会社員リリコのポケットに棲みついた「六法全書」の妖精にして辣腕弁護士のエリカちゃん(モデルはアディーレ法律事務所・篠田恵里香先生)が、スパルタ・リーガルレッスンを展開していく本連載。大人の女性として、きちんとした法律の知識に基づいたリスクマネジメント能力を身につけましょう!
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「Facebookで勝手に公開された自分のブス顔写真」SNSを見ていて震え上がる瞬間のひとつです。「大人の女性」または、その予備軍のみなさんに、きちんとした法律の知識に基づいたリスクマネジメント能力を提供する本連載の3回目は、巷を賑わせることも多いSNSトラブルについて。大人の女性としてリーガルマインドをもって、いかにこの問題に対処していけばいいか、アディーレ法律事務所の篠田恵里香(しのだ・えりか)先生の監修のもと解説していきます。

ひょんなことから、デザイン事務所勤務の会社員リリコのポケットに棲みついた「六法全書」の妖精にして辣腕弁護士のエリカちゃん(モデルは篠田先生です)に、みなさんがもっと自由に、もっと幸福に、人生を謳歌するためのスパルタ・リーガルレッスンを展開してもらいましょう。

【ポケット弁護士エリカちゃんシリーズはこちら】


<今回のポイント>
【1】SNSに勝手に自分のブス顔がアップされていた! これって違法?
【2】SNSに写真をアップする時のマナー
【3】気をつけたいSNS&ネットトラブル

〈登場人物〉

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リリコ(32歳)
小さなデザイン会社に勤める中堅デザイナー。基本的に他力本願。趣味はネイル、お酒(ワインと焼酎)、サイゼのお気に入りメニューは「ミラノ風ドリア」。例えれば、だらしない石原さとみ。

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エリカちゃん(永遠の30歳)
「六法全書」の妖精。本名はオピストコエリカウディア・スカルジュンスキィ。辛口で正論をバシバシ言うが、困っている人は放っておけない姉さんキャラ。例えれば、リカちゃん人形サイズの真木よう子。

SNSに勝手に公開された自分のブス顔写真……

う、嘘でしょ……。思わず青くなって会社のトイレに駆け込む。昼休みにFacebookを眺めていたら、泥酔した私が鼻に割り箸を刺して白目を剥いている最強ブス写真が目に飛び込んできた。昨日あった会社の飲み会で、どじょう踊りの話になった時に(今思うとなんでそんな話になったのか本当に謎)調子に乗ってやったやつだった。

私、何してんのよ……。しかも最悪なことに、投稿者はいつも折り合いの悪いナナミ先輩。わざわざアルバムのトップにしてるし、これ絶対いやがらせだ! もう一生トイレから出たくない……。茫然自失で立ち尽くしていると、ジャケットのポケットがもそもそ動いたので慌てて押さえこむ。エリカちゃんだ。お昼寝していたようだったけど、トラブルを嗅ぎつけて起き出したらしい。こんな写真、絶対にエリカちゃんには見られたくない!

エリカちゃんというのはちょっと前から一緒に暮らしているポケットサイズの六法全書の妖精で、何でも神様から派遣されて私の元にやってきたらしい。とんでもない美人なんだけど、とにかくめちゃくちゃ口が悪くて、私が凹まされることもしばしば。でも困ったことがあるとちゃんと法律の知識で助けてくれるし、根はいい人なんだよね。最初は自分がおかしくなったのかと思ったけれど、最近はエリカちゃんとの生活にも慣れて、こういう不思議なこともあるのかな?と思うようになった。

抑える私の手をはねのけて、エリカちゃんがポケットから顔を出した。

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「ちょっと!なんで抑えるのよ!! 何かやましいことがあったわね?」

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「何もない! 何もないから!」

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「携帯ね。ちょっと見せなさい」

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「痛たたっ!わかったからつねらないで!!」

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「……何なの、この強烈なブス顔は? まさかと思うけど、リリちゃん、自分でアップしたの?……やだ、性癖?」

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「そんなわけないでしょ! 会社の先輩が勝手にアップしてたんだよ……。すごくイヤな奴だから絶対わざとだと思う……どうしよう……」

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「じゃ、違法じゃない」

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「へっ!?」

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「リリちゃんでもさすがに聞いたことがあると思うけど、人には肖像権ってものがあるの。自分の顔や姿を勝手に他人に撮影・公開されないってことを認めてるもので、これはあなたがブスだろうがなんだろうが関係ないわ。だから自分の意思に反して自分の顔が不特定多数に公開されてしまったら、それは肖像権の侵害にあたるってわけ」

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「そうなんだ……これって取り下げてもらうことはできないのかな?」

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「そうねぇ、まずは先輩に直接言ってみることね。こういうケースの場合、訴訟をして慰謝料を請求するって言っても取れる金額も少ないし、ましてや相手が会社の人だったりすればその後の職場関係にも響くわよね。だから基本的に話し合いで解決することをオススメするわ。もし相手があまりにも悪質だった場合は、弁護士などの法律の専門家に相談するのも手よ」

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「わかった。気が重いけど、言ってみるよ……」

Facebookに写真を載せる時は気をつけたいSNSマナー

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「ちょっと携帯見せて。ふむふむ。この人、だいぶSNSリテラシーの低い人ね」

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「え? どうして?」

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「ほら、自分の子どもの写真を加工もせずそのままアップしてる。しかもこれなんてすっぽんぽんじゃない!」

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「すっぽんぽんって言ってもまだ赤ちゃんだし、これの何が問題なの? あ、シングルに対する幸せ子どもテロの罪かな? えへへ」

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「何?それ。全然面白くないわ。っていうか、そんなこともわからないなんてあなたの頭も赤ちゃんレベルよ」

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「(しょんぼり)」

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「あのね、自分の子どもがかわいいのはわかるけど、こうやって不特定多数の人に裸の写真を公開してしまえば、それが児童ポルノとしてネット上に流通するリスクがあるわ。しかもこの人、Facebook上の友達が1000人以上いるわね。全員ときちんと信頼関係が築けてればいいけれど、なかなかそうはいかないんじゃないかしら」

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「え〜! 怖いよ〜!!」

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「子どもの顔や名前の情報って、もっと気をつけて取り扱って欲しいわね。最近では犯人が傘に書いてあった名前を見て知り合いを装い、少女を誘拐したっていう事件もあったわ。犯罪に巻き込まれるリスクだって高くなるのよ」

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「……そういえば私もこないだ友達の子どもの写真Facebookに載せちゃった。友達にはいいって言われたけど、大丈夫かな?」

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親御さんの許可があれば、まあ大丈夫でしょう。これは子どもだけでなく、SNS上に誰かの写真をアップする時、気をつけてほしいマナーだけど、まず掲載していいか相手に許可を取ること。そして、確認が取れないようであれば顔が見えないようにモザイクをかけるなどの配慮をすることが大切よ」

話題になったLINE流出

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「なるほど。最近はLINEが流出したなんてトラブルもあったよね」

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「そうね。芸能人はプライバシーが制限されている職種だからちょっと別だけれど、でも基本的にやり取りの内容が私生活上の事実で、一般の人にとって公開してほしくないと思うようなことだったら、許可なく公開すればプライバシーの侵害になるわ。リリちゃん、合コンで会ったムカつく男とのLINEのスクショをネタにして友達に送ってるでしょ」

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「へ!? 何で知ってるの!?」

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「あとで痛い目見るかもしれないんだから、そんなことやめなさいよ。結婚の予定がまったくないリリちゃんには関係ないけど、最近では携帯のデータをネット上でクラウド管理していたことがきっかけで浮気が発覚したりもしてるわ」

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「え? どういうこと?」

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ほら、iCloudとかって写真同期しちゃうじゃない。夫と妻が同じパソコンを使っていると、浮気相手との写真が、相手の携帯に入っちゃうっていう冗談みたいなことが起きたりするのよ。最近は浮気の始まりも発覚もインターネットって話をよく聞くわぁ〜(遠い目)」

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「うわ……エグい……」

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「あと気になっていたんだけど、この前あなたInstagramに雑誌の記事をそのままアップしてたわね。あれもダメよ。当然、著作権違反!」

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「うう……」

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「そんなこともわからないなんて、甘ちゃんなリリちゃんにSNSはまだ早いわね! 今の日本のSNSは、肖像権や著作権の侵害だらけっていうのが現状なの。いきなり警察に逮捕されるとか、裁判を起こされて損害賠償を請求されるとか、そういうことはまだ聞かないけれど、これからもっとトラブルは増えていくでしょうね。自分の身を守りつつ、自分が加害者になってしまわないよう、利用する側がきちんとリテラシーを持つことが何より大切よ」

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「はい……。あっ!!!!」

ふとスマホ画面に表示された時間を見ると昼休みはとっくに終わっていた。や、やばい! 慌ててトイレから飛び出す。エリカちゃんはすでにポケットの中に戻っているようで、もそもそ動いているのが伝わってくる。そういえば、エリカちゃんってポケットの中でいつも何しているんだろう。それに、たまにポケットにいない時があってどうやら出かけているらしいんだけど、どこに行ってるのかわからない。妖精との生活はまだまだ謎が多そうだ。

〈今回のまとめ〉
【1】 SNSに勝手に自分のブス顔がアップされていた! これって違法?
・ブスかどうか関係なく、人には肖像権が認められているの。本人の許可なく顔や姿がはっきりわかる写真を公に公開することは違法に当たる可能性が高いわ!
【2】 SNSに写真をアップする時のマナー
・まず写っている人に掲載の許可を取ること。そしてそれが難しい場合は顔にモザイクをかけるなどの配慮がマスト! 特に子どもの顔や名前の情報をみだりに公開することは犯罪に巻き込まれるリスクが高まるから気をつけて!
【3】 気をつけたいSNS&ネットトラブル
・SNSトラブルは増加する一方。LINEの流出によるプライバシーの侵害や、Instagramでの著作権侵害など、違反は日常に溢れているわ。自分の身を守りつつ、自分が加害者になってしまわないよう、利用する側がきちんとリテラシーを持つことが何より大切よ!

阿部 洋子