恵泉女学園大学・大日向雅美学長インタビュー

HKTの歌詞問題で女子大生が考えたこと

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HKTの歌詞問題で女子大生が考えたこと

女の子は可愛くなきゃね 学生時代はおバカでいい

テストの点以上瞳の大きさが気になる どんなに勉強できても愛されなきゃ意味がない スカートをひらひらとさせてグリーのように

世の中のジョーシキ 何も知らなくても メイク上手ならいい ニュースなんか興味ないし たいていのこと誰かに助けてもらえばいい

ネットを中心に批判が集中し炎上したHKT48新曲「アインシュタインよりディアナ・アグロン」の歌詞。これを受け、恵泉女学園大学・大日向雅美(おおひなた・まさみ)学長がブログをアップしました。そこに描かれているのは、女子大生たちの等身大の“解放宣言”でした。

大日向雅美学長ブログ「女の子はアインシュタインなんか知らなくていい?」

100年前のノルウェーの教科書みたい

きっかけは、ひとりの学生にスマホ画面で歌詞を見せられたことでした。歌詞を見た大日向学長の率直な感想は、「目が点になりそう」。

「ノルウェーの教科書に、女の子は男の子に比べて能力が劣っているからという理由で、教科書に“女の子は解かなくてよい”というマークがつけられていたことを思い出してしまいました。でも、それは100年余り前の教科書の話です。まさか現代でこんなことが言われるなんて」

大日向学長はさっそく担当している「心理女性学」の授業で、学生たちとこの歌詞についての議論を始めました。

「差別」というより「感覚が違う」

「同世代のHKTさんが歌っていますが、どう思いますか?」と素朴に疑問を投げかけ、グループディスカッションがスタート。大日向学長によると、そこで出された意見はちょっと意外なものだったそうです。

「“差別”という言葉を使う学生はほとんどいませんでした。学生たちから自然に出てきたのは、『この歌詞、私たちと感覚が違う!』といった意見。私たちのような年配者や、女性活動をしてきた者からすると、“差別”や“蔑視”が出てこないことがすごく新鮮でした。『私たちとは違うよね』『私たちの気持ちにはない感情だよね』、そういう言葉が多かったのです」

最終的に講義では、学生たちは反論を込めた替え歌を作りました。

<元の歌詞>
難しいことは何も考えない
頭からっぽでいい
二足歩行が楽だし
ふわり軽く
風船みたいに生きたいんだ

<恵泉女学園大学の学生の歌詞>
難しいこと いっぱい学ぼう
自分の頭で考えよう
地に足つけて
まっすぐ前向いて歩こう

<元の歌詞>
世の中のジョーシキ 何も知らなくても
メイク上手ならいい
ニュースなんか興味ないし
たいていのこと
誰かに助けてもらえばいい
女の子は
恋が仕事よ
ママになるまで
子供でいい
(中略)
アインシュタインって
どんな人だっけ?
聞いたことあるけど
本当はよく知らない
教科書 載っていたような
なんか偉い人だった
好きなのはディアナ・アグロン

<恵泉女学園大学の学生の歌詞>
メイク練習しつつ ニュースも見よう
みんなで助け合おう
女の子は恋も仕事もして
楽しく 自由に
アインシュタインにもなりたいし
ディアナ・アグロンにもなりたいし
もっともっと輝きたい
だってだって 可愛くなりたいもの〉

“お嫁さん候補大学”にしては意外な反応?

一方、学長のブログを読んだ読者から、こんな声も聞こえてきました。

「お嫁さん候補大学のイメージが強い恵泉の学生がこんなことを考えているなんて、びっくりした」

“高偏差値をウリにしていない女子大=お嫁さん候補”の女子大生が、女性問題に意識を向けることができるなんて。そんな世間の声に対して大日向学長は、

「たしかにうちの大学は、お嬢様大学でお嫁さん候補の女子大という見方をされることもあるかと思います。それもいいでしょう。私は人生で素敵なパートナーに巡り会うことも、女性として生まれてきた学生たちに願っていることではあります。でも、今の社会で“可愛いお嫁さん”でいるだけじゃ困るでしょう? 男性に頼りきりでは生きていけません。

パートナーとしっかりと向き合って、支え、支えられ、人生をわかちあう仲間、つまり人生の同志を見つけてもらいたい。そう願っています。

恵泉女学園大学は、仕事でも家庭でもそして地域でも、いろいろな場で活躍できる女性の育成をめざして、それを“生涯就業力を磨く”という言葉で表しています。

女性の人生は単線ではありません。子育てや介護で人生設計を変えるなど、実にいろいろな転機があります。それでも目標を見失わず、どんな状況にあっても、自分を磨き続けてほしいんです。これは恵泉女学園の創立者河井道の教育理念で、90年余り一貫して言ってきたものです」

「一人でがむしゃらに頑張る」とは違う自立を

「自立して、世界に心を開いた女性であってほしい。その自立は決して、孤独な自立ではなく共生を元にした自立です。人を押しのけて自分一人がむしゃらに頑張るのではなく、人生のパートナーと分かちあいながら、両方の親を大切にしたり、地域の人と助けあったり、そういう力も必要でしょう?」

このような教育精神のもと育てられたから、同大学の学生たちは、言葉を荒げることなく歌詞に対して柔軟に向き合うことができたのでしょうか。

さて、大日向学長は今回の講義で学生たちから得た言葉を、こう表しました。

「〈現代女子学生の軽やかな解放宣言〉。頭ごなしに“差別”“蔑視”といきり立つだけが、女性の主張ではない。女子大学生たちのウィットに富んだ“前時代的価値観との決別”は、次世代の女性の生き方の礎になるでしょう」

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