石原直子(いしはら・なおこ)さん

若くして大きな裁量を与えられる「プロデューサー」という職種は、これからの女性にとって魅力的な選択肢となるのか? 前編では、その生態を探るべく、サイバーエージェント(以下、CA)現役プロデューサー女子にお話を伺いました。

>>>【前編はコチラ】26歳で12人のチーム責任者、サイバーエージェント現役女性社員に聞く! ”プロデューサー女子”は女性の働き方を変えるか?

後編では、より多角的にこの新しい職種の可能性を模索するべく、リクルートワークス研究所・主任研究員の石原直子氏にお話を伺いました。

企業のニーズに応えようとする現代女性

――現在、一般的な社会人女性は、どんな職種で働きたいと思う人が多いのでしょうか?

石原直子氏(以下、石原):多くの女性は、29歳くらいから結婚や出産を意識して、“ライフワークバランスを保てる仕事”を選ぶ傾向にあります。突然予定外の仕事が降ってこないような業務ですね。

――そうなると、多忙で責任も負うプロデューサーという職種は、あまり人気が無いということなのでしょうか?

石原:そういった傾向があるのは事実ですが、決して人気が無い訳ではありません。「いくつになっても仕事で活躍したい」「ルーティーンワークは嫌い」「世の中に新しいものを生み出したい」と考える女性は少なくありません。

プロデューサーというのは新しいものを生み出す仕事ですので、性別に関わらず企業からのニーズはあります。自分の市場価値を高めるためには、こういった企業側の需要に応えいくことが良い手段で、現代の女性たちは既にそのことに気が付いている人が多いです。これからはこういったポジションの女性は増えていくと考えています。

素養があるのに女性リーダーが増えないワケ

――では、そういったプロデューサー職のような仕事に、女性は向いているのでしょうか?

石原:プロデューサーには、人と人を「つなぐ」というコミュニケーション能力が求められます。そういった能力の高さで言えば、男性に比べて女性の方が向いているという可能性もありますね。

実際、若年期は特に顕著に表れるのですが、男性よりも女性の方が「高いコミュニケーション能力」と、「場の空気を読む力」を持っていると言われています。「単に能力の高さだけで選べば、採用するのは女性だけになる」という企業担当者もいるほどです。

――それなのになぜ実際の企業には女性のリーダー職が少ないのでしょうか?

石原:キャリア初期での活躍は女性の方が勝っているにも関わらず、女性のリーダーが増えない理由は、女性に必ず訪れるライフイベント「結婚・出産・育児」によって、仕事量を減らすことを余儀なくされているからです。

――この環境を変えるために必要なことは何でしょうか?

原田:こうしたキャリアサイクルを見越したうえで、経験や実績を”ゼロリセット”しない人事管理が必要です。「ワーキングマザーには家庭責任があるから」という理由で、それまで任されていた仕事からはずされ、昇格昇進や異動を見送りにされてしまっては、本来評価されるべき能力のある女性も活躍できるはずがありません。今の日本企業のように、30代後半まで絶え間なく走り続けている男性だけが評価されやすい人事制度では、女性のリーダーは増えないと思います。

――そのように変わっていくために、まず企業がするべきことは何でしょうか?

原田:まずは「働いた時間ではなく、成果で人を評価する」ことです。そのためには、能力を見極める力のあるマネジャーを育てる、または現マネジャーがそうした能力開発に力を注ぐ必要があるのではと考えています。

近年の「プロデューサー女子」ブームの背景

――近年、女性をプロデューサーに起用する企業が増えてきた理由はどこにあるのでしょうか?

石原:ベンチャー企業の存在が大きいでしょうね。特にIT系は、プロジェクトをたくさん生み出してどんどんトライしていくという性質があるので、プロジェクトごとにプロデューサーが必要とされます。

――「女性向け商品の企画・開発が増えているから」という考え方もあると思うのですが?

石原:女性向けプロダクトは昔からあるわけで、女性視点へのニーズは今に始まったことではありません。日本政府は2020年までに指導的地位における女性比率を30%にするという目標を掲げています。そうした政策や、社会からの声を受けて企業側による女性の起用が増えているというのが実態ではないでしょうか。

「プロデューサー女子」は若いうちに経験せよ

――女性がリーダーになるためには、まだまだ環境面での課題が多いということが分かりました。そんな中で、女性はどのようにキャリアを形成していけばいいのでしょうか?

石原:とにかく早い段階でビジネスパーソンとしての実力を身に付けることです。これまで、多くの日本企業で、30代半ばまでは下積み時代で、十数年で一人前になればよいとされてきたのですが、女性は出産というライフイベントが訪れてしまうためにそれでは間に合わないんです。つまり、新卒から5年くらいで一人前になる必要があるわけです。

――5年で一人前ですか……!

石原:そういった意味で、若いうちから裁量を任せてもらえるプロデューサーのような仕事はオススメですね。中でもCAのような企業は、性別にかかわらず、若い人をいち早く成長させてくれるので、女性にとっても市場価値を高めてくれる会社だと思います。ただ、ベンチャー企業の場合、「たくさん働くこと」が“正”であるというような風土や文化が存在している場合も多いため、たとえ結婚・出産後に職場復帰したとしても、ライフバランスを保つことは難しいかもしれません。現段階では、若いうちにベンチャー企業で汎用性の高いリーダースキルを身につけ、結婚・出産後はそのスキルをもって自分の生活サイクルに合う職場を見つける、というのが現実的かもしれませんね。

――産後の女性が働きやすい環境づくりは、また別の問題としてありますよね。

石原:根本的な解決のためにはやはり「長時間労働を厭わず、会社に対して忠誠心を示す人こそが会社の中枢の人材である」と考えるような企業の人材評価の仕組みを変えていかないと。仕組みが変われば女性が伸びる、女性が伸びる会社は男性も成長できる。従業員が成長すれば企業も伸びるのです。女性リーダーをめぐる問題は、日本企業の“大きな宿題“でしょう。

(取材・文=編集部)

石原直子(いしはら・なおこ)さん2

●石原直子(いしはら・なおこ)
慶應義塾大学卒業後、都市銀行、コンサルティング会社を経て2001年7月にリクルートワークス研究所勤務となる。2003年から2007年までリクルート人事部を兼任。近年ではタレントマネジメントの視点から、女性管理職、事業創造人材、高度外国人材などの研究をおこなう。