サイバーエージェント野口さん2

IT業界を始めとするベンチャー企業などでは、若い女性をリーダーに起用する企業が増えつつあります。数々のヒットサービスを運営するサイバーエージェントは、その代表企業のひとつ。同社では、若くて優秀な女性がプロジェクトのリーダーとして抜擢され、 “プロデューサー”という職種で活躍しています。「プロデューサー女子」は、新しい職業のロールモデルとなり得るのか? 同社にて『手作り料理でつながるコミュニティ ペコリ』のプロデューサーを務める、野口さくらさんにお話を伺いました。

組織内でのプロデューサーの立ち位置って?

――現在、野口さんは「プロデューサー」という職種ですが、社内組織ではどういう立ち位置にあたるのでしょうか?

野口さくらさん(以下、野口):弊社の場合、「Ameba」サービスにおいて藤田(同社社長)が総合プロデューサーとして一番上の位置づけなのですが、この下に大きく分けるとゲーム事業部とコミュニティ事業部、ブログ事業部などがあり、私のチームはコミュニティー事業部に属しています。コミュニティ事業部には数十ものサービスがあるのですが、事業部長以下のプロデューサーたちは一律フラットな関係ですね。

――ということは、事業部長を介してすぐ上がもう社長ということなんですね。藤田社長と直接話す機会はあるのでしょうか?

野口:はい。藤田とは月2回の打ち合わせを行っています。「こういう機能をリリースしたい」とか「こういうプロモーションをしたい」などを報告をしつつ、一つ一つの企画がより良くなるように、アドバイスを貰いながら企画の精度を上げていきます。

チームメンバーとの関係性は?

――野口さんは、いま何人のチームメンバーを持たれているのですか?

野口:私の部署は全部で12人で、内訳としては、アシスタントプロデューサーが1名、デザイナーが2名、その他はすべてエンジニアです。

――26歳にして、12人のメンバーを見ているなんてすごいですね! プロデューサーとして、会社の人事採用や評価にも携わるんでしょうか?

野口:現在、採用は人事にお任せしていて、人事評価も私のほうではやっていません。プロデューサーといっても、チームのボスであるとは私自身は思っていなくて。このあたりも社内のチームによってまちまちなんですが、私としては、上司部下の関係ではなく、各々役割が違うだけだと認識しています。最終的な責任はプロデューサーにあるので、メンバーたちに「上司は誰か?」と聞いたら、私だと言うかもしれないですが。

――でも、やっぱり遅刻などをしたらリーダーとして叱るんですよね?

野口:それぞれ事情がある場合も多いので、時と場合によります。ただ、気になることを率直に伝える関係が理想だと思っているので、必要に応じてコミュニケーションをします。みんなが同じ目標・目的で前に進んでいるので、メンバーもわかってくれています。そういう意味では、「フラットだけれども意見はしっかり言う」という、ゆるやかな指示系統が存在しているかもしれませんね。その関係性を保つために、時折「もっと良くなる会議」というチームとしてどう効率を上げるかを考える時間を設けています。私に対して変に萎縮したり遠慮したりしてしまわないよう、そこは気を遣っていますね。

――一番時間を使っている業務はチームメンバーのマネージメントですか?

野口:いいえ。企画している時間が一番長いです。大枠の戦略から細かい機能やアプリの操作性、プロモーションまで考えます。企画と一言でいっても、サービス企画だけでなく、プロモーションにも企画も必要で、それぞれ違う頭を使う感じなので、特に後者には苦戦をしています。

プロデューサーの面白さ、そして苦悩

――仕事の中で一番大変なことってなんですか?

野口:やはり数字が厳しい時ですね……。毎月目標があるので、それを達成できないときは辛いです。チーム全体で尽力した施策が思うような結果を生まなかったときは、「これはやばい」という雰囲気になることもあります。

――そういったピンチは、どのようにして乗り越えているのでしょうか?

野口:これまでサービスを運営している中で、幾度となく困難を味わってきているので、免疫はついています。どんなときでも、光を探して、そこに全員で突き進んでいくしかないですね。

――仕事のやりがいや、楽しさを感じるのはどんな時ですか?

野口:やはり、サービスの反響を実感したときですね。施策が狙い通りの数値に結びつくこともも嬉しいですが、それだけではありません。サービス内でのユーザーのコメントや、コミュニケーション内容を見て、実際にサービスを楽しんでくれているリアルな声が聞けた瞬間に、一番のやりがいを感じます。

――プロデューサーという責任の重い仕事は苦労ばかりなのかと思いましたが、とても楽しそうにお仕事されている印象を受けました。

野口:責任の重い仕事だとは思いますが、何よりも、自分で提案して自分でやりたいと思ったサービスであるからこそ、苦ではないんです。そういう、自分が今一番やりたいことと仕事が紐づいているというのは、とても大事なことだと思います。

プロデューサー女子の“将来”について

――独立や起業は考えているのでしょうか?

野口:今のところ考えていないですね。今は『ペコリ』を良くしたいという気持ちだけです。

――たとえば5年後の将来像について、何かイメージはありますか? たとえば、サイバーエージェントの子会社として「ペコリ株式会社」を設立しているとか……?

野口:「ペコリ株式会社」があったら、もっとこうしなければならない、というのは考えたことはありますが、スピード感の早い業界なので、5年後どうなっているかはわからないというのが率直な気持ちですね。もちろん、5年後に『ペコリ』が「こうなっていたらいいな」というのはあります。

――野口さん個人のキャリアとしては、今後どういったスキルを身につけていきたいとお考えでしょうか?

野口:とにかくヒットサービスをつくれる人材になりたいと考えています。今は『ペコリ』を「みんなが知っている」「みんなが使っている」サービスにしたいと強く思っていて、それは今後自分が目指すべき人材になるための過程として、とても重要だと考えています。

恋愛、結婚、出産……プライベートは?

サイバーエージェント野口さん4

――とてもお忙しそうにお見受けしますが、プライベートの時間は取れているんでしょうか?

野口:メンバーは皆うまいことやっている感じはしますね(笑)。出社は10時で平均退社時間は21時くらいです。私は早いときに19時、20時に会社を出ますし、ときには夜中までというときもあるので、まちまちです。平均は22時くらいかなと思います。

――ぶっちゃけ、社内恋愛は多いですか?

野口:そうですね、確かに社内結婚をしている人も多いです。社内結婚をすることで、会社に対する愛も深まると思うので、会社にとっても良いことなのではないでしょうか。みんなが仕事に一生懸命なので、同じような目標があるとお互いのことを理解しやすいため、恋愛に発展しやすいというのはあるかも知れません。社員の性格的には、藤田(社長)が常日頃から言っている方針なのですが、「素直でいいやつ」が多いんです。

――すばらしい環境でうらやましいです。ちなみに、子供を持つことについてはどう思いますか?

野口:子供は、いつかは欲しいとは思います。弊社は結婚しても子供がいても、みんなバリバリ働いていますし、私も仕事はずっとしていたいです。

――もし旦那さんに「家庭に入ってほしい」と言われたらどうしますか?

野口:今の時代に、そんなことを言う男性も少ないと思うのですが(笑)。正直、今の生活から仕事がなくなることは想像がつかないので、厳しいかもしれませんね。実際、結婚して会社をやめる人の方が少なくて、プロデューサーでも子供を産んで戻ってきている人もいますよ。

メンバーとのコミュニケーションの時間を大切にしたり、委縮しないように配慮するなど、女性プロデューサーだからこそできる心配りが、チームを成功へ導かせるモチベーションになっているように感じました。そしてプロデューサーという職種は、「自分のやりたいこと」と「仕事」を紐づけてくれる、女性の日々の生活をも豊かにしてくれる魅力ある職種なのかもしれません。

後編では、いま企業が女性プロデューサーを求める理由と、今後日本で女性リーダーを増やすための課題などについて、人材の“プロ”であるリクルートワークス研究所の研究員にお話を伺います。

>>>【後編はコチラ】女性は入社5年で一人前にならないとダメ! リクルートワークス研究員が「プロデューサー女子」を薦める理由

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(取材・文=編集部)

●野口さくら
2010年サイバーエージェントに新卒入社。Ameba事業本部に配属後、スマートフォン向けアプリ「フワムー」の立ち上げなどを経て、2012年に手作り料理でつながるコミュニティ「ペコリ」のプロデューサーに就任。