芳美さん

保護司の三浦芳美さん

――入居者が就業する職種の多くはホテルのベッドメイキングや調理補助、清掃業務などですが、彼女たちは働くことに対して前向きに捉えられるのでしょうか。

三浦:入居者のなかには以前風俗で1か月に数百万稼いだと言う人もいましたが、「それでどうなった?」と聞くと「むなしさしか残らない」と言います。お金は稼げても仕事に対して嫌な思いや辛さが根底にあるので、結局、癒やしのためにホストクラブに足を運んだり、薬物に走ってお金を使うという悪循環に陥ります。精神的には非常にしんどい思いをしているのですね。一方で肉体的にきつくても、しっかり働くことで周りにも認められ居場所を見つけることができます。健全に働くという一歩を踏み出すことが、生きていく活力に繋がるのです。

再起のチャンスを与え続ける場所

全国にある更生施設に入るためには、出所前に職員が赴いて必ず面談を行います。取材した施設の場合は、健康で働ける人には、就労し再出発のための貯金をするように話し合います。そうした面談を経て入居が許可され、空きがあれば入れるそうです。東京の施設は働き口も多いこともあって希望者は多いとのこと。

また、同施設では平均4か月の入居期間に、自立のために30~50万円を貯金することを目標にしています。なかには、その貯金をもとに美容学校に通いネイリストになったり、会社の名刺を持ち社員として活躍する人もいるそうです。

共同生活を通して身に着けた社会性や規律は、社会復帰を果たした彼女たちを支えています。ちなみに取材中にすれ違った入居者の方は皆さんとても礼儀正しく、また施設内は掃除が行き届いていてホコリひとつ落ちていませんでした。

とはいえ、施設を出たあとに再び罪を犯してしまう人も少なくありません。そうした人に対して、決して拒むことなく何度でも再起のチャンスを与え続ける場所として門を開いています。

末吉陽子