長山悦子さんインタビュー

月5000円で暮らす、ボツワナの最貧エリアの女性を救う―日本人女性の挑戦

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月5000円で暮らす、ボツワナの最貧エリアの女性を救う―日本人女性の挑戦
月5000円の現金収入と食料の配給などで暮らす人々から、月6万〜15万を稼ぐ公務員まで……ボツワナ共和国では深刻な貧困はないものの、収入に大きな格差があるという。そんなボツワナに住む女性たちと一緒に、ビジネスを始めた日本人女性がいる。ボツワナの現状とともに、その詳細をお伝えする。(編集部)

ボツワナでは、狩猟採集での生活が禁止されている

2014年1月から青年海外協力隊ボランティアとして、ボツワナのセントラル県ボテティ郡庁でコミュニティ開発局の公務員として働いている長山悦子さんが、最貧エリアに住む女性たちと一緒に現地の布をつかった手作りクラフト製品のネット販売を始めた。

ボテティ郡庁は、複数の村で所得向上プロジェクトを実施している。その取り組みの一つとして手作りクラフトのプロジェクトを立ち上げた長山さんに、国際協力の事業の現状について尋ねた。

手作りクラフト

手作りクラフト

――ボツワナで長山さんと一緒に働いてるのは、どんな女性たちですか?

長山悦子(以下、長山):私はツェレ村と、メヤ村というところで活動していますが、便宜上「村」と言っているものの、正しくは「少数民族のための再定住地域」で、もともとそこに住んでいた人たちではありません。村ごとに多少事情が違うのですが、もともと彼らは狩猟採集民族でした。

でも、現在ボツワナでは狩猟採集での生活はほぼ禁止されています(※白人系人権団体の働きで裁判に勝訴し、一部認められています)。ツェレ村は2003年、メヤ村は2000年に国策として作られ、今この村に住んでいる人たちは、お金やモノで釣られたりしながら半強制的移住させられました。

最近までまだ狩猟採集的生活を行っていた経緯から、学業、職業、政治などの面で近代的な社会に対応する力が弱いです。一方、ボツワナ国家としては人口の8割を占めるツワナ人の近代的な生活様式に少数民族を同化させる方向で動いています。

そこで、再定住地域には学校、病院、村の政治を行う集会所、交番が作られました。また、現金収入を得られるようにするために、家畜、パン製造販売、学制服の製造販売、皮革工芸などのさまざまな所得創出プロジェクトが政府主導で立ち上げられましたが、経済規模としては焼け石に水という現状です。

深刻な貧困はないが、収入格差が大きい

――再定住地域に住む少数民族の暮らしは大変ということですか?

長山:再定住地域のひとたちの主な収入は、村内の清掃、食事の分配作業、村のパトロールなど政府が用意した簡単な仕事で、一家庭あたり月5000円ほどの現金収入になります。このような再定住地域はボツワナ国内に52箇所ありますが、行政的にも経済的にも自立しておらず、政府の支援がないと生きていけません。

ボツワナでは所得格差が大きく、月収に大きな差があります。私たちが支援している村のような再定住地域や、電気が通ってないような村では、ひと家庭あたり月5000円程度の現金+食料の配給+その他副収入などで暮らしています。都会なら月収18000円程度になるスーパーの店員や、セキュリティの仕事もあります。ドライバーなどの公務員では月収36000円程度、役職付きの公務員なら月収60000円~15万円程度になります。

ボツワナは「中所得国」に分類され、ダイヤモンドマネーのおかげで深刻な貧困はありません。しかし、所得格差が大きいのが課題で、失業率も高いのです。都市部では30%程度、地方部では50%程度、私の支援している村ではおそらく90%程度です。鉱山関係者と公務員とはお金を持っていますが、私の支援している村人は歴史的に資産や仕事がありません。

お金を得ても、自分の買い物は後回し

――長山さんがボツワナで手作りクラフトを作り始めたのは、いつ頃ですか?

長山:ツェレ村では2014年4月、メヤ村では2015年3月からです。もともとは、既存のソーイングプロジェクト(学生服をつくっているチーム)が停滞しているようだったので、「バックやコサージュなどの新しい商品を提案したらモチベーション向上になるのでは」と考えたのですが、配属先の同僚に相談したところ、クラフトに特化して始めようということになりました。

――仕事作りが必要になるのは、現金収入の確保が急務だからですか?

長山:ここのニーズは、お金です。何に使うのか聞くと、「お肉を買う!」「砂糖がなくなっちゃったからお金が必要」など生活に必要なものを挙げたり、「子どもたちに服を買ってあげたい、靴を買ってあげたい」「子どもがいっぱいいるからお金もたくさんいるんだ」と言われたりします。

実際、お金が入ったら、まずは自分の子どものためのものを買っているなと思います。その次に鍋や家電など家のもの、最後に自分の洋服など自分のおしゃれのためのもの、という順番です。政府からの支給は食料のみで衣料は含まれないので、村ではボロボロの服をきてる人も多いんです。

――なるほど。

長山:また、彼女たちが言葉にすることはありませんが、作り手としての喜びもあるのだなと感じられます。より良いものを作ろうとがんばるし、きれいなものができたら満足そうです。ワークショップでは、バックやアクセサリーのつくり方を1から教えます。だいたい1週間くらい、村に泊まり込みで毎日行っています。

――クラフト商品は、誰にとってどんな価値があるものですか?

長山:商品はすべて南部アフリカの伝統的なテキスタイル(マテイシ)を使っています。ボツワナ人にとっては日々のおしゃれとして、結婚式やカルチャーイベントなどの特別な装いをするときにコーディネートして楽しむことができます。ボツワナでは、ドレスアップする時に、このテキスタイル(マテイシ)で洋服を仕立てるのです。観光客にとっては、ボツワナらしい土産物を手軽な値段で購入できるというメリットがありますね。ボツワナは観光に力をいれているのですが、おみやげは南アフリカ産のものが多かったり、ラインナップが少なかったりという問題があったんです。

そして、日本人にとっては、クラフト商品を通して、異国の文化を感じることができるのが魅力です。エシカルな商品なので、商品を購入することで社会貢献したいと考える方の選択肢の一つとなります。

手作りクラフト

ひとり月5000円の月給が出せるようになった

――そうした製品はどこで売るのですか?

長山:ボツワナ国内では、各地で行われるイベントです。私たちが主に参加するのは商品を展示販売できる行政主催の地域イベントです。審査員がいて、表彰されると賞金がもられます。また、首都で行われる民間企業主催の見本市に毎年JICAがブースを出しているので、活動紹介の一環として商品を販売します。観光地でもロッジなどが主催する蚤の市に参加することもあります。

対面販売では、学校や病院の職員(公務員)に売ります。1回あたり500円~3000円くらいの売上になります。最近ようやく一人あたり5000円ほどの月給を出せるようになりました。これを達成するには月36,000円くらいの売上が必要なのですが、このベースに乗ってきたのが、活動を始めて1年後の2015年5月くらいです。

——売上の目標はありますか。

長山:まずは、一人あたり月5000円の所得を維持すること。ツェレ村では達していますが、メヤ村ではまだ達していないんです。現状でボランティアがいなくなると、おそらく10分の1(月500円/人)ほどの収入になってしまうので、残りの期間は、そうならないようにするための技術移転を優先していきます。個人的には、最終的に毎月12,000円まで所得を上げられたら、ボツワナの地方に未来が見えると思っています。

――青年海外協力隊には任期がありますが、いつまでボツワナで活動を?

長山:最大1年までで、私の場合は2017年1月以降の延長は認められません。ですので個人的な目標は、私がやっているすべての業務を村の女性メンバーに引き継ぐこと。役所の同僚や、外部のボツワナ人に任せることも検討しています。今関わっているプロジェクトがボツワナ人だけでサステナブルに回せるようになったら、心置きなくボツワナを離れられると思います。

日本に帰ってからも個人的なボランティアとして主に日本への販路開拓などの支援は続けるつもりです。長期的な目標は、ボツワナや彼女たちと関わり続けられる仕組みを作ることですね。

国際協力は“いろんな関わり方”があっていい

――国際協力に関心の高い日本の女性に伝えたいことは?

長山:私は国際協力に関わる仕事がしたくて、国際協力について学ぶ大学院に進学しました。でも、大学院を卒業して思ったことは、「国際協力という専門的な仕事につかなくても、もっと普通の会社員が国際協力に関わってもいいんじゃないか」ということです。帰国後は、ボツワナでの経験をもとに「日本の外に飛び出す」のではなく、「日本にいながら自由に世界とつながっていきたい」と思っています。

国際協力に関わることは0か1かではなく、自分の人生のタイミングにあわせて力を集中したり、ちょっと気を抜いてみたり、いろんな濃度があってよいのだと思います。自由に、継続的に、世界のできごととつながっていく。そんなふうに国際協力を実践してくれる人が増えたら嬉しく思います。

■関連リンク
Gift from Botswana
ボツワナ商品販売サイト

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