日本初の「卵巣バンク」が誕生  病気を理由に妊娠をあきらめない

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日本初の「卵巣バンク」が誕生  病気を理由に妊娠をあきらめない

「日本初の“卵巣バンク”を今年5月をめどに設立する*」という発表が先月27日、医療法人社団 レディースクリニック京野 理事長の京野廣一(きょうの・こういち)氏から行われました。卵巣バンクとは、病気の治療などで妊娠の可能性が低くなってしまう女性患者から卵巣組織を摘出し、治療終了まで凍結保存しておくシステムです。海外ではすでに利用されていますが、国内では初めての取り組みとなります。

卵巣バンクはどのようなケースで利用され、女性の将来をどのように変えるのでしょうか。記者会見では、発足の意図や、利用者にとってのメリット・デメリットが語られました。

*「社団法人 日本産科婦人科学会」が定める、卵巣組織凍結保存に関するガイドラインが変更を控えているため、その完了を待って始動する予定です(5月19日現在)。

病気の治療で妊娠できなくなる女性のために

日本で卵巣バンクが設立される経緯として京野氏は、がんの罹患者数が年々増えている一方で、がんを克服する患者も増加しているため、治療後のQOL(生活の質)向上が重要課題となっていることを挙げました。

京野廣一氏(以下、京野):20代、30代の若い女性のがん患者にとって一番気がかりなのは妊娠・出産に関わることです。例えば乳がんの場合、抗がん剤治療は閉経を早める可能性があります。また、ホルモン治療は5年から10年は続けるのが普通なので、治療終了後には卵巣機能が低下してしまい、子どもを産めなくなってしまうケースも少なくありません。

仮に32歳から治療を始めたとすると、治療が終わる頃には42歳になっている、というケースも考えられます。そのため、治療が終了する年齢をあらかじめ考慮して、妊娠・出産のために主治医と相談しながらがんの治療期間を調整する人もいます。

京野氏は、「早く病気を治したい」と「子どもを産みたい」という気持ちの間で板挟みになっている女性患者を救う手段として、卵巣バンクの設立を構想したそうです。

37歳以下の患者、思春期前の患者が対象

卵巣バンクの対象となるのは、37歳以下の治療に緊急を要する患者や、思春期前の患者だそう。卵巣組織を凍結保存して治療後や出産適齢期に患者の体内に戻すことで、妊娠の可能性を保ちます。

卵巣バンクの利用は、①病気の治療施設、または内視鏡医のいる専門施設にて卵巣を摘出、②卵巣組織をバンクに搬送し凍結保存、③病気の治療終了後に、卵巣組織をバンクから病院に搬送し体内に移植、という流れをとります。

卵巣バンクなら自然妊娠が可能になる

妊娠の可能性を高める方法としては、以前より体外受精という方法があります。従来の方法に比べて、卵巣凍結はどのような点で優れているのでしょうか?

京野:卵巣バンクの最大のメリットは、卵巣組織を移植するため、自然妊娠が可能だということ。生殖医療には他にも「卵子凍結」と「受精卵凍結」があり、出産事例も多くポピュラーな方法ですが、いずれも体外受精が必須で、成功率は高いとは言えません。「卵巣凍結」の方が妊娠の可能性が高いのです。

レディースクリニック京野で手がけた急性リンパ性白血病患者の卵子凍結の例では、卵子細胞を10個しか採ることができませんでした。妊娠できるチャンスが、その10個に限られてしまうわけです。しかし、卵巣組織ごと保存できれば、その100倍は卵子細胞を採れるでしょう。

メリットとデメリット

京野氏は、患者側だけでなく医師側のメリットにも言及しました。

京野:卵巣バンクは、患者さんの負担だけでなく、医療従事者の負担も減らします。患者さんの側からすれば、摘出の際も移植の際も、卵巣がバンクと病院の間を移動するだけなので、いちいち大病院に行く必要がありません。つまり、地方の方でも地元で治療を受けながら妊娠の可能性を保てるわけです。

また私のような医療従事者にとっては、バンクによって卵巣凍結の技術や長期保存にかかるコストが軽減され、卵巣の摘出・移植のみに専念できます。また、その患者さんの主治医は病気の治療に専念できるようになるでしょう。

とはいえ、卵巣バンクにはデメリットもあります。万が一摘出した卵巣組織にがん細胞が含まれていた場合、体内に戻すことによって、がんが再発してしまう可能性がないとはいえない点です。

すでにネットワークが整備されているドイツ

卵巣バンクのメリットは、海外の事例でも明らかになっています。京野氏に続いて登壇したドイツのマルクス・モンターク博士は、卵巣バンクネットワークを作りあげることが、医療の品質向上につながると話しました。

マルクス・モンターク氏:ドイツでは2006年に卵巣バンクネットワークが整い、ドイツ、オーストリア、スイスなどから100を超えるクリニックが参加しています。各クリニックでは患者の症例に関するデータが集められ、中央のセンターでデータを共有するシステムを作りました。さらに、中央のセンターが各クリニックに対して手術をサポートする仕組みもできています。

2人目が産める可能性もある

最後に、モンターク氏は「移植後も卵巣機能がきちんとはたらくことはわかっているので、2人目を産める可能性も大いにあります」と力強く締めくくりました。

現在、京野アートクリニックでは卵巣凍結および1年間の保存のために、10万円程度の料金設定を考えているとのこと。今はがん患者や思春期前の患者に適用が限られていますが、いずれは子宮内膜症やSLE(全身性エリテマトーデス)の患者などにも広がる可能性はあるといいます。実際に運用がスタートすれば、病気を理由に妊娠をあきらめていた女性にとって希望の光となるかもしれません。

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