AV女優として活躍し、男性のみならず女性からも絶大な人気を集める紗倉まなさん。そんな紗倉さんが2月に自身初となる小説「最低。」を発売しました。小説ではそれぞれの想いを抱えてAVという世界にたどり着いた4人の女性たちが描かれています。家族や恋人が待つ日常と、AVという非日常的な世界を行き来する彼女たちを繊細で独特な視線から切り取ったこの作品。そこに込めた思いを伺いました。

AV女優の“処女作”

――紗倉さんの本業はAV女優ですが、小説を書かれたきっかけは何だったのでしょうか。

紗倉まな(以下、紗倉):以前、エッセイをださせていただいたことがあったのですが、その時に文章を書く楽しさに気づいて。ちょうどそのときに出版社の方から、小説も書いてみませんかと声をかけていただいたので、ぜひやらせてください!とお返事しました。

――小説の題材としてご自身と同じAV女優を選ばれたんですね。

紗倉:私は高校を卒業してからすぐAVの世界に入ったので、知っている知識のほとんどがこの業界で学んだことなんです。だから本を書くのであれば、一番身近で書きやすいこの題材がいいのかなと思いました。打ち合わせでも「AV女優の処女作って響きが面白いよね」と言っていただいたので(笑)。

――この小説では、年齢も置かれている環境も全く違う4人のAV女優をめぐる物語が描かれています。AV女優がテーマということで、紗倉さんご本人のことが書かれているのかなと思っていたので少し意外でした。

紗倉:エッセイでは自分のことについたので、次は少し違った視点から文章を書きたいなと思っていたんです。例えば元AV女優の母親を憎んでいる少女だったり、AV女優の彼女を持つ男性だったり。全員自分から遠い存在だからこそ、楽しく想像しながら書けた気がします。

――小説に登場する女性たちに紗倉さん自身が投影されている部分はあるのでしょうか。

紗倉:1章には、家族に秘密でAV女優となった彩乃が登場するのですが、彩乃は美人の母親や姉に劣等感を感じています。私も学生時代はコンプレックスの塊で、ほかの子と比較しては日々欝々としていたので、そこは彩乃に通じる部分があるのかなと思います。

――コンプレックスというのは、例えばどんな?

紗倉:すごくかわいくて男の子にモテる子や、成績が優秀な子と比べてあらゆることに劣等感を感じていました。そういうコンプレックスを払拭したくてAVという世界に足を踏み入れたというところもあるんです。だから彩乃の気持ちにはとても共感できるところがあるな、って思っています。

恋人と一緒にいるときは「AV女優」であることを忘れたい

――2章はAV制作事務所の社長でありながら、所属するAV女優と恋愛関係にある男性の目線から物語が語られていますよね。愛する女性がAV女優として働く姿を身近で見ていることへの葛藤がひしひしと伝わってきます。

紗倉:私は恋愛と仕事は別物だと思っているので、切り離して考えたいなって思っています。でも相手からしてみれば、それはすごく難しいことですよね。付き合いながら他の男性と寝るということはやっぱり理解されづらいと思いますし、嫉妬もされると思います。

プライベートなのに「AVではこういうこと してるなら、俺にもしてよ」とか「俺は寝てるから、気持ちよくしてよ」とか言ってくる男性がいたら、「もうっ!!!」ってちょっと怒っちゃいますね。

――プライベートのときはプライベートの自分だけをみてほしいということでしょうか。

紗倉:そうですね。一緒にいるときに仕事の話もしたくないですし、もっとプライベートな部分で私に興味を持ってくれたらいいなと思います。

――例えばプライベートの部分とはどんなところですか。

紗倉:実はセックスも、プライベートの時と仕事の時だと感じる部分が違っているんです。好きな人に触られて興奮する部分と、そうじゃない人に触られて興奮する部分って違うんですよね。だからAVの中の私が男優さんにされて気持ちよさそうにしていたことを、好きな人には真似してほしくないというか。あとは、趣味を共有してくれたり、そんな些細なことでも嬉しいかもしれないです。なんか、話していたら恋したくなってきました(笑)。

頭がよいAV女優は男性から敬遠される?

――紗倉さんは男性のファンがたくさんいる中で、小説やエッセイを通して「自分はこんなふうに考えています」としっかり発信されていますよね。それによって男性ファンの気持ちが変わってしまうことはないのでしょうか。

紗倉:それはすごくあって、悩んでいるところですね。AVって女性の内面を隠す文化みたいなものがありますし、物静かな女の子のセックスを見て興奮する男性も多いと思うんですね。だから自分の考えを発信していると「夜のおともにしていたのに、もう紗倉まなで抜けなくなった」と言われることもあります。

本当にAVが好きな男性からは「昔は好きだったけど、最近小説を出してインテリぽくなっちゃったから嫌だ」「意識高い系女優」と言われたり(笑)。でも、全然そんなつもりはないんです。私としては、体を使う表現と文や絵による表現すべてを融合して好きになってもらえたらいいなと思うのですが、やっぱりどの表現方法が好きかって人によって分かれると思うので。そこはしょうがないのかなとも思います。

男性の「理想像」を解きほぐしていきたい

――最近のはやりのモテテクでは、女性は男性の前で何も知らないふりをしたり、「すごいね!」とほめたたえたりすべし、とされています。そんな風潮の中でAV女優という男性ファンを抱える職業の紗倉さんがこういった文学的な小説書くのは挑戦であり、かっこいいなと思いました。

紗倉:ありがとうございます。「全然知らないです」って言うほうがやっぱり可愛げがあるとは思うんですけど、知っていることを知っている、知らないことは知らないと素直に言えたほうがお互いに楽だとも思うんです。

でも、男性って「女性にこうあってほしい」という理想像がすでにしっかりと固まっているから、そこが難しいなと思います。だからこそ、その「理想像」を少しずつときほぐしていけたらいいなとはいつも思っています。

――周りのAV女優の方とこういった話はしますか?

紗倉:そうですね。「型にはめて見てほしくないよね」みたいな話はすごくします。やっぱりみんな自分の本心と違うことを「こうでしょ」って押し付けられると、反論したくなっちゃうんですよね。でもそうすると叩かれてしまうこともあるので「葛藤があるよね」とはいつも話しています。

――そう考えると、自分自身の思いを伝えながら、男性から見て性的な存在で居続けるのはとても難しいことですね。

紗倉:エロ屋としてやっていくうちに、私も下ネタを恥ずかしさもなく話せるようになってきて。「御開帳です!」とかみんなの前で言っていたら、そのうちに「全然エロく見えない」って言われ始めたんですね。

エロいこと言ってほしいという声にこたえていたら、次は「露骨すぎておやじみたい」って言われたりもしますし、ぎりぎりのラインがむずかしいなって思います(笑)

――どのようにこういった問題と向き合っていきたいと考えていますか?

紗倉:最近ファンの方の求めていることがなんとなく分かるようになってきたので、そこで折り合いをつけるようにはしています。自分の思いは伝えつつ、男性から見て魅力的でいられるようにうまくバランスはとっていけたらいいなとは思っています。

【後編はこちら】浮気されても、女は一途でいるべきなのか? 紗倉まなが提案する「愛の分散マネジメント」

岡本実希

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