ストレスは、これといった大きな原因があるよりも、むしろ“チリつも”という人も少なくないだろう。だとしたら、日常で感じる些細なイライラがなくなれば、ストレスはぐっと小さくなるはず。心を安定させる方法のひとつに、怒りを自分でコントロールする「アンガーマネジメント」がある。

今回は、アンガーマネジメントの専門家である須田愛子(すだ・あいこ)さんに、性格、年齢、性別、職業を問わず、誰でもトレーニングすることで身に付けられるテクニックを聞いた。

「なんで怒ってたんだっけ?」を失くすアンガーログ

「怒りのコントロール=アンガーマネジメント」といっても、「まったく怒らない人」を目指すわけではない。重要なのは、怒る必要のあること/怒る必要のないことの基準を自分の中にしっかり持つこと。その区別ができていないから、私たちは「あんなこと、言わなきゃよかった」と後悔したり、本当は怒らなければいけない場面で黙ってしまったりして、心の中にモヤモヤを抱えてしまう。

具体的に何をすればいいのか。須田さんは「まずは怒ったことを記録してみましょう」という。

「いつ、どこで、何に怒りを覚えたか、その時どんなふうに感じたかを簡潔に記録していきます。分析する必要はありません。あくまでも事実として書き残すだけ。これを、アンガーログといいます。アンガーマネジメントの中心的なテクニックのひとつですね」

激怒していても少し時間が経つと、怒りの気持ちは残っているのに、なぜ怒っていたかを覚えていないことは少なくない。怒ったことを忘れてしまうと、その対処法が見えなくなるので、このアンガーログで記録するのだ。

「アンガーログができるようになったら、自分の怒りの度合いを10段階で数値化します。0をまったく怒ってない普通の状態、10を人生最大の怒りとした場合、だいたいの怒りは1から9の間に収まります。軽くイラっとしたら1〜3、まあまあ腹が立ったら4〜6、すごく頭にきたら7〜9といった感じです。

続けていると自分の中に大まかな目安ができてくると思うので、アンガーログと一緒に記録していきます。書き残すうちに、“すごく怒ったけど、よくよく考えてみるとたいしたことではなかった”という場合があることが見えてきます。怒りを全部一緒くたに考えるのではなく、例えば1〜3くらいなら“本当に必要がある怒りなのか?”と反省してみます。どの一線を超えたら本当に怒る必要があるのか、基準を自分の中に作っていきましょう」

アンガーログをつけることで、自分がどういうことで怒りやすいのか、どんな時間帯や場面で怒りやすいかが見えてくる。

怒りの裏には「べき」が隠れている

アンガーログが習慣になり、自分にとっての怒りの基準がある程度つかめてきたら、次のステップへ。ここで取り組みたいのは、私たちを怒らせる、「べき」の存在を解き明かすこと。
 
「“こうあるべき”“○○するべき”という言葉は、私たちの希望や願望、欲求を表すもの。自分が怒った事柄の裏側にはどんな“べき”があるのか、それを探り、書き出していきます。アンガーマネジメントでは、これを“べきログ”と呼んでいます。

人にはそれぞれ自分の中に“べき”があって、許せるものと許せないものがあります。ただ、気分によって、あるときは怒ったり、あるときは全然イライラしなかったりする。気分に左右されずに、許せるものと許せないものの基準、これを安定させることが重要です。例えば、一度“遅刻は5分を過ぎるまで怒らない”と決めたら、もう今後は怒らない。けれど、5分を超えたらそれは許せないと伝えましょう」

自分が許せないのは何なのか、日頃から周囲の人たち伝えることも大事だと須田さんはいう。

「“何年も一緒に仕事をしているんだから、こんなこと言わなくてもわかるでしょ?”と思いがちですが、相手は意外と知らない。日頃から伝えることで、まわりの人もそれなりに理解してくれるようになります。もちろん、相手にも“べき”はある。チームで仕事をしているなら、みんなで“べきログ”をつけて見せ合うのも、コミュニケーションを円滑にするひとつの手でしょう」

些細なことではイラつかず、怒るべきところではきちんと意思を伝える。その基準を自分の中でしっかりと持てれば、心が安定してくる。まずは、アンガーログをつけることから始めてみては?

■関連リンク
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会

(吉田理栄子)

須田愛子(すだ・あいこ)
外資系証券会社2社にて計25年勤務。退職後、小学校のPTA会長を引き受けるとともに、本格的にアンガーマネジメントの普及に取り組む。定期的に講座を開催する一方、講演や企業等の研修を行う。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントシニアファシリテーター、アンガーマネジメントコンサルタント。
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