女性が働く上で、産休や育休、復帰後の働きやすさは、避けて通れないテーマです。女性も男性も心地よく働くために、企業はどんな制度を準備して、これらの問題に向き合っているのか。ママライターがレポートします。
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リクルートコミュニケーションズは、2016年4月から男性の育児休暇を必須化しました。出産から子どもが満1歳になるまでの間に最低5日の育休を取ることが必須になり、最大で20日の育休を取得できるようになったとのこと。

「イクメン」という言葉も社会に定着して、芸能人や政治家が「育休を取ります」と宣言してメディアを賑わせたことは記憶に新しいところです。しかし、実際に育休を取得する男性会社員は依然として少数派。「前例がない」「出世やボーナスの査定にひびく」といった理由から、取得に踏み切れない男性も少なくないようです。

こうしたなかついに育休必須化に舵をきったリクルートコミュニケーションズの狙いとは? 制度の立役者である、経営企画室執行役員 兼 ダイバーシティ推進部部長、菊地明重(きくち・あきえ)さんと、人事・内部統制部人事企画グループの新垣京子(あらかき・きょうこ)さんにお話を伺いました。

有休を利用した「隠れ育休」の存在

―なぜ、男性の育休を必須化したのですか?

菊地明重さん(以下、菊地):今の世の中では、男性の育休取得はまだ“当たり前”ではありません。やはり本音の部分では、どうしても「まわりに迷惑をかけるのではないか」「上司に言いにくい」と感じて言い出せないという声があります。

でも、ある調査によると、「育児に積極的に関わりたい」という男性はたくさんいるんです。そういう男性はこれまで、有休を利用して「隠れ育休」としている方もいらっしゃいます。

一方、女性は普通に育児休業を取るので、このままでは育休をめぐって男女の差が広がってしまうのではないか、相互理解のさまたげになってしまうのではないか、と危惧していました。そうした問題を解決するためにも、男性の育休を会社が後押ししなくては、と。最終ゴールは、男性の育休取得が「ごく普通のこと」になる世の中にしていくことですね。

――必須化したあと、育児休暇を取得した男性従業員の感想は?

新垣京子(以下、新垣):12名が取得しました。取得者からは「非常によかった」「1日単位で取得できるので利用しやすい」という声がありました。子どもが1歳になるまで、1日単位でフレキシブルに取得できることも支持されています。

――制度が導入されてから、社内の雰囲気に変化はありましたか?

菊地:男性従業員が上司に妻の妊娠を報告した時に、「じゃあ、休みはいつにする?」と訊かれるようになってきました。社内で「君も、もうすぐ育休だね」というような会話が交わされるようになってきました。

ただのリフレッシュ休暇になったりしない?

――子育て世代以外の世代から、反発はありませんでしたか?

新垣:もともと有休を利用した「隠れ育休」を取っていた人がいたので、社内の反発はありませんでした。「たった5日で何がわかるの?」「わざわざ必須化しないと休めないの?」といったネガティブな反応があるかもしれない……という心配していましたが、実際にはありませんでしたね。

――確かに、女性からは「たった5日だけ?」という声もあるかもしれませんね。

菊地:制度的には、男性も育児休業を1年間取得することが可能です。ですが、5日の必須化でも騒がれる今の状況では、さすがに1年は難しいでしょう。まずはこの必須化で男性の育休取得を難しくしている「壁」がなくなればと。そのうえで、5日だけにするか、マックス20日にするのか、思い切って1年にするか、従業員一人ひとりが徐々に考えられるようになればいいと思います。

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右:菊地明重さん、左:新垣京子さん

――悲しい話ですが「ダンナが家にいても役に立たない!」という辛辣なママの意見を耳にすることも。奥さんたちの反応はどうですか?

菊地:確かに、家に第2の赤ちゃんが増えても困りますよね(笑)。親に頼れない状況なら出産直後に休んだり、奥さんが仕事復帰するならそのタイミングで休んだり、家庭によってそれぞれ取得のベストタイミングがあると思うんです。父親が本当に育児に貢献できるよう、今ちょうど「上手な育休の過ごし方」という冊子を検討中です。

必須化された5日間が、みんなにとって「気づきのチャンス」なればいいですね。男性の意識が変わることで、物事が奥さんにとっても、お子さんにとっても、ひいては会社にとってもいい方向に回り始めれば、と。それが目標です。時間はかかるかもしれませんが、奥さんにはできれば温かい目で見守っていただきたいです(笑)。

対立構造を生まない施策にしたい

――男性の育休必須化は、会社としてはどんなメリットがあるのでしょう?

菊地:弊社は、いかに従業員の満足度を高められるかという点を大事にしています。「ダイバーシティ」というと、日本ではどうしてもワーキングマザーや女性管理職をターゲットとした「女性のための施策」が中心になってしまう傾向があります。

でも、女性にばかり手厚い制度を整えても、むしろ格差ができて対立構造を生むだけです。そうではなくて、すべての社員従業員の満足度を高めて、足りないところはカバーし合い、多様な働き方を認め合って、それぞれのいいところを活かしていきたい。そういう風土ができれば会社にとっては大きなメリットです。男性の育休必須化はその一環として考えています。

取材を終えて

育児以外にも、介護や病気などでフルで働けなくなる可能性は、誰にでもあります。リクルートコミュニケーションズでは、「働き方改革」を推し進め、リモートワークの検討も進めています。

何らか理由で“負担”を抱えている人が働こうとする場合、オフィスに縛りつけられないことは大きな意味を持ちます。男女関係なく、従業員みんなの満足度を上げることでパフォーマンスをよくしていくリクルートコミュニケーションズの改革に、今後も期待したいと思いました。

中村杏子/合同会社まちとこ

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