女性が働く上で、産休や育休、復帰後の働きやすさは、避けて通れないテーマです。女性も男性も心地よく働くために、企業はどんな制度を準備して、これらの問題に向き合っているのか。ママライターがレポートします。
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女性の育児休業取得率が86.6%であるのに対して、男性の取得率は2.3%と依然低いまま。そんななか、「男性の育休取得率100%」を3年連続で達成しているのが、日本生命保険相互会社です。「社員の約9割が女性。その女性たちがもっと輝いて活躍するためには、男性の同僚や上司が女性の働き方を理解し、意識や風土を変えていく必要があります。男性の育休取得は、そのきっかけになります」と語る人事部・輝き推進室 小林あさひさんに、お話を伺いました。

男性の育児休業取得率、3年連続100%を達成できたワケとは

――2013年に「男性の育児休業取得率100%」を全員目標として打ち出されて3年になりますね。現在の取得率はどれくらいでしょうか?

小林あさひ氏(以下、小林):2013年に「男性育休取得率100%」をやろうと打ち出して、初年度の2013年、2014年、2015年と、3年連続100%を達成しました。社員に子どもができたら「その人は育休を取るんだ」という認識に変わりました。

――2013年度以前の男性の育休取得率はどれくらいでしたか?

小林:それまでは他の企業と同じで数%でした。

――なぜ2013年から「男性育休取得率100%」という目標を掲げられたのでしょうか?

小林:従業員の9割が女性で、会社が成長を続けていくためには女性が活躍できる環境を作らなくてはと感じていました。そのためには、女性社員を対象とした取り組みだけでなく、男性の同僚や上司が女性の働き方を理解し、意識や風土を変えていく努力も必要だと痛感したのです。そこで2013年に「男性の育休取得率100%」を全員目標としてトップから打ち出しました。

男性上司の意外な反応

――目標を掲げたその年に即100%を達成できたのはなぜですか?

小林:経営陣がことあるごとに男性の育休取得を呼びかけたこと、上司から育休を考慮した年間計画を提出するよう声をかけたこと、社内イントラネットで『~イクメンの星★~』として育休取得者を紹介したことが大きかったようです。

――上司の反応はどうですか?

小林:「時代は変わったな」という声がありましたね。「自分の時の価値観とはかなり違うなぁ」と言いながら、すごく応援してくれています。

育休取得は「きっかけづくり」にすぎない

――男性の育休期間はどれくらいですか?

小林:男性が取得しやすい1週間をメドにしています。この期間なら有給扱いになるので、取得しやすいと思います。育休を1年取得する女性からしたら、1週間というのは非常に短いと感じるでしょうが、短期間でも育児に専念する期間を持つのはとても有効です。

というのも、この1週間は、育児と向き合うきっかけづくりだからです。1週間経って「やれやれ、父親としての役割を果たしたぞ」ではなく、「母親がこれほど大変な思いをして子どもの世話をしているのだから、なるべく仕事を効率よく終わらせて、早く帰宅しよう」「もっと主体的に育児をしなければ」という気持ちを持たせることが狙いです。そこに気づくきっかけづくりとして「1週間」はちょうどいい期間だと。

女性としては「1週間くらいで……」という本音もあるが

――育休を取得した男性社員のご家族の反応はいかがでしたか?

小林:とても評判がよかったです。パートナーの復職のタイミングに合わせて取得したり、パートナーの実家に一緒に帰り、子どもの面倒は自分がみるあいだパートナーと義理の両親を遊びに行かせてあげたり。掃除、洗濯、育児とフルにやっていた人もいました。育休期間の過ごし方は人それぞれですが、取得してよかったという声をたくさん聞いています。

男性社員のパートナーはもちろんのこと、ご両親からも「いい会社に勤めているのね」といわれて嬉しかったという話も聞きました。実際のところ、女性としては「1週間くらい休んで面倒みただけでイクメンだとは言わせない!」という本音もありますが、おおむねプラスの評価をいただいています。

全男性社員の約15%が育休経験者

――男性の育休取得率100%によって働き方はどのように変化しましたか?

小林:3年前と比べて、男性が育休を取ることへの違和感がなくなりました。男性社員のうち、約15%にあたる1000人強が育休経験者です。職場でのコミュニケーションも円滑になりました。育休取得前に「1週間の過ごし方」を職場の女性からアドバイスしてもらったり、そのアドバイスを実行したと伝えたりすることで、女性社員からの評価が高まったという話もあります。

ある管理職の男性によると、仕事と育児を両立している女性には「母親」と「社員」という2つの顔があるんだと普通に考えられるようになり、保育園のお迎えの時間や、子どもの体調不良を自然に考慮できるようになったそうです。結果、部下のプライベートを把握しながらマネジメントできるようになった、と。

お客様のライフプランに関わる保険という業種だからこそ

――育休中の経験が実際に企業の業績に反映されることもあるんでしょうか?

小林:そうですね。弊社は学資保険等の生命保険も販売しているので、保険プランを提案する際に、自分が育児に積極的に関わった経験をもとにお客様に伝えられることも増えます。お客様一人ひとりのライフスタイルを肌感覚で理解できるので、結果としてコミュニケーションがより円滑になるんですね。

取材を終えて

育休を約1年間取得する女性からすると、男性の1週間の育休取得というのはとても短いように思えます。「これで本当に助けになるの?」と。ただ、そこを出発点として、自分が積極的に育児に参加する必要を肌で感じ、「早く帰宅できるように効率的に働こう」「ワーキングマザーは本当に大変なんだなあ」と思えるようになるなら、たとえ1週間の育休取得でも十分意味があると感じました。

間野 由利子