全国で初めて成立した渋谷区の「同性パートナーシップ条例」を皮切りに、LGBTに対する動きが広がってきています。2015年、渋谷区と世田谷区が、同性カップルに結婚に相当する関係を認める公的文書の発行を開始。今年に入ってからは、地方でも三重県伊賀市が4月から同様の制度を導入。さらに、兵庫県宝塚市では6月から、沖縄県那覇市でも7月から開始予定となっています。

大手企業が続々と制度をシフト

こうした自治体の動きに呼応するように、企業でもLGBTへの独自の取り組みがみられるようになっています。パナソニックでは今年4月から社内規定を変更し、同性カップルを結婚に相当する関係だと認め、福利厚生の対象としています。日本IBMでも、同性パートナーがいる社員に対し、結婚祝金制度などを設けています。また、レナウンでは、自治体の証明書があれば、結婚休暇を取得できるということです。

朝日新聞社でも6月から

朝日新聞社は今年6月1日から、結婚に関連した福利厚生の対象を同性パートナーにも広げるとしています。同社では以前から、異性の事実婚に対しても結婚に準ずる関係と認め、結婚休暇などの福利厚生を適用してきました。今後は、同性の事実婚に対してもその範囲を広げるということになり、社員から会社に対して同性による結婚(同性パートナーシップ)の届け出があった場合、結婚休暇や結婚祝金の給付を行うとしています。

同性パートナーへの結婚に関する福利厚生制度適用には何がきっかけだったのか、朝日新聞社の広報部、田島幸治(たじま・こうじ)さんにお話を伺いました。

35歳以下の若手社員が中心に

――なぜ、同性パートナーへの結婚に関する規定を改定したのですか?

田島幸治さん(以下、田島):同性パートナーにも結婚休暇や祝金を適用するとした今回の社内規定の変更は、従業員のダイバーシティ(多様性)の拡充や、人権擁護を進める施策の一環なんです。

きっかけは、いくつかの自治体や企業で、性的マイノリティの問題に対応した制度を設ける事例が出ていることを受け、部門横断の若手社員でつくるプロジェクトチーム(U35)が会社に提案したことです。

U(アンダー)35とは、主に35歳以下の若手社員で構成されたプロジェクトチームで、結成は今年1月。デジタル媒体「withnews」でのコンテンツ発信や本紙「ココハツ」面の編集などを手がけ、また、社内外でも学生や若者と一緒にイベントを開催しています。

社会で取り上げられているLGBT問題を自社に引き寄せて議論した結果、今回の制度改定など、可能なところから取り組んでいこうという結論になりました。

「社会に対するメッセージにもなる」

――同性パートナーへの結婚制度拡充は比較的若い世代からの発案なんですね。他の世代の社員からはどのような反応があったのでしょうか?

田島:明確な賛同は多くはありませんが、やや驚きつつも、おおむね好意的に受け止めているようです。公認ツイッターアカウントを持っている弊社の記者の多くが、発表当日に賛同のコメントをツイートしました。

また、社員からは「同性パートナーの問題について、紙面で取り上げるだけでなく、社内から変わってほしいと前々から提案していた。正直なところ、変わるのはまだ先かなと半ばあきらめていましたが、今回U35発で実現したとのこと。とてもうれしく思います。これから記者になろうと考えている若い世代や読者に対してよいメッセージになったと思います」という感想も寄せられました。

東京五輪に向けてさらなる変化を期待

会社や組織でダイバーシティが重要視される傾向が強まり、LGBTに対する考え方にも大きな変化が生まれています。2020年に開催される東京五輪では、五輪憲章に「性的指向による差別禁止」が盛り込まれ、国際社会の間でもLGBTへの関心が高まっているのを感じます。

日本の法律では同性婚は認められていませんが、企業や自治体が率先してLGBTの問題に取り組むことで、今後、国の結婚制度に大きな変革をもたらす可能性もあるかもしれません。

内野チエ